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60話

読んでいただきありがとうございます!

 格好を付けて歩き出そうとするアリアだったが、アランがそれを止めた。出鼻を挫かれたアリアが、わざとらしく、大仰にこけた。


「当てもなく旅をするより依頼を受けた方がいいんじゃないか? 他のギルドに行くにしても、依頼を受けてからの方がいい様な気もするが」


「そう言ってもさ、冒険者とは言え俺たち、一番下の位だろ? 受けられる依頼なんてあるのか?」


「受ける依頼に位は、関係ないだろ」


 そう、冒険者が受ける依頼には、目安となる難易度はあっても明確な条件はない。条件が課せられている依頼は、かなり特殊で、滅多に回ってこない。

 ギルドのコルクボードに貼り出されることなど、ほとんど無いのだ。強いて言うなら、認定票が依頼の条件になるのか?

 それに、そんな依頼は大体、色持ちにお呼びが掛かる。直接的に名指しで指名を受ける場合が殆どだ。

 依頼を受けるのに階級の制限はない。が、階級と言うのは、信頼や実績で形作られるもの。それらが不足していれば、もちろん受付嬢に止められるし、なんなら他の冒険者に奪われる。

 奪われるという表現も正しくはないが、とにかく待ったを掛けられる。

 当たり前だ。近しい間柄では無いといえ、顔見知りを、わざわざ死にに行かせる必要なんてない。それに、運良く生き残っても依頼は、失敗するのがオチだ。

 最初っから失敗するとわかっているのだから、新人に大きな仕事など任せない。依頼と言うのは、冒険者だけが頑張るものではないのだ。

 依頼主、ギルドの職員、受付嬢、そして最後に冒険者。身体を張るのは、冒険だが、目に見えない所で様々な人間が関わっている。

 最後の最後に失敗しましたでは、ギルドとしても示しがつかない。5パーセントの成功か90パーセントの成功か、そんなもの、天秤にかけるまでも無い。

 普通の頭を持っていれば、選ぶのは、成功率9割超えの方だろう。

 もちろんアリアもそうだ。

 まだまだ未熟な子ども達には、大きな依頼は任せない。相応の、身の丈に合った事だけをする。それも、冒険者にとって大事な力の一つだ。

 出る幕は、見極める。でないと、無駄死にするだけだ。早死にしたいわけでも無ければ自殺したいのでもない。

 が、かと言って薬草摘みをまたやるというのも、それはそれで気が滅入る。

 危険は無い。難しいこともなく、ただ道に生えている薬草を摘むだけである。時間と精神がすり減っていくのに目を瞑れば、初心者向けでもある。

 報酬も良く、ギルドや店からの依頼である事が多いため、コスパは、最強だ。それに、需要がありまくりで、基本的に廃れない。

 が、もう一度やりたいかと聞かれれば、やりたく無いと答えるだろう。なんたって、虚無な作業だ。炎天下にジリジリと灼かれながら黙々と手を動かす。奴隷と同じである。冒険者というより、雇われ人である。まぁどちらも似た様なものか。


「そう言えば、私と君ってお金持ってなかったよね。やるしかないかも。依頼」


 実際、何も買えないのは困る。黒パンだって無限では、なく有限だ。いつかは無くなるだろう。


「言われてみれば…俺、金無いな。ヨシ、ならギルドへレッツゴー」


 優柔不断なアリアが指揮を取り、3人は、ギルドへと向かった。

 毎回異なる心境で扉に触れている。いつの日か、変わらぬ気持ちのままで、扉を開けられるようになる日は、来るのだろうか。

 中は、やはり多くの冒険者で賑わっていた。早朝だと言うのに、コイツらは暇なのか? ギルド内のテーブル席は、あらゆる一党で埋まっており、入り込む隙などある様には見えない。

 ま、まぁ、休むことが目的ではないのだ。受付嬢に聞こうじゃないか。ひよこの短い列の様に、心配の心が薄ら香る3人衆。


「受付嬢さん。俺たちに達成出来そうな依頼ってありますか?」


 アリアが質問した。


「はい。新人さんが3人の一党ですか。するとですね、洞窟の入り口探索とかでしょうか。あとは、野犬などの追い払いとかでしょうか」


 顎に人差し指を当てる姿は、深く考える仕草にしては、あざとさが滲んでいた。


「希望が有るのなら、コルクボードの拝見をおすすめしますよ。ほら、ちょうど人が集まってる所ですよ」


「あーあれですか。わかりました、一度見てみます。ありがとうございます」


「いえいえ。お決めになりましたら私の所に受理手続きを完了しに来て下さいね」


 そう言うと軽くお辞儀をする。カウンターを外れて、人が集まっているコルクボードのある場所まで行く。

 ベリっと剥がしては、その場を後にして行く。判断の速さは、経験の違いだろうか。歴戦の冒険者は、判断が早い様に見える。

 早朝ということもあって、ボードには、まだまだ多くの依頼が貼り付けられていた。


「うーん、こうやって見ると、新人が出来そうなのは、ない様に見える」


「文面だけだと小難しくてね。文字を読むだけで精一杯だよ」


「ねぇ、これとかどう? 洞窟の探索。『棲みついた生物の調査及び洞窟内の深度探索。深度によって追加報酬有』だってよ」


 ベリッシが見つけたのは、先ほどの受付嬢の提案と同じものだった。

 深度によって追加報酬か。危険になったら帰って来ても良いというのなら、やってみても良いかもしれない。

 先達に倣って、依頼書を破り取る。それを持って、依頼の受理に向かった。

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