第3話断絶の狭間で
――世界は、もう戻らぬ常識の彼方へと流れ去った。
崩壊した学園の中、私は新たな秩序を求めて歩き出す。教室の窓から見える景色は、先ほどの混沌の余韻を今なお残し、壁には意味なき文字が浮遊し、まるで時の断片が散りばめられているかのようだった。
「こんな世界、どうにかならないものか……」
私の呟きは、空気に溶け込みながらも、内なる炎を燃やしていた。たとえこの現実が何度改変されようとも、私は自らの意思で未来を切り拓く――それが私の運命だから。
廊下を歩くと、フェリックスの足音が耳に届いた。彼は相変わらず、狂おしいほどに私に惹かれ、熱い眼差しでこちらに迫ってくる。
「アリシア……」
その声は、柔らかくも、底知れぬ情熱を孕んでいた。
彼はひざまずくようにして私に近づき、まるで崩れた世界の中で唯一の真実を見つけたかのように呟く。
「君が、どんな世界を書き換えようとも……僕は、君のそばにいる。絶対に、君だけは守り抜くと誓うよ」
その瞳に宿る情熱と執着は、次第に言葉以上の重みを持ち始めた。
だが、私の内側では、また新たな力が静かに、しかし確実に燃え上がっていた。――「運命改変」の力が、私自身の存在と、この壊れた現実を一新するために蠢いている。
【断片的な記憶】
「はるか彼方の時、空が裂け、意味なき叫びが風となった」
「音もなく刻まれる、忘却の旋律」
それは、もはや私の意思を超え、世界そのものが発する声のように感じられた。そして、ふと気付く――この力は、現状をただ改変するためのものではなく、未来そのものをも塗り替える力なのだと。
その瞬間、教室の窓が激しく揺れ、外の風景が無数の光と影に引き裂かれる。青空は深い闇へ染まり、校庭の鐘は不協和音を奏でながら、永遠に続くかのようなエコーを響かせた。
私の視界は、再び文字と断片の洪水に包まれ、現実が音もなく、残酷に変貌していく。まるで、時空が解体され、再構築されるかのような錯覚に陥る。
「……変わるべきは、私自身」――壁に浮かぶ無数の文字が、私の内心を映し出すように呟いていた。
その時、教室の扉が激しく開かれ、冷徹な表情のエリックが姿を現す。
「アリシア、お前は……」彼の声は半ば問いかけるようであり、同時に警告の響きを持っていた。
私の手は、まだ温かく輝く力を握りしめたまま、エリックへと向けられる。今、私は決意する。たとえこの世界が完全に断絶し、壊れた未来が訪れようとも、私の意思で新たな秩序を築くのだ。
その瞬間、私の視界は再び切り裂かれるように、言葉とイメージの断片が入り混じる。時空が分断され、現実の輪郭が曖昧になり、断絶した世界が音もなく、そして残酷に崩壊していく――。
「物語は……私が書き換える。」
私の声が、闇に響いた瞬間、世界は再び大きく揺れ動いた。全てのものが消え失せ、ただ一つ、私の意思だけが静かに、しかし確実に輝いていた。新たな世界の扉が、今、音もなく、そして決して戻ることのない過去を断絶したまま、開かれようとしていた。
――続く