表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/50

第25話 はじめての魔物討伐


「ねぇ、アイリス。これ、何とかならないかな?」


 俺は額部分に深紅の角を生やした兎たちに襲われていた。


 角兎っていう魔物らしい。


 5匹の角兎が俺に突撃して来ては、逃げて行く。そして距離をとって加速し、また俺に襲い掛かってくる。


 俺はというと、冥府之鎧が発動して物防も魔防も10万近くになっているので、こんな攻撃痛くない。見た目は尖がっていて刺されたらすごく痛そうな角が俺に向かってくるのに、いざ当たってみると全く痛くない。大きな違和感がある。


『なんとかしろと申されましても……。角兎くらいでしたら、初級攻撃魔法で討伐可能です』


 アイリスには自分で対処しろって言われてしまった。


「俺がこいつらの縄張りに入っちゃったから、攻撃されてるんだよね? なんかそれを倒しちゃうの、申し訳ないなーって」


『これは魔物ですよ、祐真様。人族の敵です』


 そ、そうは言っても……。


 こんな至近距離で生き物を殺すなんて、ちょっと無理なんですけど。


 はじめて雷哮を使った時、俺は150を超える魔物を倒している。でもアレは、そこに魔物がいるって知らずに魔法を放った結果だった。


 その後、俺に襲い掛かってきた魔人を倒したけど、あの時は殺さなきゃ俺が殺されるって思いが強かったからなんとかなった。実際に倒す時も、火炎牢獄で魔人の姿は見えていなかった。


 それにアイリスが倒せって、『魔物を消滅させろ』って指示を出してくれたから。



 角兎を倒さなくても、俺が殺されるわけじゃない。しかも倒すとしたら、俺に何度も突撃してくるこいつらを近距離で殺さなきゃいけない。


 改めて魔物を殺すという行為に考えさせられていた。


 本当に殺さなきゃいけないのか? こんなやつら放っておいても良いだろ。こいつらの縄張りを出れば襲ってこないんだ。俺が移動すれば良い。


 そんなことを考えていた。



『……角兎は繁殖力が高く、放置すれば数を急増させてしまいます。この魔物が数を増やせば、角兎を餌にするもっと強い魔物も増えてしまう。ですからこれは倒すべき敵なのです。祐真様、魔法を使い角兎を討伐してください』


 アイリスが俺に指示を出してくれた。


 優しいな。

 

 俺が指示されたからって言い訳にすることが分かっていて。彼女のせいにするって分かっているのに、わざわざ俺に魔法を使えと指示してくれた。


『少し前方に走ってください』


「了解!」


 言われた通り走り出した。

 角兎たちが走って追いかけてくる。


『今です。反転して火炎弾を! 詠唱は不要です』


「火炎弾!」


 俺は魔法を放った。


 言われた通り詠唱もしなかった。


 必要魔攻10の初級攻撃魔法。

 レベル1の魔法使いでも使える魔法だ。


 俺の手から放たれた火炎弾は角兎たちに向かって飛び──



 その着弾地点から前方およそ100メートルを灼熱地獄に変えた。



「えっ!? な、なんで? 俺、火炎弾使ったよね!?」


 初級魔法なのに、威力が上級攻撃魔法を超えていた。


『魔力が増えて魔法攻撃力が以前とは比べ物にならなくなっているので、魔力コントロールをミスしてこうなるのも仕方ありません』


「そ、そうなんだ」


『それよりこのままでは森が大火事になってしまいます。以前、魔人を討伐した後のように、水龍弾で消火してください』


「あっ、そうだね!」


 言われた通り、水魔法で燃えている木々を消火していった。



 アイリスの指示通りに動いたからか、魔物を殺したことに対する心の負担はなかったような気がする。魔法の威力が異常で、そっちに驚いたってのもある。


 もしかしたら彼女は、俺が使う火炎弾の威力がこうなることも知っていたんじゃないかな。そのまま何も言わなければ、俺は以前の感覚で魔法を使う。その効果に驚いて、生き物を殺したことへの罪の意識が軽減されると。


 考えすぎかな。


 でも、感謝はしておこう。


「アイリス、ありがとう」


『どういたしまして。マスターの心の平静を維持するのも、ガイドラインである私の務め。これからも祐真様のお世話は私がさせていただきます』


「うん、よろしく」


 こうして俺は、はじめて至近距離で魔物を討伐するという経験を積んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ