エ! ボク、主人公ジャナイヨ。
森の奥で何が有るのか?
俺はモンスターを倒しながら、全くのヤマ勘で森の奥に進んで行く。
時には敢えて獣道を進んだり、時には出口が見える洞窟を進んだり、時には小丘を登ったり降りたりして、進むと霧が発生して、直ぐに濃霧になり、それでも進むと神社が有った。
「う~ん。完全な気まぐれで選んだのに、何か有る場所に出たぞ。」
とりあえず、鳥居の前で一礼、手水舎で左手を洗い右手を洗い、左手に水を貯めてそれで口内を濯いで所定の場所に破棄して、柄杓を立てて残り水で柄杓を洗う。手の水気を取った後、参道の右側を進み、鈴をカランカランと鳴らして、賽銭箱に縁起物という事で思い切って金貨1枚を入れて、二礼二拍手一礼。
「此所での日々が大切な人達との楽しい思い出になりますように。」
[気に入ったぞ!]
「え!?」
眩しい光が視界を奪ったと思ったら、360度一面が石畳に埋まっていて、俺の目の前に和風の軍神と言えばしっくりくる存在が居た。
いや、軍神の「神」の所が「人」じゃないのは、ゲームなのに、感じる圧迫感とか引退する前の家の徹真の爺さん以上だからだ!!
[さあ。準備を整え、我と戦うのだ!]
「ちょっと待ってください。どういう事ですか?」
[ん? 知らずに来たのか? ……いや、そうでなければ辿り着けぬか。まあ、過程は兎も角、此所はそういう場所だ。我と戦い、勝利すれば、神の恩恵が授けられる。内容は千差万別だがな。]
これは戦うしかないな。
まあ、此所なら誰も見てないから、異空間収納から、あの装備品を使おう。
俺は操作して装備品を交換する。
軽く刀を抜き、振って感触を確かめて納刀する。
しかし、この流れはまるで、王道系異世界物だな。
……エ! ボク、主人公ジャナイヨ。
でも、そういう話の主人公は日本じゃ平凡だったな。
……さて、現実逃避は止めて、頑張りますかな。
「待たせたな。」
[構わぬ。準備は良い様だな。互いに名乗り合おうぞ!]
「俺の名は『ソーマ』だ!」
[我の名は『大地の武勲』だ!]
《ソーマ対大地の武勲の決闘を開始します。》
「え!?」
[行くぞ!]
「くっ!」
これは一合で充分理解した。
キンキンカンカンしてたら負ける。
手は痺れるわ、押し負けるわで、向こうの攻撃は可能なら全て避けて躱して、僅かな隙を突いて技スキル「居合」で削るしかない!
こんな時、何で魔法が使えねぇんだー!
こういう時の為に回復魔法を選んだのにー!!
あれからどれくらい経ったのだろう?
いつの間にか沈む夕日まで景色に入っている。
後、途中で何回かスキルが手に入ったみたいだな。
それでも、何と無く分かる。
後、一撃入れれば俺の勝ちだ!
……そこだ!
「覇っ!」
[……ぐっ!……我の負けだ。]
「……やった! 俺の勝ちだー!!」
[うむ。見事な戦い振りであった。一合目で瞬時に正面からの力押しでは勝てないと判断し、我の攻撃を躱して、その僅かな隙を突いて攻撃する。素晴らしかった。……ん? お主の刀はもう使えないみたいだぞ。]
「え!?」
《ソーマの玉鋼の刀は耐久値を超えたので破損されました。》
「ああ~!? 追加効果とか全部消えてATK+1だけになっている!?」
[そうか。なら、本来の神の恩恵以外にも、我に勝利した褒美として武器を授けよう。]
《大地の武勲から武器『鬼神刀』が譲渡されました。》
「え!? HP、MP、STR、VIT、INT、MID、AGI、DEX、LUK、全部に+5%でATK+80になっている!?」
[そうかそうか。そんなに喜んでくれると、我としても嬉しいぞ。]
「……いや、そうだ! 名前だよ!」
[名前がどうした?]
「名前が大地の武勲って、それは『大国主命』の別名だよな?」
[おお! 良く知っておるな。その名は我の幾つも有る名の中では余り知られていないのだがな。]
「なんで、そんな大物、もとい、偉大な方がこんな所から出て来るんだ?」
[ああ。先ずはあの社は本殿に繋がっていて、我は本体から別れた『分御魂』だからな。まあ、要するに弱体化した分身だ。]
「……納得した。それと、この刀は何?」
[それはだな、簡単に言えば成長する武器だ。成長するのに必要なモノは色んな所に有るから探すが良い。近くまで来れば、その刀が導いてくれる。うむ。気分が良いから、戯れにもうちょい褒美をやろう。……ソーマよ、刀をもう一度見てみい。]
大地の武勲から光の玉が生まれ、刀に入っていった。
「……、え~! 追加効果『不壊と、居合時、ATK+80』が付いている!?」
[がははは! 良い反応だ。]
「若干、抵抗感が有るが過分なる褒美をありがとうございます。」
[うむ。きちんと感謝を述べる事が出来るのは素晴らしい事だ。善哉善哉。]
「もう、充分な様な気もするけど、本来の『神の恩恵』とは何でしょうか?」
[おお! そうであった! では、『天照大御神』に代わり神の恩恵を与える。]
そう言われた瞬間、俺の全身は光り輝き、暫くすると消えた。
《ソーマのスキル制限が解除されました。》
「へ!?」
[これにて『決闘の儀』は全て終了した。ソーマとやら、また再会する日を楽しみに待っておるぞ。]
大地の武勲が光り輝き視界を奪われたと思ったら、森の入り口に居た。
なんでこの場所に転移するんだと、不満に思いながら、自分のステータスを見る。
「え~!?」
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。