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第4話 特許登録


『特許査定となりましたので、登録の手続きを行いますか? なお登録には一律でステータスポイントが10必要となっています』


 ステータスポイント?


「特許の登録にポイントがいるの? ステータスポイントって何? そんなの俺、持ってないよ」


『勇者としてこちらの世界に招かれた皆様にはパッシブスキル“ステータスボード”が実装されています。現在のポイントはそちらでご確認ください』


「いや、確かにステータスは確認できるけど……」


 クラスメイトたちと一緒に確認したから知っている。俺のステータスが低すぎて、あまり見返したくない。


 それにステータスポイントなんて項目は無かったはず。


 でも渋っていてもどうしようもないか。


「す、ステータス確認」


 目の前に半透明のボードが浮かぶ。

 そこに俺のステータスが表示された。




[ステータス]

九条くじょう 祐真ゆうま

種族:人族

職業:魔法使い(レベル1)


物理攻撃:25

物理防御:10

魔法攻撃:60

魔法防御:30


固有スキル【特許権】


ジョブスキル

・魔力回復速度強化(小)

・魔法防御力強化(小)


パッシブスキル

・言語理解

・ステータスボード




 ──こんな感じ。


 ちなにみクラスメイトたちは攻撃力や防御力が全て俺より何倍も高かった。特に俺は物理防御力が低く、同じ魔法使いって職業の女子と比較してなぜか一割以下。


 この世界の魔物の強さは分からないが、流石にこれでは危険だろうということで俺は召喚された古城に取り残されることになった。


 改めて隅々まで目を通すが、やはりステータポイントなんて項目はどこにもない。



「……ん? これは?」


 ステータスボードの右下に、薄い文字で “NEXT” という表示があった。


 ボードを彩る枠の模様と被っていて非常に視認しづらい。


 みんながいた時は気付かなかった。

 恐るおそるその文字を押してみる。


 ステータスボードのページがスライドした。




[ステータス2]

装備

・斧(薪割り用、物攻+20)

・高校の制服(効果なし)


ステータスポイント

残り:100.0




 いや、2枚目あるんかーい!!


 不親切なUIだな!!


 こんな分かりにくいユーザーインターフェース、ゲームだったら非難殺到だぞ!?



『ご確認いただけましたか? ステータスポイントの項目に触れれば、物理攻撃力、物理防御力、魔法攻撃力、魔法防御力のどれかに割り振ることが可能です。大ダメージを受けても死なないようにするには物理防御力を上げてください。魔法をたくさん使いたいのであれば魔法攻撃力を上げてください』


 なるほど、HPとMPは無いんだな。


 HPは物理防御力に、MPは魔法攻撃力に統合されてるってことだろう。


「さっき魔法詠唱の特許登録に必要なステータスポイントは10って言った?」


『はい、その通りです』


 俺が今持っているポイントで10回は特許登録ができるんだ。

 

「レベルアップで得られるステータスポイントってどのくらい?」


『1レベル上がるごとにステータスポイントを10入手できます』


 てことはレベルが1上がれば、新たな魔法をもう1個登録できるんだな。


「1SP(ステータスポイント)で攻撃とかはどのくらい上昇するの?」


『剣士や拳闘士といった物理攻撃系戦闘職であれば1SPで物理攻撃を上げる場合は+10、物理防御なら+4、魔法攻撃は+4、魔法防御は+2できます』


 重戦士や騎士など物理防御系戦闘職が1SPで上げられるステータスは物攻+2、物防+12、魔攻+1、魔防+5。


 賢者や魔法使いのような魔法攻撃系戦闘職が1SPで上げられるステータスは物攻+1、物防+1、魔攻+15、魔防+3。


 聖女や白魔導士は魔法防御系戦闘職。1SPで物攻+1、物防+3、魔攻+10、魔防+6のステータスを強化可能らしい。


 物攻、物防、魔攻、魔防のどれかひとつづつしか上げられないので、自分がどの職業でどういう戦闘スタイルを目指すかによってステータスの上げ方が変わってくる。


 これは俺がやってたゲームとほとんど同じシステムなので容易に理解できた。



『ちなみにですが、祐真様のクラスメイトの中におひとり、戦闘職が勇者になった方がいますね』


「……みなとか」


『えぇ。彼はどれを選択しても1SPにつきステータスが+15されるという勇者特典を得ています。よほどおかしなステータスの上げ方をしなければ、湊様がこの世界で最強の存在になるのは間違いないでしょう』


 ふーん。


 まぁ、あいつならいいんじゃね。


 湊には嫉妬とかしない。

 

 勇者になったのがあいつ以外だったら、恨んでたかもしれないけど。


 成績優秀でスポーツもできる。それでいて俺みたいなオタクにも気を配ってくれるし、一緒にゲームをする仲間だ。湊が勇者って言うのは俺も納得した。


 たぶんこの世界での主人公は、あいつなんだろうな。



「俺はモブでいい。でも、ちょっとだけ夢が見たい」


 ここで俺にはふたつの選択肢がある。


 ひとつはステータスポイントを100使って、魔法攻撃などを伸ばすこと。計算してみたが、全部使えばクラスメイトたちと同じくらいのステータスにはなる。そうなればみんなと一緒に旅ができるかもしれない。


 もうひとつの選択肢。


 それはステータスポイントを使って特許を10個登録するというもの。


 こちらを選択すればステータスは上げられず、みんなとの旅は諦めるしかない。


 悩ましい……。


 でも100年周期の魔王討伐を数百回やって来た女神様が初見ってことは、【特許権】は超レアなスキルなはず。これを活用した方がなにか特別なことが起こるんじゃないかって期待してる俺がいる。


 特許をいくつか登録しつつステータスも伸ばすって選択もあるが、俺はあんまり好きじゃない。


 やはりゲームのステ振りは、バランス型より一極集中型だよね!



「アイリス、雷哮の登録をお願い」


 俺はスキル【特許権】を信じることにした。



『ステータスポイントを10消費します。承認しますか?』


「承認する!」


『承りました。登録手続きを行います。実施中……。完了、無事に新たな雷属性魔法の詠唱 “雷哮” の特許が登録されました。改めて、おめでとうございます』


「ありがと!」


 やっちゃったな。

 もう後には引けない。


 いやまぁ、ぶっちゃけ今ならやりなおせる。


 でもこれ良いんだ。


 さぁ、俺の黒歴史よ。

 この世界で活躍するための礎となれ!


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