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4日目:ふたりのなかま?

検査を終えて所長の車に乗せられて事務所へ向かう

到着したのはいいものの何やら事務所内から話し声が聞こえる

「あちゃー、そっか今日はあの子たちが来る日だったか」

と所長が困ったように言う


「まっ!いいか橘くんも一応見た目は女性になったんだし笑」

「いや良くないですって」

「それで誰か来客の予定でもあったんですか?」

「うーん、ここで説明するより会って説明した方がはやいかなー?」

素敵な笑みを浮かべる所長、嫌な予感がします


ガチャリと音を立てて事務所に入る所長と後に続く俺

すると中では2人の美少女が来客用のソファでくつろいでた

「あー、所長帰ったんですか?」ポリポリ

寝転びながらお菓子を食べている金髪の女の子が言う

「ミヅキさん、行儀が悪いですよ」

一方でデバイスを開いて勉強しているショートカットの黒髪の真面目そうな女の子もいた


「うぉっほん、お客さん…というより来客がいるんだけどね〜」

「えっ!マジで!?」「…ふぅん」

所長の後ろに隠れるようにいた俺はおずおずと姿を現す

「あの…、えと、ハジメマシテ?」

暫く沈黙が訪れるとその沈黙を切り裂くように金髪の女の子が目を輝かせながら近づいてきた


「うわっー!めちゃ可愛い子じゃーん!よろしくー!ウチはね小鳥遊たかなし 美月みづきっていうんだ!」

「こらこらミヅキっち、この子フリーズしてるから」

ギャルギャルしいクソ強コミュ力で襲われた俺はジェネレーションギャップに困惑した


「ちょ、ちょりーす、、、なーんて」

「イェーイ!よろしくぅ!」

なんとかパフェコミュを導き出せたと安堵するともう1人の女の子も話しかけてきた


「…いきなり騒々しくして申し訳ありません、私は西園寺さいおんじ 優香ゆうかと申します、ユウカとお呼びください」

ペコリと軽い会釈をする佇まいに何処か別次元の気品さを感じた


「ところでいきなりですが貴女のお名前をお聞かせ願えませんか?」

「そーそー!ウチらと同年ぐらいしょ?すぐトモになれるしー」

俺は絶句した、俺は「たちばな 翔駒しょうま」もろ男の名前だ!なぜかわからんがこのまま言ったら危険な気がする


俺が冷や汗をかいている最中に所長が笑みを浮かべて言った

「この子は「たちばな 綾音あやね」ちゃんだよ!少し緊張してるから私から紹介するよ笑」

た、たちばなあやね!?所長なに言ってんすか!?


「そうですか…ではタチバナさんよろしくお願いします」

先ほどよりなぜか固い雰囲気が和らいだ西園寺さん

「えへへ!よろしくねアヤネっち!」

満開の笑顔で喋るミヅキちゃん

「あははー…こちらこそよろしくお願いしますね。」


「さて、みんな揃ったようだネ」

所長席で前に手を組んで顎に乗せる某司令官のような佇まいの所長

「それで、今日顔合わせをしたい方がいるとのことでしたが…もしやタチバナさんのことでしたか?」

「ウム!君たちとこれから活動してもらう能力者の紹介だよ」

「なるほど、タチバナさんも能力者に目覚めたのですね」「マジ!?アヤネっちも能力者なん!?」


「ちょっと待ってください!所長!この子たちも能力者なんですか!?」

戸惑いと困惑を抑えきれなかった俺は思わず立ち上がり言ってしまう

「タチバナく…ちゃんにも説明したけどウチは政府公認の能力者対処機関だからねー、そりゃあ構成員の1人や2人はいるよ」

「そりゃあ!…そうですけど」

「そして能力者に目覚めるのは偶発的で選べないんだ、だからこそ目覚めた者に選択させるんだよ」


「そして彼女たちは治安維持のために戦うことを決めたんだネ」

「ですけど、それは…」


「…心配されてることはわかります、ですが私たちは自ら選んだのでご心配なさらずに」

「そーそー、悪ノリでノウリョク使われたらウチらも居場所なくなるし」


心配していた少女たちは思ってた以上に心が強いのかもしれない

「てかアヤネっちもウチらと変わらんじゃん!儚げな雰囲気だしちゃって〜このこの〜」

ミヅキちゃんにうりうりとほっぺを指でグリグリされる俺は確かに"今"はこの子達と変わらない少女だった


「それでタチバナさんはどのような能力をお持ちなのでしょうか?」

西園寺…ユウカさんが興味のある目で所長を見ている

「うーん、実は今日適性検査受けたばかりだからね、どんな能力で前線向きなのか支援向きなのかはまだわかんない」

「…たはは、面目ない」

「でもでも!アヤネっちはあーしらと一緒で戦うことにしたんだよね!それだけで充分だし!」

「まあ、少なくとも敵ではないのですからそれだけでも良かったです」

ミヅキちゃんは朗らかな笑顔でフォローしてくれて、ユウカちゃんはやれやれといった微笑みで返してくれる


「それでは良い時間ですし、お先にお暇させていただきますね」

時計をチラッと確認するとまあまあ時間も経っていた

「えー、もうちょい遊んでこーよー」

ミヅキは不満げな声で言う

「ミヅキさん、明日も学校があるのですからそこで交友を深めては?」

「むー、しょーがないなぁ」

そうそう学生は学校でだな…ってえ?


「じゃあね!アヤネっち!またガッコでね!」

「それでは失礼致します…また明日」


2人は荷物をまとめて早々と事務所を後にした

古い時計がカチカチと音を鳴らす、所長と2人になった俺は苦虫を噛み潰したような顔で所長を見た

所長は吹けてない口笛を吹きながらわざとらしい態度を取っていた


「所長。」

「さてさて、アヤネちゃんも明日は早いんだから帰って休むと良いヨ」

俺は無言で所長に詰め寄る

「ははは…アヤネちゃんいくら同性同士になったとはいえいきなり詰め寄るのはねぇ」

「…言いたいことわかりますか?」


「うう、その綺麗な顔で見つめられても」

「説明です」


観念した所長はソファに腰を下ろして説明し始めた、もちろん俺も対面に座る


「今日適性検査を受けに行っただろう?君は自分でもわかってるように女性になってしまったんだ」

「いくら私たちがね理解してても君が俺は男だと主張しても周りは「何言ってんだこいつ」みたいな反応になるわけだヨ」

ここまではわかる?というジェスチャーに俺は頷く

「そしてもう一つ理由があってね、そんなトチ狂った主張する人間にはある仮説が立てられるんだ」

「もしかしたら能力に目覚めた人間ではないか?ってね」


「だってそうだろう?君みたいな整った美少女が男だと主張する=何かがその身に起こったと考えられる」

そこまではなんとなく理解できる、でも

「でもそれだけで特に困ることなんて」

と言う俺に所長は真剣な顔つきになる


「能力者はそんな生半可じゃない、自分の敵になりうる存在は排除することでリスクは低くなることを熟知している」

「言いたいことは君が能力者と勘付かれることが危険ってわけ、能力もわかってないのに」


理解した、確かに危険極まりない

「…ちょっと楽観視してました、すいません」

「わかってもらえれば良いんだよ」

「ですが…なんですか?タチバナ アヤネって!」

そういうと所長の雰囲気も和やかになった

「良いネーミングだろお、ふふん感謝したまえ」


「名前は百歩譲って良いです!なんですか学校って!?」

「カモフラージュだよワトくん」

「誰が助手ですか」

「木を隠すなら森の中という言葉があってねぇ、君の見た目で平日からウロウロしてるだけで目立つだろ?」

「だから学校に行ってもらうことにしたんだヨー」


「学校とか勘弁なんですが…」

「ああ、ちなみに戸籍も変えているし学校にも手配済みだよ」

行動が早い!いや早すぎる!

俺が項垂れていると


「まあ政府のパワーはすげぇなぁと思っといてくれたまへ」


「横暴だぁぁー!」


俺の虚しい叫びは事務所内に消えていった。




〜綾音帰宅後の事務所内にて〜


私はみんな帰った後、研究所より送られてきたデータを閲覧していた

側にあった職員カード兼パスキーを手で遊ばせながら目の前に浮かんでいるタチバナ君の検査結果を見直す気にはなれなかった


「まさかねぇ…」


再度温め直されたコーヒーに口をつけると変わらないはずなのにいつもより苦く感じる


「偶然であるべきなのか…神様のイタズラなのか、こんな時代に考えるべきことではないかぁ」

空になったマグカップを自動洗浄機に雑に突っ込み再び椅子に座り直す


「…頑張ってくれたまえよ、タチバナちゃん」



一方でやけ食いして早々に就寝した翔駒もといアヤネちゃんでした

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