10日目:たいさく、そして
中間テストを控えている身ではあるが鍛錬もこれから先必要になるので継続して行われていた
俺はシャワー浴びる前とその後に入念なストレッチをやっていた
筋肉痛は数日も経てば軽くなって以前よりも動きや耐性も付いている実感があった
「いっちに、さんし、っと」
足を伸ばしながら机の上にある乱雑に置かれたテスト対策から目を背けるように…
「といっても、やらなきゃいけないよなぁ」
なんてストレッチを終わらせると渋々と机に向かうのであった
翌朝眠い目を擦りながらまだまだ惰眠を貪ってる休日の時間帯に俺は重い足どりでとある場所へ向かっていた
目的地にはすでにユウカが外に置かれたテーブルでカップに口をつけながら何やら書類を見ている
「おはよー、ユウカちゃん早いね」
「おはようございます、少し冷えましたがココア飲みますか?」
机の上に置かれていたもう一つのカップを勧めてきたので俺はありがたく受け取った、猫舌だからありがたい
「今日はよろしくおねがいします、ユウカ先生」
俺は深々と頭を下げる
「いえいえ、私もテスト勉強するつもりだったのでちょうど良かったです」
微笑みかけるユウカ、天使や…
「ミヅキちゃんは?」
「あの方なら今先ほど連絡が来まして、少し遅れるとのことでした」
そっか、朝弱いみたいなこと言ってたしね
「ですので、私たちは先に図書館に入ってやっておきましょう」
「はぁーい」
そう、今日は図書館に来ているのだ、魔の中間テストに向けての勉強会だ…主に俺の対策メインだけども
俺とユウカは飲んだカップをゴミ箱に捨てて室内へ入って行きましたとさ
「ごめーん、遅れちゃった!」
小声で謝るように自習室に来たミヅキ
「…」「ああ、ミヅキさん」
俺は机に突っ伏してた、頭がショートしそうにな
「あやー、これはこれは苦戦してますなー」
「教えがいがあるとは言いますが…あの、えっと」
「悪いのは俺の頭だから、ごめんなさい」
そう、ユウカの教えは悪くない、むしろかなりわかりやすい
けど相手は俺となるとね
「うーん、赤点避けられるかどうかってかんじ?」
ミヅキは勉強した残骸からパラパラと見るだけで一瞬で理解したようだ
「ええ、あの例の小テストよりかは上がったのですが」
言いにくそうにするユウカ、それを見て困り顔のミヅキ
「んー、急激な成績の上昇なんて無理ゲーだし今回は赤点避けるぐらいでいいんじゃね?」
「ですが!…いえ、そうしかないのですね」
「アヤネっちも限界っぽいし、午後からは休憩でいいと思うわー」
「ごめんね、2人とも」
情けなくて涙出そう、なんなら少し涙目な俺
こんなに涙脆くなってたっけ?
「いえ、これからですよ!鍛錬も勉学も私たちと上げていきましょう!」
「それな、焦っても逆効果的なこともあるし昼飯食べて元気出すべ!」
「あ、ありがとー!」
2人に慰めてもらった俺、やっぱり良い子たちだな
「んじゃ!ランチ行くべ!あーし行きたい店あってさー」
「ミヅキさん、まさかそれが狙いだったのでは?」
「固いこと言いっこなしなし!ねーアヤネっ!」
「いきましょー!おなかへったー!」
知能の限界に達した俺は本能に任せていた
「はぁ…しょうがないですね」
ミヅキの案内する店に行く途中ミヅキと戯れあいながらお腹も頭も満たされた、ユウカは暫く黙って後ろをついて来ていたがなにか考え事していたのかな?
「ふー!休みの日はこうでなくちゃ!」
「だねー、ふわふわだねー」
昼食が終わって公園で3人ゆっくりしていた俺は以前よりも充実している時間に満足していた
が、先ほどから違和感を感じる…何か"嫌な"雰囲気
ミヅキはいつの間にかデバイスを展開していた、それを見て俺は察した
「ミヅキ、観測できましたか?」
「んー、反応は一瞬あったみたい、だけどすぐ消えてから見つけきれない」
「やっぱり…能力者?」
「ええ、一瞬ですが反応があったみたいですね」
ユウカは淡々と言っているがその周囲の隙は無くなっている
「あー、反応完全ロスト、かなーり警戒してるかも」
「それか、同じ能力者を探しているのかも?」
俺はぼそっと思ったことを言った
可能性としてはありえる、相手を炙り出して自分の好条件が揃った戦いの場に持ってくる、戦う上での当たり前の行為だ
「そうですね、私たちを誘き寄せる罠という線もありえます」
ユウカは考え込んでいる
「…少し慎重になるべきですか、ミヅキさんアヤネさん、今日は私の自宅へ泊まってください」
「あーしも同じこと考えてた、そーすっか」
「え?」
お泊まり?誰が?俺が?ユウカの家に?
「…俺も?」
「?当たり前じゃないですか?」
「うーん、まあはっきり言って一番狙われるのアヤネっちだろうしね」
うんうんと頷くミヅキ、そりゃそーだけど
そうも言ってられない、俺は1人で相手をすることなんてかなり危ない、物理的には能力的に大丈夫だろうが、相手はどんな能力を持っているかもわからない状況で1人は危険
「うぅ、よろしくお願いします」
俺は諦めた、ぜぇったい強くならなくてはと思う一時であった。
おまけ〜モブ休みの日〜
「あーあ、何か良いことでもおきねーかな」
「ねーよんなもん」
「あのさぁ、岸さんよぉもしかしたら美少女とあの角でぶつかってからな、そこからラブロマンスが始まるかもしんねーだろが」
「お前がぶつかんのはトラックぐらいだっつーの」
「はぁ…テストも間近に迫ってんのに勉強する気おきねーわな」
「渡辺、お前まさか」
「いいじゃねーか、赤点で補習でもなんら変わらねーんだからよ」
タッタッタッ
「あーあ、橘さんとこう、ぐわっと出くわせたらな」
ドンッ
「あいたたたっ、」
「お、おい渡部、あの大丈夫ですか?」
「すいません、少し急いでて…ってあ!」
「渡辺くん?ごめんなさい!大丈夫ですか?」
ヒュエ!?たたたた橘さん!?
「おま!?渡辺!?あ、あやまれ!」
「ごごご、申し訳ありません!タチバナさん!」
「こちらこそ、急いでいてごめんなさい!」
「あの!怪我とかありませんでしたか?」
「あ!こっちは大丈夫!頑丈だけが取り柄で!タチバナさんこそ怪我とかありませんか!?」
「ふふっ、こっちも大丈夫でしたよ」
「そそそ、そうでしゅか!」
「ごめんなさい、急いでいたので!それでは!良い休日を!」
タッタッタッ
「俺、おれは今日人生で一番良い休日過ごせるかも」
「右に同じく…友よ」




