河童と少女
川のせせらぎの横の田んぼに、稲の葉とあおい香が漂っています。
夏。畑のきゅうりがなくなる季節。河童がきゅうりを食べるんです。
河童とはつかずはなれず。遊ぶわけでも追い払うわけでもなく暮らしていました。
「きゅうりを食べさせてやりたいけんど不作で困んだよなあ」
「河童ときたら高級きゅうりばっかり食べんだ。おしおきすんべか」
「んだんだ」
村の大人たちは河童をきゅうりでおびきだして捕まえると縄で木に括りつけました。
「三日ほど乾燥させんべ」
「んだんだ」
河童が次第に弱って干からびていく姿が可哀想で、女の子が河童の頭のお皿にお水をあげようとしましたが大人たちに取り上げられてしまいました。
こうべを垂れている河童のお皿に少女の涙がこぼれました。
すると、河童は元気を取り戻し縄をほどいて逃げていきます。
河童は少女に手を振りました。
バイバイともありがとうとも振っているように見えました。