表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/163

10話

 フリンギラの後に続いていくと、集落というような、小さな家の集まりがあった。両手で数えてもお釣りがくるほどには少ない。

 もり仮に、誰かが二軒三軒と所有しているとしたら、集落でもないのだろうか。とにかく少ない。

 こんな場所に集まるぐらいなら、少し頑張って町の中に家を持てばいいと思うが、アリアの家族も町からは、距離を取って暮らしている。自分が言う資格はない。

 慣れた足取りで次々と歩を進めるフリンギラ。といっても、迷うくらいの密度ではないのだが。


「着いたよ、ここ」


 小さなと言った通り、ここには、豪華な住居や大きな建物はない。

 フリンギラの家も例外ではなく、平屋の物だった。 他と違うところと言ったら、少し長くて長方形となっている点だろう。


(うーん、素朴な木材の家。やっぱり奥行きがあるな。昔の家って幅が狭いんだな。なんか、ゲームといっしょで感動しそう)


 心の中で呟いているが、口では、別の事を聞いていた。


「入ってもいいの? 怒られたりしないの?」


「なんで? 友達連れてきただけなんだから、怒られるなんてことないよ」


 意外だった。それは、フリンギラが友達と言ってくれたことに対してだった。自分からは、あまり主張をしない性質な気がしていたから、自分のことを友達と言ってくれたのが意外だった。

 なんだか、認めてくれたようで少し嬉しくなった。


「それじゃあ、お邪魔します」


 引き戸を開けて、遠慮がちに中へと入る。フリンギラは、我が家なので、立ち止まらずに部屋に進んでいく。

 アリアは、玄関で立ってフリーズしてしまった。

 まず、女の子のお家に遊びに行く。そんな事は、生きている内にはあり得ないと思っていたからだ。それが今、現実となっている。

 この状況に感銘を受けている。

 もう一度も前世に関係する事だが、アリアの前世は日本人。大和魂がもえる日本男児だった過去のアリアは、靴は脱ぐものだと、幼い頃より英才教育を受けていたからだ。


 女の子の家ということが重なり、この世界の常識を一瞬間違えてしまったのである。


「早く来て。部屋の中だったら紙あるから。それで、押し花っていうのを教えて?」


「あそっか。うん、今行くから待って」


 そういえばと、忘れていた常識を思い出す。郷に入っては郷に従えと言う言葉もある。異常者的行動にメリットもないことだし、そろそろ動き出そう。

 フリンギラのいる部屋の中へと体を持っていく。

 質素なものだ。机に椅子、棚に小さな台。ミニマリストと言うやつだろうか。とにかく、物が少ない気がした。


(椅子が2脚っつーことは、親が片方いないのかもしれんな。変に刺激しない方が身のためだ。口に出す言葉は、今一度考えてから発言ですな)


 気分的には、顎に手を添えて思案している。

 

「それじゃあ教えるね。初めに、2枚の紙を用意するんだ。なんでもいいからさ。なんなら紙じゃなくても、挟めるものならなんでもいいんだ」


 ジェスチャーでどうするかを伝える。

 両手で、押さえる紙を表し、花を挟む動作をした。腕は3本も4本もあるわけでは、なかったから、重しを乗せるジェスチャーは、手の平の上に拳を乗せて表現する。


「そしたら、次は、重しを上に乗せるんだ。そして、そのまま一週間ぐらい放置するとできあがるんだ」


「一週間何もできないの? 時短テクニックとかさ」


「できないよ。魔術ですら時間の操作なんて、できっこないから」


「そうだよね、そんな都合良くはいかないよね。」


 よし、と意気込んで、二人は作業を開始する。役割分担はこうだ。アリアが監督、フリンギラが押し花作り。9対1の割合である。もちろん、アリアが1割の方だ。


 机を境に、対面して椅子に座る。

 下地を敷いて、その上に大事に抱えていた花を置き、そしてそれに一枚の紙を被せる。

 アリアは、拾った石をジャラジャラ鳴らして、どれが一番使えるかを吟味する。

 大きければいいってもんじゃない。ある程度の性能で扱いやすい。それが大事だった。


 何個か小石を乗せて、後は、待つだけ。一週間も。短時間で終わった作業。つけ加える工程も、オリジナリティを出す工程もない。まぁ一瞬で終わるものだ。


「それじゃあ俺、帰るね」


「待って。また遊ぼうよ。今度は、あの草原に、私が行くから」


「本当! 約束だよ」


 フリンギラは頷いた。アリアは、喜びながら引き戸を開けて外に出た。そうして、自身の家へと帰っていった。

読んでいただいてありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ