第77話言葉が崩れる、世界が歪む、では私は?
——「お前は私か?」
ベッドの上にいるはずだった。
でも”ベッド”って何?
“私は起き上がる”。
“私”って誰?
(私は)
(私はいない)
(私はここ)
(私はお前)
「アリシア様?」
——誰?
“メイド”。
“名前”?
“名”って何?
“意味”が”落ちる”。
私は歩く。
“歩く”って?
“足”がある。
“足”って何?
——カチッ
音がする。
“時計”?
“時間”?
“時間”が”バラバラ”。
1
2
3
5
8
13
21
「お前は昨日を覚えているか?」
“昨日”って何?
“昨日は存在した?”
“昨日はなかった?”
「授業に遅れます」
“教室”。
“椅子が逆さ”。
“生徒が空に座る”。
“教師の顔がある”。
(いや、顔が”増えた”)
黒板に文字が浮かぶ。
“読める?”
“読めない?”
「お前はアリシアか?」
——「■■■■■■■」
私は口を開ける。
“声”が出ない。
“言葉”が出ない。
“私はアリシア?”
“アリシアは私?”
“私は”
“私は”
「△✖◎☓■!」
『お前は誰だ?(私は誰だ?)』
——「あなたは、これを読んでいる?」
違う。
違う。
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
『あなたはどこにいますか?』
黒い床。白い天井。赤い机。青い椅子。黄色い空気。
「私」はどこにいる?
起き上がる。
——いや、起き上がろうとするが、体がどこにあるのかわからない。
手がない。
足がない。
頭がない。
誰が?
「私」が?
——「私」って誰?
目を閉じる。
目を開ける。
目を閉じる。
目を開ける。
目を閉じる。
目を開ける。
目を閉じる。
目を開ける。
目を閉じる。
目を開ける。
目を閉じる。
——開けたはずの目の先に、「私」はいない。
「私」はどこにいった?
違う。
ここにいる。
いや、違う。
「私」は「あなた」なのか?
「あなた」は「私」なのか?
ふと、ベッドの上を見る。
そこにいるのは、“私”。
だけど、“私”は”私”を見ている。“私”は”私”を見返す。
“私”の”私”が”私”を見つめる。“私”が”私”に問いかける。
「あなたは、私ですか?」
瞬間、世界が崩れた。
——ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ
床が天井になり、天井が壁になり、壁が空になり、空が机になり、机が手になり、手が目になり、目が口になり、口が耳になり、耳が世界になった。
“私”の”私”が”私”を食べる。“私”の”私”が”私”を噛み砕く。“私”の”私”が”私”を吐き出す。“私”の”私”が”私”を”私”に戻す。
“私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”の”私”