表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/50

第40話 ご褒美

 

 魔法訓練場で魔法を使うことは許可されているが、実はそこで生徒同士が戦闘することは許可されていなかったらしい。


 教員たちがやって来て怒られそうになったが、3年の先輩たちが「自分たちが悪いんです」と言ってくれたこと。そして注意しに来た教員の中に昨晩俺と新魔法の討論をした人がいて、彼が俺を庇ってくれた。


 そのおかげで俺は特にお咎めもなく、無事に寮まで戻ってくることができた。


 寮には戻ってこれたが、問題は解決していない。



「ユーマさん、お疲れ様でした。約束のご褒美です」


 寮の共有スペースに入ると、アルメリアがいきなり俺の左頬にキスしてきたんだ。


 一瞬のことで、初めは何が起きたか分からなかった。


「えっ。な、なにを!?」


「勝てたら頬にキスしますと。そういうお約束でしたので」


 艶やかな笑みを浮かべながら、アルメリアの頬はわずかに紅潮している。


 俺って、アルメリアと約束したことになってたっけ?


 てか俺、女の子にキスされた……。

 頬だけど、当然はじめてのこと。


 あまりの出来事に脳がショートしている。


 アイリスが何か叫んでいたけど、全然処理できていなかった。



「ほら、リエルさんも。こういうのはサッとやってしまった方が、恥ずかしくありませんよ?」


「う、うん。そうだよね……。ユーマ、ちょっとかがんで」


 リエルに俺の服の裾を引かれ、前かがみにさせられる。


 俺の方が背が高いので、そうしないと届かなかったらしい。


「勝ってくれて、ありがとう」


 人生2回目の女の子からのキス。


 2回目だったから、今度は頬に伝わるリエルの唇の感触を堪能できた。


 柔らかかった。

 あと、少し震えていた気がする。



「顔が真っ赤だよ、リエル」


「ニーナ! からかわないで」


「あははっ、ごめんね。そうだユーマ、私からもご褒美あげよっか?」


「いやいや、いいよ! ニーナとは約束してないだろ」


「えー。私じゃ不満?」


「そ、そうは言ってないけど」


「ニーナがご褒美あげるなら、僕もした方がいいのかな?」


 そう言いながらフリストが自分の唇に指を当てる。その仕草がまるで可憐な女の子のようで、思わず見惚れてしまった。


 ギリギリのところで我に返る。


「お前はダメだろ! キスなんて」


 危ない。もう少しで新たな扉を開きそうだった。


「誰もキスするなんて言ってないけど?」


「えっ」


「寮長として、寮生を守ってくれたユーマにご飯でも奢ってあげようとしただけだよ。もしかして僕からキスされるとか、勘違いしちゃった?」


 クスクスと笑うフリスト。


 くぅぅ……。なんて思わせぶりなことを!!


 ちょっと期待してしまった俺がいた。男の制服を着ているが、実はフリストが女の子なんじゃないかって。いや、むしろここまで可愛いなら、男でも良いやって思い始めている俺がいた。非常にマズい状況である。



「あ、でも」


 フリストが俺の耳に口を近づけてきた。


 そして小声で囁く。




「もし君が望むなら、キスしてあげても良いよ。今日のユーマ、かっこよかった」



 本日2回目。

 完全にキャパオーバー。


 脳がショートして、何も考えられなくなった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ