53話 パーティメンバー加入!
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じーっと見つめ続けていると、相手が声を発した。
「いつまで見てんの? 何もしない。ボコボコにされたのは、私だし。本来なら死んでたのにまだ生きてる。おまけに食べ物までくれたんだから」
「ほんと?」
「嘘だったらもう逃げてるか、剣奪ってるよ。私ちょっと前から起きてたから」
瞬きをして、自分の未熟さを実感する。相手を無力化しただけで危険が無くなると思っていた。が、その考えは、どうやら間違いだったようだ。
下手をすれば寝首を掻かれていた。意識を取り戻す暇なく眠りの中で命を落としていたかもしれなかったからだ。
それでも、今は、まだ生きている。生きている内は失敗を糧に前に進める。この経験は、確実に自分のためになる。アリアは、恥じる事なく、頭の引き出しの中にこの出来事を仕舞いこむ。
「じゃあこれからどうする気なの?」
縄を片付けて、完全に自由になった少女に聞いた。当の少女は、手首を握り、縛られていた際の違和感が残っていないか確かめていた。
ひとしきり手首のチェックが済んだ後、顔をあげてアリアを見た。
「あんたについて行こうかな。荷物見るに、何処か遠くに行くんだろ? だからついていく。それに、お仕事一発目でこんな有り様じゃあ、続けられる自信ないし。運良かったよ、最初の仕事があんたでさ」
軽く言ってのけるが、正直言って正気を疑う。昨日の話だ。まだ昨日の話、彼女は、アリアの背中を刺そうとした。
何の恨みも接点もないアリアを狙い、そして襲った。そんな危険な人物と共に旅をするだと? いくらアリアでも、そこまで間抜けではない。
何処の馬の骨とも知らな野盗との関わりなど、御免被りたい。
「まぁまぁ、寝言は寝て言いましょうよ。どうせ仲間か親玉でもいるんだろ? そこに帰ればいいじゃないか」
冒険者になりたい。それは、確かな夢であり目標でもある。誰かの役に立ちたいという気持ちもある。
だが、誰かれ構わず手を差し伸べたいわけでも、皆を助けられるほど、自分が特別な存在だとも思っていない。
野盗が街の近くに溢れようが、小さな村や集落を襲おうが、それに関して、アリアがどうこう思う事はない。知らない事は、感じる事すらできないのだから。もう関わることのない目の前に座る少女の、将来の蛮行など知ったこっちゃない。
アリアは、金色に輝く澄んだ心の持ち主ではない。もちろん、真っ黒などろっとした心の持ち主でもない。だからこそこれ以上、関わりたくはないのだ。
「親玉も仲間もいないよ。無能が故にみんなに見限られたから。このまま野に放たれたら、また人を襲っちゃうかもよ?」
「俺の知ったことじゃあ無いな。どうとでも、お前の好きにすれば? そうしないと生きていけないんだろ?」
冷たく言い放つ。だが、実際、知りもしない他人がどうなろうと、多くの人間は、気にしない。
不幸事に襲われた者を悼むのは近しい者だけで、ほとんどの人にとっては、対岸の火事。自身が火事に見舞われた際、どう消化するのか。考えるのは、それぐらいの事だろう。
そして、アリアは、すでに学びを得た。もうどうでもいいのだ。この少女が野垂れ死のうとも、逆に、少女が人を殺そうとも。すでに関係の糸は、切った。
雑嚢を持ち、剣を腰に帯刀して、また歩き始めた。ざっざっと、足音が連なる。一つ二つ、足は2本あるゆえ、音は二つになる。
わけもなく、真実は、後ろについて来ていたもう一人の足音だった。
アリアが振り向いて言う。
「なんで居るんだよ!」
「好きにしたらと言ったろ? 自分の発言には、責任持たなきゃ。男だろ? それに、野盗なんて殺さられるのが落ちさ。私は、まだまだ生きたいの」
強情な少女。面の皮が随分と厚いように見える。
「で、名前は? 私は、ベリッシ。まあ、仲間から貰った名前だけど」
「あのな……俺は、アリア。変なことは、するんじゃないよ? 俺が共犯なんて思われたら、たまったもんじゃないんだから」
「わかってるって。あんた…アリアの不利になることは、しないから。その代わりと言っちゃ何だけど」
人差し指を合わせながらもじもじして、ベリッシは、恥ずかしそうに頬を赤て言う。
「あの、干し肉のやつ。あれ、また食べさせてほしいなーなんて」
「ははっ、干し肉は、もうすでに無いさ」
遠い目をしながらそう言った。食料事情を知ったベリッシは、渋い顔をしていた。




