5日目:がっこう
とまあこんな感じで俺は再び美少女として学校に通うことになりましたとさ
今朝はドタバタだった、早朝に所長が押しかけてきて制服一式と女性用下着を数セット持ってきたのであった
もちろん抵抗するで…とはいかず
「いつまでも思春期青年みたいなこと言ってないで!準備しないと!」
とお袋のようなことを言われて意気消沈した
ちなみに所長のことを年増を想像させる言葉を言ってしまうと…何も言うまい、見た目は詐欺ってるほど若々しいから
抵抗する間もなくあっという間に着替えさせられて学校前まで連れてこられて、対応する先生に預けられ早々と去っていった、ちくしょう
そうしてホームルーム時間の紹介があって今に至る訳だが…もちろん転校生というのは物珍しいものなのか様子を伺うようにこちらを見ている
とホームルームが終わろうとした時にドアが開く音がしたと同時に息の切れた見覚えのある子が入ってきた
「ッ!はっあはあ、ギリッギリセーフ!」
「アウトです」
担任の先生からチョップをくらうギャルギャルしいこの子は
「ミヅキさん。次はないって言いましたよね?」
「たはー、先生ごめんーなさい」
そう昨日事務所で会ったあの子だった
「もう、どうせまた困ってる人に手を貸していたのでしょ?怒るに怒れませんよ」
「んにゃ?今日は普通に寝坊したんだけ…ど」
「放課後までに反省文を書いて提出してください、もちろん手書きでですよ」
コントみたいなやり取りを見ているとミヅキと目が合った
「あっー!アヤネっちじゃん!同じクラスだったんだ!」
「ん?アヤネさんとお知り合いなのですか?」
先生は何やら気付いたように反応する
「…そうですね反省文を無しにする代わりにアヤネさんのお世話をお願いしてもいいですか?」
「もち!てかそうするつもりだったしー!」
二パーとした笑顔でこちらを向いている、こちらとしても願ったり叶ったりだ
「はい!よろしくおねがぃします!」
少し噛んでしまったがまあとりあえず安心だな
あれやこれや授業が進み、昼休みとなった
ここでは昼は基本的に自由で購買部などで昼食を取っても可能だそうだ
授業?かつて下から数えた方が早かった俺の成績では虚しい時間だったさ…ワハハ
「アヤネっち〜!昼だべ昼!食べに行こうず!」
「あっ、よろしくねミヅキちゃん」
ニコッとかえす、うんうん美少女ギャルに誘われるなんて夢見たいな光景だなぁ
「ミヅキさん?タチバナさんをあまり振り回さないようにね」
横から西園寺さんが割って入ってきた
「おお〜ユウカっち!」
「もう!また遅刻したんでしょう気をつけないと」
ん?もしかして
「あの〜、ユウカちゃんももしかして同じ…」
「はい、挨拶が遅れました、よろしくお願いいたしますね」
笑みを浮かべて挨拶をしてくれるユウカちゃん
「貴女が休み時間貴女を連れ回すので声をかける機会がなくなったのですよ」
そういえば休み時間合間合間に色々案内されたなぁ
「ごめんねユウカちゃん、私から声をかければよかったのに」
申し訳なさそうに謝る、実際声をかけれられなかったのは事実だし
「そんなことよりー!はよ昼メシ食いに行くべ!もうお腹ペコペコなんよ〜」
ユウカと顔を合わせて思わず笑ってしまう
「えぇ、そうですね、とりあえずお昼を頂きましょうか」
「私もお腹減ってたんだよね〜」
そう言って私たちは…俺たちは昼を求めて購買部へ向かった
「んむんむ、菓子パンもいいけどたまにはお弁当も食べたいよね」
チラチラとユウカの弁当を見ながら菓子パンをモグモグ食べているハヅキ
「ダメです、そんなに言うのならお弁当作ってきたらどうですか?」
「ぬ〜、料理全然ダメなんよ〜いいじゃん一口ぐらい」
その言葉を無視して弁当を食べるユウカ
まあ俺も今日は菓子パンなんだけど、気持ちはわかる
「ねぇー、ユウカ酷くね〜、あーしらにも分けてもろても〜」
「ミヅキちゃん…俺も菓子パンだけどしょうがないよ、今度作ってみる?」
久々に学生同士で食べる昼食に気を緩ませてたのか
ある失態に気づいた
「ん〜、今日おしゃべりしてて思ったんだけど」
「アヤネっち俺って言うんだよね」
俺は思わず食べる手が止まった…やっちまった
「そ、それはね!えっと!その!」
あたふたしてる俺に意外なところから援護が来た
「別にいいのでは?」
「俺と言う女性がいても別にいいですし、おそらく幼少期に影響でも受けたのではないですか?」
「えっ?、うん!そう!知り合いのお兄さんと遊んでて〜それでちょっとした癖がね!」
助かった!めっちゃ助かったぁ〜!
「かっこいいな〜アヤネっちの意外な一面知ってんのあーしらだけっしょ!?」
「ふふっ、ですね」
穏やかな昼下がり冷や汗をかいた俺はふと息を吐いたのであった
放課後…
激動だった転校初日を終えた俺は質問攻めを喰らっていた
職員室に呼び出されたミヅキは遅刻の件で反省文は免れたものの説教は頂いているらしい
その間にユウカと話しているとクラスメイトがおずおずと近づいてきたのであった
そして以降はユウカが間に挟まりながら質問を受け流していた
「彼氏とかいるの!?」「どこから来たの!?」「好きな食べ物は?」「めっちゃ綺麗〜」「ちくわ部に興味はありますか?」
おい、最後のなんだ?
そそくさと帰るように逃げ出したユウカと俺はミヅキの説教が終わるまで待っていた
「ふへ〜担任ちゃん説教長すぎるよ〜」
俺を後ろから抱くように頭に顎を乗せながら愚痴るミヅキ
ちなみに柔らかい感触に俺は平常ではない
「こらっ!アヤネさんが重そうに固くなってるでしょ!離れなさい」
「だーれーが重いって〜、はぁ〜なえなえ」
「ははは、だいじょーぶですよ俺は」
こんな感じで愚痴りながら帰っている平和な放課後だったが、何か違和感を感じた、あの時と同じ嫌悪感だ
「…んー、平和な下校時間を邪魔するん?」
「能力者ですね、居場所はわかりますか?」
2人とも先ほどとは違う雰囲気となる、間違いないな
"能力者"が俺たちを狙ってる
「ちょっち待ってね、今能力展開するからユウカっちは周りの警戒よろ〜」
そう言ってミヅキはデバイス外のモニターを表示させて真剣な目つきで操作し始めた
一方のユウカはどこからか出したのかわからないが薙刀を構えて周囲を警戒する姿を見せている
「アヤネさん…私の近くにいてください」
俺は言う通りにユウカの近くに行った
「も、もしかして敵対の能力者ですか?」
「ええ、こちらに対する敵意を感じ取れましたので間違いないかと」
「おっけー!ユウカっち!場所割り出せたよ!範囲は半径100m内に潜んでる!8時の位置南南西距離およそ40mメートルだね!」
「了解!」
ミヅキに抱えられて場所移動する俺たち、一体どうなるんだ?
人通りの少ない路地裏の広場に男は立っていた
ぞくっとしたがおそらく能力者なのだろう
「ふーん、キミがあーしらを狙ってたのね」
男は驚いたようにこちらを見ている
「くくくっ、まさか好みの女をサーチしていたがまさか能力者だったとはな」
気色の悪い笑顔だった
「…何も言うことはありません、貴方を捕らえます」
「きひっ!俺は能力者なんだ、選ばれし者、捕えられるのはお前たちダァぁぁァアッ!!」
鉄パイプを柄で受け止めるユウカ、薙ぎ払うように距離を取る姿に手練れた雰囲気があった
ミヅキはデバイスを操作しながら俺と一緒に身を潜めている
「大丈夫だよ、あーしの能力はミラージュって言って身を隠す能力なの」
「あとはプログラムデバイスでユウカっちの身体強化ナノマシンの底上げみたいなことしてるんよ!」
「後は索敵特化ナノマシン的なのでサポートしてんの!」
「す、すごい!」
ユウカと男は高速で戦闘している、一進一退の攻防に見えるがユウカはあからさまに汗一つかいていない
「くっ!ハァハァッ!このアマっ!」
「どうされたのですか?この程度でまさか終わりだとおっしゃいますか?…ハァ」
「すごい、まるで敵にもなってないね」
素直な感想が口から出る
「まぁね、ウチのユウカならこんな雑魚、敵じゃないっての笑」
誇るように胸を張る、たしかにそこら辺の男よりというか俺より強ぇ…
「クソッたれガァ!もういいこんなガキに使うとは思わなかったが」
「…何を?」
男はいきなり注射らしきものを取り出すとそれを首に突き立てた
謎のものを注入すると、男の様子がおかしくなっている
「グハァぁ、ハァハァハァ、ンアっぁぁああ!」
みるみると男の体が灰色に染まっていく、筋肉量も明らかに異常なほど盛り上がっていく
「ねぇ!ミヅキ!あれ何なの!?」
「あちゃー、違法ナノマシン持ってんのかー」
ミヅキは至って冷静に分析している
アワアワしてる俺はどうしようか迷ってる
「…なるほど、違法に製造された強化ナノマシンですね」
一方で冷静なユウカは薙刀ではなく、いつのまにか剣を2本持っていた
「グハハ、ヤハリ気分が良くナル、最高のナノマシンダナァアア!」
「おけー、分析完了」
「ん?えっ!?」
「ユウカっちー、"最高純度"じゃなくて"劣化"の違法ナノマシンだわ、四股切り裂いて確保が妥当じゃんねー」
「ハァ、そこそこ楽しめると思ったのですが能力者としても3流、身体の底上げすらド3流」
「話になりません」
男はキレ散らかしながら
「フザケルナァァあ!」
ユウカに先ほどより速いスピードで突進した
「ひっ!」
「大丈夫だよー、ユウカっちは」
俺を抱きしめながらミヅキは言う
「国内で最強の一角だからねー」
「つまんない」
「ヘェ!?」
男の手と足がバラバラに吹き飛び胴体と頭だけが地面に落ちる
その持っている剣には血の一滴すら残ってない
「おけー、両手両足切断による確保完了!ナノマシンも力弱まってるねー」
「本部への連絡は?」
「それも既に連絡済み!研究機関が持っていくってー」
「そう、ありがとうミヅキ…それとアヤネさんは?」
俺は呆気に取られていて、いつの間にか震えてた足も治ってて地べたに座っていた
「ははっ、強いね2人とも」
「だしょー!こう見えてあーしらも場数踏んでるからさー!安心してね!」
「どうやら大丈夫だったみたいですね、立てますか?」
手を差し伸ばすユウカの手を取り立つ俺
思わずユウカに抱きついていた
「あ、ありがとー!ユウカちゃん!」
ユウカは硬直したものの、顔を赤くしながら
「当然です、貴女が無事でよかったです」
「ていていー、あーしも頑張ったんだけどなー」
「ふふふ、もちろんミヅキさんもありがとうございます、ああ明日お弁当分けてあげますよ」
「ええっ!マジ!やったぁぁ〜!」
研究員に男の身柄を引き渡してから、私たちは再度事務所へ帰っていった、俺も…いや、なんとか力になりたいなと考えながら。
おまけ〜昼休みの一般生徒たち〜
「おい!ビックニュースだぜぇぇ!おい!」
「うるせぇなぁ一体なんだよ」
「校内2大美少女のオタクに優しそうなギャルとクーデレ性格委員長キャラの2人と!」
「謎の転校生俺っ娘系謎の美少女が一緒に中庭で飯食ってんぞ!」
「お前今謎って2回言ったぞ」
「んなことぁどーだっていい!気になんねぇのかよ!」
「ふふっ、そんなこと…」
「気になるに決まってんだろぉぉがぁよッ!行くぞッ」
「さっすが!オラの心の友よぉっ!」
「岸くん、渡辺くん?反省文は書き終わったのかな?」
「「いえ、まだですすいませんゆるしてください」」
「反省なしっ…と10枚追加ね♪」
いやぁぁぁあ〜
補足説明
名前:小鳥遊 美月
能力名「ミラージュ」
能力者が許可した場合のみ認識できる身隠し能力
それ以外のありとあらゆるモノから認識できなくなり高性能のレーダーや探知機、気配や匂いすら遮断してしまう
ちなみに攻撃などは通ってしまうので範囲的な攻撃が弱点となってしまう
メインウェポン:自作支援型AIデバイス「パーリィピーポ」
支援に特化した自作のAIデバイス、対象者のナノマシンや武具にアクセスを許可されることにより遠方からの強化支援が可能となっている
一時的な出力強化や回復など支援も多岐に渡る活躍を見せているが本人曰くまだまだアプデする予定とのことでその力は進化し続けている
サブウェポン:自作索敵プログラム「さがーす君」
既存のマッピングプログラムを自身で改造、更に強化されている、"能力者"の反応を受信する機能を組み込んでいて場所の特定、ルート構築など対能力者に特化したシステムとなっている
なお詰めるだけ詰め込んだのでマップ表示に制限がかかっており直径800mまでの範囲しか適応されない
(ちなみにそれでも頭がおかしいレベルの改造との評価らしい)




