初の公式イベント
運営から、初の公式イベントが発表された。
「……封神。」
「ソーマ、格好いい……」
「のじゃ!?」
「夢が1つ叶ったよ。」
「良かったわね、ソーマ。」
「ありがとう、リン。」
「キャン。」
「ありがとう、紅牙。」
「ソーマ……」
「大丈夫だ。」
「大丈夫、じゃないのじゃ~!」
「あははは。」
「キャン、キャン!」
「何か、紅牙に言われたのじゃ~!」
「さて、討伐報酬は?」
「ソーマ……」
「……ショボいな。」
討伐報酬1人分
金貨10枚分の金の延べ棒
岩窟王の魔石
岩窟王の討伐の証
「ええ。そうね。」
「……帰ろうか。」
「そうね。」
「キャン。」
「分かったのじゃ。」
それから、リアルで用事が有った為、まとまった時間が取れず、この3日間は敢えて東のエリア・ボスを無視してリンから仕入れた情報でストーリーから外れたイベントを楽しんでいたり、リンのスキルアップの為にいつもの冒険者ギルドの資料室に行ったりした。
そんな中、運営からの初イベントの発表が行われた。
内容は、この手のゲームの定番「スタンピード」だった。
イベント開始はリアルで1週間後になる。
……という概要欄と例の動画も流れているのをリンと俺の共通の友人で休日を一緒に遊んだ後、ファミレスで視聴した。
うん。
綺麗に纏めた動画と格好いいBGMだなぁと見ていると、リンは兎も角、俺とリンの共通の友人が口を閉じれないでいた。
暫く経つと友人の1人が話し出す。
「話しには聞いていたが、このゲームって、こんな戦い方が出来たんだな。」
「そうだよな。」
この中に俺以外の男子高校生が居るが、リンの女友達の友人であり、かなり厳しく友人を選ぶので、リアルばれしても問題無い。
「なあ、ゴブリン・キングの討伐推奨人数は?」
「ゴブリンの集落の壊滅もしないといけないから、最低6人パーティーが2組以上。」
「……で、君達は実質何名で討伐した?」
「俺とリンの2人です。」
何故、尋問口調に!?
「君達は違うゲームをしているのかな?」
「イエ、オナジゲームデス。」
「……ぷっ! 身バレしない程度に程々にな。」
「……ああ。」
自宅に帰って、諸々を済ませてからログインする。
「リンカーネイション。」
リンは少し遅れるらしいので、冒険者ギルドに行って雑務を消化した。
冒険者ギルドを後にしようかと、向きを変えると南の森で出会った、え~と?
「セリカよ。」
「そうそう。セリカさん。」
「呼び捨てで構わないわ。」
「分かった。其方の方は?」
「私のパーティーメンバーの『ラビ』よ。」
「初めまして。ラビです。勿論、私も呼び捨てで構いませんわ。それから、先日はセリカの危ない所を助けて頂いてありがとうございます。」
「分かった。俺も呼び捨てで構わない。それと、助け合いは当たり前ですから。」
「そうですわね。」
「それで、セリカは俺に何か用か?」
「運営からのイベントの告知を見たわよね?」
「ああ。NPCにとっては絶望のイベントだよな。」
「まあ、ね。それで本題だけど、私と組まない?」
「ちょっと話が長くなりそうだから、あっちで話さないか?」
「いいわよ。」
「分かりましたわ。」
俺達、ギルドに併設している酒場に移動した。
「それで、セリカ。どういう形で組むんだ?」
「どういう形とは?」
「俺とセリカだけなのか、それともセリカの仲間に俺が加わるのか?」
「ソーマが私達の仲間に加わるのよ。」
「その言い方だと、イベント限定では無いよな?」
「ええ、そうよ。ソロプレイはいずれは限界が来るわ。それならって思ったのよ。どう?」
「セリカには悪いが、俺は別にソロプレイヤーではないんだ。パーティーを組んでいる。」
「ソーマの方のメンバー数は?」
「俺とリンと紅牙と肩に乗っている古都魅だな。」
「ソーマ。今、『リン』と言ったの?」
「ああ。」
「~。」
俺が返事を返すと、いきなり立ち上がって言葉は発した。
「ソーマ。リンに伝えて。『私は貴女には負けない!』とね。」
「セリカ。どういう事だ?」
「リンに聞けば良いわ。ソーマ、次はイベントで会いましょう。 失礼するわ。」
「待ってセリカ。ソーマ、私も失礼しますわ。」
「……ああ。」
「待って、セリカ~。」
俺は2人が去った後、思った。
「リンとセリカの間に何が有ったんだ?」
俺は冒険者ギルドを後にして、リンと待ち合わせ場所に移動した。
どうやら、待ち合わせ場所の南門には既にリンが居た。
「リン。待たせたか?」
「大丈夫よ。私も今、来た所だから。」
「そっか。それと、ちょっとリンに聞きたい事が有るから、あの場所に行こう。」
「分かったわ。」
古都魅の友人紗良の家跡地に来た俺達は、リンに冒険者ギルドでの事を話して、セリカ達の事をリンに聞いてみた。
「そっか。ソーマはセリカに会ったんだ。」
「リン。話せる部分だけで良いから話してくれないか?」
「分かったわ。セリカとは『ライバル』と言うよりも、『好敵手』と呼んだ方がしっくりくる間柄ね。」
「そうなのか?」
「ええ。テストが有れば、私が85点の時はセリカは81点とか、また、その逆だったり、ね。」
「なるほどな。あの反応だとリンの知らない場所ではキツい事を周りから言われているかもな。」
「そうかも。私としては仲良くなりたいんだけどね。」
「じゃあ、セリカがこのゲームをプレイしているのも?」
「私と張り合う為かもしれないわ。ゲーマーとしては純粋にゲームを楽しんで欲しいんだけどなぁ。」
「まあ、それはこれから仲良くなっていけば良いんじゃないか?」
「そうね。ありがとう、ソーマ。」
「話せる相手がいるなら大切にするのじゃ。」
「ありがとう、古都魅。」
「さて、湿っぽい話は終わりにして、イベントの話をしようか。」
「うん。」
「キャン。」
「分かったのじゃ。」
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