表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/79

第2話混沌の余波

改変の瞬間から、一瞬にして日常は色あせ、形を変えていった。

 学園の廊下は、先ほどまでの煌びやかな装飾を失い、ひび割れた壁に無数の文字が滲む。

 時計の針は狂い、時間は均一ではなく、瞬間ごとに歪んでいるように感じられる。


 私は、教室の窓辺に立ち、まるで夢と現実の狭間を漂うかのように、改変された世界を見つめる。

 周囲の生徒たちは戸惑い、囁き合いながらも、何事もなかったかのように振る舞っている。

 だが、私の心は激しく揺れていた。


「アリシア……」

 どこからともなく、フェリクスの声が響く。

 彼は、昨日の乱れた光景を忘れず、今もなお、私に異常なほどの執着を見せていた。


 フェリクスは教室の隅に立ち、瞳に熱い光を宿して私を見つめる。

「君だけは、あの混沌の中でも変わらぬ存在だ。君がいるから、僕は……」

 その声は、いつもの優雅な口調とは裏腹に、何か狂おしいものを感じさせた。


 同時に、隣の席からエリックの冷たい視線が突き刺さる。

「……やはり、君は普通ではないな。」

 彼の言葉は、挑戦とも取れる厳しさを帯び、学園内に不穏な空気をもたらしていた。


 そして、噂に聞いていた謎多きセリナも、薄暗い回廊の先からこちらを見ていた。

 その瞳には、何か計算された冷笑が浮かんでいる。


 ――その時、再び私の内側に力が湧き上がった。

 昨日の改変の余波は、ただの偶然ではなかった。

 「運命改変ストーリーリライト」の力が、私の中で静かに、しかし確実に燃え上がっている。


 私は胸中で呟く。

「こんな日常なんか、もう受け入れられない。私が、この壊れた現実を、書き換えてみせる…」


 その瞬間、世界はまたもや、予測不能な変貌を見せ始めた。

 教室の窓の外、青空はひととき真っ黒な闇に変わり、遠くの鐘の音が引き延ばされ、途方もないエコーとなって校庭に鳴り響いた。


 廊下に立つ一部の生徒は、突然足元に散る紙片や、無意味な文字の断片に気づく。

 壁一面に描かれた文字は、まるで私自身の心情を映し出すかのように、「変わるべきは、世界だけではない」と呟いている。


 その混沌の中で、私は決意した。

 この混乱は、もう元には戻らない。

 ――新たな世界を、私の意思で再構築するしかないのだ。


 フェリクスはさらに一歩、私に近づく。

「君の力があれば、どんな世界だって……」

 しかし、彼の言葉は途中で途切れ、空気が再び歪む。


 私は両手を広げ、静かにスキルを発動させる。

 その瞬間、視界は再び文字と断片の洪水に変わり、世界のルールが音もなく崩れ、ひとつの新しい物語が、無慈悲に、しかし確実に生み出されていく。


 「物語は……私が書き換える。」

 その宣言と共に、今までの「常識」は完全に断絶され、二度と戻ることはなかった。


――続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ