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オールドサーガ・ファンタジー・オンライン  作者: あまのやぎ
第3章~魔法、解禁~
39/95

夫人の憂鬱。

アールピージー的なイベント。

 話の内容はこうだった。

 ほんの少し前までは、夫である騎士団長は欠点を探す方が難しいと言われる程の出来た夫だったが、最近は口数も少なく元気も無いらしい。

 しかも、娘が嫌がる程にスキンシップをしていたのに、それも無い。

 流石に此処まで来たら怪しいという事で、伝手を頼り色々と試したが効果は無かったらしい。

 後は、王都に居る「聖女」様に頼るか、東の森に居ると言う「隠者」に頼るしかないらしい。

 まあ、第3者が怪しいと思える内容じゃあないもんな。

 聞いた内容だと、聖女様に頼るのは現実的じゃないよな、行くにしろ、来て貰うにしろ。

 さて、次に東の森に居ると言う「隠者」だけども、聞いた話では、王都の王宮薬師にも匹敵する実力を持っていて、材料さえ有れば作れない薬は無いという噂だ。

 ……う~ん。

 これは、チェーンイベントの可能性有るなぁ。

 せめて、ドラ○エⅡの放浪王子(イラつかせるバカ)の様な事にならなければいいんだけどな。


「分かった。俺が東の森に行って『隠者』に頼んでみるよ。」

「ありがとうございます。」



 《イベント「騎士団長夫人の憂鬱」が発生しました。》



 という訳で、東の森に到着したのだが、赤い目の麗しいお嬢さんが手招きをしている。

 但し、身長が15cmくらいだけどな!

 思わず鑑定したら弾かれた上に何処からか出したホワイトボードに「勝手に覗くなんてサイテー!」と書いていた。


「ごめん。」


 と、素直に謝ったら「ふん。今回だけは許してあげるわ。次は無いから!」と書いていた。


「ソーマ。妾は分かっておるのじゃ。リンには黙っててやるのじゃ。」

「キャン。」

「古都魅は兎も角、紅牙(こうが)まで。」


 仕事を優先する事にしたのか、ホワイトボードを仕舞い、また手招きを始めた。

 道中、モンスターに会う事なく進み、前方にログハウスが見えた。

 どうやら、このログハウスに隠者が居るのだろう。

 いつの間にか、あのお嬢さんが居なくなっていた。

 考えても仕方ないから、ノックすると「どうぞ。」という予想よりも高い声だった。


「失礼します。」


 内観はそのまんまで、ログハウスの家の中を薬草を使う薬屋さんを始めたらこうなるよな。

 という感じだ。


「ようこそ、と言いたい所ですが、欲求に負けずに断りを入れるべきでしたね。」


 そう言われて、隠者の視線の先には不機嫌な顔の先程のお嬢さんそっくりの人形が有った。


「そうですね。彼女には失礼な事をしてしまいました。」

「謝罪をしたのなら良いのです。」

「ありがとうございます。」

「さて。今日、此処に来たのはどの様なご用件ですか?」

「えっとですね……」


 俺は隠者に説明をして、その後、質問に答えると、ある程度の事を試して効果が無いのなら、原因は「呪い」か「寄生」の可能性が高いという。

 そして、両方に効く「薬」を作ってくれるらしい。

 俺は方向性が全く違う両方に効く薬を作れるのかと聞いたら隠者は答えた。


「この薬は『癒す』のではなく『排出』する為の薬だからです。」

「排出、ですか?」

「そうです。どちらも身体に中に存在しますが、効果を無力化しながら排除するのは難しい。しかし、ただ身体から排出するだけなら、簡単なのです。」

「それなら、何故、誰もしないのですか?」

「ああ。身体から排出した『ソレ』は両方共に、モンスター化するからです。」

「モンスター化、ですか。」

「そうです。まあ、モンスター化すれば、物理的な方法で対処出来ますけどね。」

「そうですか。」

「納得された所で薬の材料を教えましょう。」

「ありがとうございます。」

「薬の材料ですが、キベリザの『球根』に、古の神に連なる者の『涙』と魔の獣の『爪』が必要です。」


 俺の肩に乗っている誰かと、俺の後ろに居る誰かが、緊張を走らせる。

 俺は反射的に古都魅を素早く拘束し、阿吽の呼吸で隠者が拘束に使える細い紐を俺に渡した。

 俺は隠者と協力して、縛り上げ、隠者が綺麗な鳥の羽を持って来た。


「ソーマよ。な、何をするつもりなのじゃ!?」

「大丈夫だ。天井の染みを数える様な気分で受け入れるんだ。」

「い、嫌なのじゃ。」

「出来るだけ、痛くしないから。」

「その表現は違うのじゃーーー!」


 ログハウスから、暫くの間、悲鳴に近い笑い声がなり響いた。


「良し! 古都魅の自主的な博愛精神から『涙』を手に入れたぞ。」

「ソーマは鬼畜なのじゃ。」

「次は……」

「はい。爪切り。」


 手術中に補助をする看護師が医師に必要な道具を渡すかの様に流れる仕草で、隠者が良い笑顔で「爪切り」を俺に渡した。

 そして、紅牙は既に椅子の下に尻尾を腹の下に仕舞い震えていた。


「さあ、紅牙。ちょっと身綺麗にしようか。」


 紅牙、反応無し。

 近付くと震えの度合いは増していき、手が届く所に着くと、紅牙は震えは止まるが、代わりに犬ってこんなにも絶望感を表現出来るんだと思ってしまう顔をして「クゥーン、クゥーン。」と鳴いた。

 俺が爪切りを使い始めると紅牙は顔を反らして耐えている。


「終わったぞ、紅牙。良く我慢出来たな。偉いぞ。」


 俺は、良し良しと撫で撫でして、紅牙のおやつをあげる。


「キャン。」


 何とか、機嫌は直ったな。


「最後の材料の場所は……になります。」

「分かった。」

「道案内に『彼女』も連れて行ってください。」


 ホワイトボードに「淑女な私が案内してあげるわ。」と書いたのを赤い目のお嬢さんが俺に見せた。


「そういえば、自己紹介がまだでしたね。」

「そういえばそうだな。俺の名はソーマだ。」

「私の名は『スクナ』とお呼びください。」



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[一言] オイオイオイ、飛騨の鬼神様かよ
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