友達に借りパクされていたギターが戻ってきた
すべてが波に押し流された
家族も親戚も 本も楽器もCDも
あの日の写真も 賞状も
誇りと喜び 辛い想い出さえも
まっさらに上書きされて
どうして今さら 生きているんだろう
俺なんて いつ死んでも構わないんだよ
そんな時
友達に借りパクされていたギターが戻ってきた
友達は俺に かける言葉さえ見つからず
バツが悪そうに 頭を下げた
黙っていれば 忘れていたのに
それでも 俺に頭を下げにきた
俺が吸わない 煙草の匂いが染みついたギター
これはもう 俺のものじゃないよ
でも
寂しさ紛らわし 爪弾く音がこう言っていた
空気を震わせこう言った
お前はひとりじゃない
俺達がここにいる
お前は……ひとりじゃない
わけもなく 涙が溢れて
俺は床に崩れ落ちる
お前は特別だ 俺の人生で特別だ
このギターより
先には死ねない