プロローグ
大鏡に、美しい少女が映っていた。
それが私だと信じられるようになったのは、本当に最近のことだ。
身に纏っているのは、華やかなドレス。
侍女のシェトレには、もっと豪華なドレスを着たほうがいいと言われる。
でも、私は着ない。
重いし、動きにくいからだ。
アクセサリも軽いもので済ませてもらっている。
「さあ、そろそろ時間であろう」
男の声が、私の背を打った。
振り返ると、銀髪の男が私を見ていた。
男の名はザルバラアト。
三百年前に、このガルア大陸を支配していた邪王である。
もちろん三百年前に死んでいたはずであるが、私がうっかり蘇らせてしまった。
ザルバラアトを蘇らせたことで、私の人生は変わってしまった。
いや、取り戻したというべきか。
私、メルテア=レニ=ストロゼアウルは今、ストロゼア王国の王女である。
そして、かつてガルア大陸を支配していたペルフェトラスエル王の末裔でもある。
両王族の血を受け継いでいるメルテアは、つい三十日前まで貧しい娘であった。
「聞こえておるのか」
「今行きます」
人生を一変させたザルバラアトに、メルテアは応える。
ようやく着慣れたドレスをそっと摘まんで駆け、ザルバラアトの袖を掴む。
ザルバラアトが、小さく笑った。
時々見せる、柔らかい笑顔だ。
この煌めく日々。
取り戻せたきっかけは、ほんの小さなことであった。
メルテアが日頃心掛けていた善行。そのひとつが、綻びかけていた呪いを解いたのだ。
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