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聖王メルテアへの軌跡  作者: 遠野月
晩餐会
23/28

挨拶回り

「殿下」



ラアトが後ろへ下がってすぐ、シェトレが傍へ寄った。

会話を聞かれたのだろうかと、一瞬慌てる。



「そちらを一口食べられたら、お時間となります」


「分かったわ」



メルテアは再びほっとして、小さく頷いた。

一回目の食事を終え、果実のジュースを一口含み、息をつく。

身体と気持ちのざわめきが落ち着いたのを見計らい、メルテアはエルダに向かって手のひらを向けてみせた。


エルダが厳かに立ち上がる。

つづけてラズフロスカルのテンドラと、ネロブロムシアのオウラが立ち、メルテアの傍へ寄った。

もちろん護衛騎士も付く。前に二人、後ろに二人。

メルテアの希望もあり、ラアトが後ろの護衛騎士のひとりとなった。



「それでは参りましょう」


「御意に」



三人が礼をして、メルテアの歩む先を整えていく。

先頭をテンドラが進み、次にメルテア。そのすぐ後ろに、エルダとオウラが付いた。


大広間の二段目に降りると、待っていたかのように貴族たちの目がメルテアへ向いた。

とはいえ、想像していたよりも騒がしくはならなかった。

やはり皆貴族である。余裕があるのだろう。我先にと声をかけてくる者はいない。



「お初にお目にかかります、王女殿下」



ひとつひとつのテーブルへ寄るたび、誰も彼も畏まった。

「おう!」 とか、「よお!」などと言ってくれたらずいぶん気が楽になるのだが。

皆が皆、仮面を着けているようだとメルテアは思った。

しかしそんなことだけを思ってはいられない。この機会に、多くの者の名を覚えなければならないからだ。

わずかでも個性を読み取り、貴族たちの顔と家の名を頭に叩き込んでいく。



「殿下の御美しさを、この日まで隠してこられたとは」



テンドラよりも太った男が、目を丸くさせながら言った。

メルテアは「滅相もないことです」と答え、微笑みが崩れないように耐える。二人に一人は、メルテアの外見に触れた話となるからだ。

淡い光を放っている髪については、婦人たちが食いついてきた。どうすればこのような髪になるのかと、羨望の眼差しを向けてくる。



「ご婦人方。殿下は聖なる祝福を受けたのです」



困り果てたメルテアを見かね、テンドラが婦人の相手を務めてくれた。



「戴冠式の最中に光を受けたというのは、本当なのですか?」


「真でございます」


「まあ! ストロゼアの聖なる血は、やはり護られているのですね!」


「真にその通りでございます、ご婦人方」



テンドラが大きく笑う。

その笑い声の後ろにメルテアは隠れつづけ、なんとか二段目の挨拶回りを終えた。

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