13話
少しの休憩だったが体力は、回復した。全快ではないが、息切れすらしていないのを見るに、これでノンストップで家まで歩けるのではないだろうか。
二人は、ズカズカと進んでいくが、道中で人に会うことはなかった。
方向を間違えただけで、こんなにも人通りがなくなるものだろうか。もしかしたら、この世界では、思ったより人口が少ないのかもしれない。人っこ一人見つけられないのは、そもそも人が少ないからと言われれば、なんとか納得できた。
「誰も歩いてないなんて。俺、どれだけ離れたところに行ってたんだろう」
「正確にはわかんないけど、まぁ結構行ってるよね。正直なんでこっちに来たのかわからないぐらい遠いよ。間反対だから」
おかしい。フリンギラの家から出て見える、小さい家の間を通って来たはずなのに、どうして真反対に歩き出してしまったのか。方向音痴だけでは説明つかない。考えても答えの出ない問題だが、助けが現れてくれてよかった。
うん、そうだ、今は難しいことは考えなくてもいい。道を教えてくれる人物がいて、ついていけば我が家に着くのだから。まぁまた問題が起きた時に。1から考えることにしよう、とアリアは思った。
そのまま行進をしていると、とある犬に出会った。まだまだ幼いアリアは、見つけた瞬間にすぐさま飛びついた。
名前を教えてくれなかった親切なお兄さんは、それを止めはしなかった。
「あ、犬いる! 俺触ってくる」
短い足を必死に動かして、ひとりぼっちの犬に近づいて行く。アリアが近づいても逃げる様子は見せなかった。人慣れしているのだろうか。首輪は、付けられていない。が、この世界の常識がわからないから、もしかすると、首輪を付けないのが普通なのかもしれない。とにかく、近づくアリアに何もリアクションを起こさない事だけは確かだった。
それが罠だとしたら、アリアは、確実にパックリ逝くだろう。大人なら慎重に行動するが、好奇心を抑えられなかったアリアは、撫でようとする。
ある程度近づくと、足音を極力出さないようにする。頑張って努力するが、獣の五感に敵うはずもなく、アリアの手がもう少しで届いたところだったが、その犬は、緩やかに振り向いた。
キリッとした目つきに鋭い顔。なんてことはなく、丸い顔と丸い瞳。自ら近づいて、戯れる事を所望する。野生のものではないなと思う。
「か、かわいい。もふもふしてて、撫で心地サイコーだなぁ」
自然と頬が緩む。犬も同じように、頬をぐりぐり撫でられて、喜んでいた。
心の内はわからんが、されるがままなのを見ると、満更でもないのがわかる。
その後ろ姿を見ていた、自称お兄さんは、ある事に気がついた。
「あり? そりゃ魔物じゃないか?」
背中に生えた翼。小さすぎるその翼では、いくら小型犬だとしても、青空に向かってる羽ばたくのは不可能だろう。不出来な翼を携えた犬が、普通なはずはない。あり得るとしたら、魔物以外には、あり得ないだろう。
そう言われてアリアも背中を見てみると、本当に小さな小さな翼が生えていた。目の前の人間が、まじまじと背中を見ているのに、犬も気付く。
すると、自慢するかのように、その翼を見せつけてくる。胸を張って主張している犬には申し訳ないが、その翼に、本当に意味はあるのだろうか。
「本当に魔物なんだ。危険なやつかもしれないから、離れたとこ」
「大丈夫だよ。そいつ多分、アリアでも倒せるくらい弱いから」
「え? なんでそんな事わかるの?」
「私の事見ても逃げなかったから、危機察知能力がゼロなんだと思う。危険な状況を理解できないって事は、戦う力もないって事だからね。だってそうでしょ? 危険を察知せずとも生きられるんだから、戦う力を持つ必要がない」
「はへー、ん? お兄さんの事見ても逃げなかったって、どういうこと?」
「私、それなりに強いから。魔物なら本能でわかると思ったけど、まぁその子は、鈍感なんだろうね」
そんな会話をしていて、ふと犬の方に視線を戻した。すると、腹を空に向けて、いつでも準備OKと言わんばりに撫でられ待機していた。なるほど、これは鈍感というより、バカと言った方が正しい。
お腹を撫でながら、アリアは、ある事を決めた。
「こいつ…家で飼ってもいいかな?」
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