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3話

 大声で泣き出した赤子に、母親は、困惑した。お漏らしでもミルクでもない。それなのに、自分の赤子が泣いているのだ。

 何が原因かわからない新人の母親は、腕の中の赤子を見ながら腕を揺らして落ち着かせようとする。


「大丈夫だよ〜何かあったら私が助けてあげるからね〜」


 優しい言葉をかけてあげるが、依然赤子は泣き止まない。赤子は、自分が何故泣いているのかはわかっていたが、何故泣き続けているのかはわからなかった。誰の物かわからない胸に口を付けて、あまつさえそれを吸うなどと、そんな事は避けられたのだ。

 当初の目的は完全に達成したと言っても過言ではない。ならば何故まだ泣き続けているのか。それがわからなかった。


(あれ? 泣き止まない。自分の体なのに、上手く言うことを聞いてくれない。なんでだよ! なんでいっつも俺は、こんな不幸なんだよ! なんで上手くいかないんだよ!)


 疑問は、徐々に怒りへと変わっていき、遂に、完全に火がついてしまった。彼の悪い癖だった。自分の事を上手く俯瞰で見る事が出来ず、全て周りのせいにしてしまう。

 本当は、自分が悪かったり、ただ運が悪いだけなのに、あらゆる物に理由を見つけようとしてしまう。他人(ひと)のせいにすれば、一番楽なのだ。だから彼は、いつも誰かのせいにしてきた。

 それに気がついた時には、既に手遅れだった。


(くそ…動かないならどうしようもない。はぁ、運が悪りぃなぁ)


 諦めが付いたのか。それとも、自らに終わりを授けたことで気づきがあったのか。

 それは定かではなかったが、少なくとも、以前のように誰かに矢印を向けようとしないだけ良いのかもしれない。

 確かに考えが変わったのを実感している彼は、何が自分を変えたのか分からなかった。分かる必要もないのかもしれない。

 だって彼は今、赤子なのだから。これから成長し、そうして大人になれば良いだけの話なのだから。


(はぁ、俺、これからどうなるんだろう)


「ばぁう…」


「喋った。ねぇ喋ったよ! 今、絶対喋ったよ!」


「今日はお祝いだぁー!!」


 両手を挙げて喜びを隠せないでいる男。自分の事のように喜んでくれる男を見て、彼は、心が温かくなった。それを言葉にすることは、出来なかったが、確かに感じていた。

読んでいただいてありがとうございました!!!これからも頑張っていきますので。

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