7話
人の往来の間を縫って町の正門を抜ける。フリンギラと共に歩いてるため、かなり気を遣って慎重に歩を進めて行く。
手を引かれる少女は、困惑もせずに黙って付いてくる。それ以外の選択肢もあっただろうが、フリンギラは、されるがままについて行く。
無言に少しの緊張を覚えた頃、アリアが口を開いた。
「ねぇねぇ、君は家族になんて呼ばれてるの? 俺はね、名前そのままで、アリアって呼ばれてるよ」
「私は、フリンって。ちょっとだけ、長いから。短縮されてる」
「俺もフリンって呼んでいい?」
「うん、いいよ」
「ありがとう、フリン。それじゃあ一気に進もう!」
空いている方の腕をやや斜めにして前方に突き出す。空に向けられているようにも見えるそのポーズをした後、フリンギラは、腕にかかる力が強くなったのを感じた。
すると腕全体が強く引かれてしまい、咄嗟に走り出す。アリアが走り出したのだ。
お互いの行動が明確に影響を及ぼしあう状況にも関わらず、フリンは、自らアクションを起こしらしなかった。
普通、子どもなら我儘なものだが、フリンにその様子は見られない。落ち着いているというか唯唯諾諾というか。とにかく自己主張というものをしていなかった。
(なんも喋んないな。ずっと下向いてるし。もしかしてコミュ障なのか? だとしたら悪い事したなぁ。
いやでも黙ってついてくるのは、そういうことだよな。つか綺麗なんだけど。年齢にそぐわずに)
走るペースが無意識のうちに落ちていたらしいく、フリンは、息切れが落ち着いている。
後ろを振り向きながらフリンを見続ける。それに気づいたフリンは、小首を傾げる。
「私の顔に何か付いてる? それとも、黙ったままだから、イヤになっちゃった?」
「いや綺麗な顔してるなって」
真顔でそう言った。少し間があったことで自分の発言に気づいた。
(やっべ、言葉選びミスった。修正しないと)
「肌が真っ白でスベスベしてるから! お、お母さんはできもの出来てるから」
(ダメだ! 全部ミスってる! どうしようもねぇ)
何を言っても修正出来ないアリア。言葉に言葉を重ねても、失敗に間違いを塗り重ねるだけだった。
幸いだったのは、フリンがその言葉に反応していなかったということだ。
頬を赤く染めたのはフリンではなくアリアの方だった。こんな時に子どもの純粋な心が羨ましくなる。いや身体自体は子どもなのだが。
「外でないから、肌が白いんだと思う。みんなと、ちょっと違うの、なんかモヤモヤするんだ」
胸に手を置いてそう言った。
(なら外で遊べばいいんじゃないか?)
なんてノンデリ発言をするほどアリアは、子どもではない。転生する前ならそんな言葉を投げていただろうが、今の彼は、アリアで、前世のクソニートではない。
言葉を咀嚼することすらせずに元気づけようとする。
「そうかな? 真っ白な肌で、俺は、すっごくかわいいと思うよ」
「ありがとう。そんな事言われたことなかった」
少し表情が和んだか。小さな笑顔が少女に宿った気がした。
町の正門まであと少し。そうしたら、アリアが毎日ぼっちを遊びしている草原に一直線である。
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