隠神刑部狸(いぬかみきょうぶだぬき)との戦い。
いよいよ、戦いが始まる!
「逃げてー!」
着物を着た美少女が檻の中に居て叫んだ。
そして、檻の前に居る3mを超える妖狸の隠神刑部狸が戦闘態勢に入った。
《勝利条件は、『隠神刑部狸』の討伐。》
《敗北条件は、ソーマの死亡です。》
「紅牙は檻の中の少女を守ってくれ。天邪鬼は、こき使いたいから、俺の近くに。」
「キャン!」
「なぬ!? こき使われるのは嫌なのじゃ。妾も紅牙と一緒にいるのじゃ!」
「良し!」
「ガアアアーーー!」
俺は使う武器を交換して「鬼神刀」にした。
「流石にゴブリン・キングよりかは弱いだろう。」
「ガアアアーーー!」
「行くぜー!」
俺は右掌を大狸に向けて風の矢を散弾銃の様に撃ち出し、怯んだ所を風の矢を撃ち出しながら、身体強化で近付いて閃光で目眩ましを仕掛け、怯んだ所を大狸を後ろに廻り込む時に序でに右膝を斬る。
後ろに廻った俺は圧縮した風圧球でぶっ飛ばし檻から離す。
同じ様に跳び、火炎球を撃ち込み続ける。
最後は距離を取る為にゴブリン・キングの時と同様に貯めたデカい火炎球を放ち、その爆風で距離を稼ぐ。
「……ソーマは本当に人族じゃよな?」
「ああ。」
嗚呼。体力メーターが欲しいし、見たいなぁ。
「なんて、戦い方なの……」
「う~ん。良くて1/3かな。」
因みに距離を離してからは、魔法の長所を生かして、炎の矢を撃ち続けている。
勿論、漫然には撃たずに、顔や肩の関節辺りや両膝や股間の狙い撃ちを混ぜている。
特に両膝が本命。
「ガアアアーーー!」
「デカいからタフだなぁ。」
HP残り1割になったら凶暴化は、まだ分からないけど、そろそろ仕上げだ!
魔力増し増しの威力増し増しの氷の槍を大狸の両膝に撃つ。
「ガ、ガアアアーーー!?」
「止めだ!」
風の刃を撃ち込みながら、近付いて刀の距離になると、右手にも森狼の太刀を持つ。
「桐生流古武術刀技、氷刃乱舞!」
技の切れ目と同時に檻の方に跳びながら、武器を仕舞い、両手を使って火炎球を撃ち続ける。
「ガアアアーーー……」
《隠神刑部狸は討伐されました。》
《ソーマの旅袋に報酬が贈られます。》
隠神刑部狸が居た場所から幾つもの光の玉が上に昇りながら消えた。
「勝ったぞー!」
「おおー! ソーマは凄いのじゃ!」
「キャン!」
少女を閉じ込めていた檻はすぅと消滅した。
「助けて頂いてありがとうございます。」
「此処に居るのは君だけか?」
「はい。他の人達は皆、あの大きな狸に喰われました。」
「そうか。辛い事を言わせたな。」
「いえ。大丈夫です。」
「所で、君は誰? 俺の名はソーマで、こっちは紅牙だ。」
「これはご丁寧に。私の名はこの地を治めし領主九条院大輝が長女の紗良と申します。」
「ほら、お前も出ろよ。」
「え!?」
天邪鬼が初めて俺に出会った時みたいにカラスで紗良の前に出た。
「まあ! あの時のカラスちゃんね。」
「カァー!」
「ありがとう。私の最期を看取ってくれるのね。」
「カァー……」
「バイバイ。……天邪鬼。」
「カァー!?」
紗良は別れの言葉を紡ぐと静かに消えて、光の玉となって上へと昇り消えた。
……紗良の居た場所には、1通の手紙と朱いひと振りの短刀が有った。
短刀を鑑定すると内容はこうだった。
名称:九条院家当主の証
「……天邪鬼。」
天邪鬼は人型になる。
「手紙、読むか?」
「……ソーマと読むのじゃ。」
「分かった。」
天邪鬼は俺の肩に乗り、一緒に手紙を読む。
「天邪鬼へ
いつも側に居てくれてありがとう。
天邪鬼のお陰で寂しかった毎日が楽しい毎日に変わりました。でも、私の前でさえ、あの可愛い姿を見せてくれなかったのは残念でした。(実は偶然見たのよ。天邪鬼が人型からカラスに姿が変わるのを。その時にカラスちゃんが天邪鬼だと知ったのよ。今まで黙っててごめんね。)
今までありがとう、天邪鬼。
追伸
朱い短刀は私達九条院家の生きてきた証だから出来ればずっと持ってて欲しいです。」
「……天邪鬼。」
「ソーマよ。朱い短刀はソーマが持ってて欲しいのじゃ。」
「分かった。」
俺は朱い短刀を異空間収納に仕舞う。
「手紙は妾が大事に持っておくのじゃ。」
天邪鬼がそう言うと、天邪鬼が持っていた手紙が消える。
「天邪鬼。俺は約束守れたのか?」
「ああ。守れたのじゃ。」
「天邪鬼はこれからどうする?」
「ソーマは危なかっかしいから付いててやるのじゃ。」
「分かった。これからもよろしくな、天邪鬼。」
「よろしくなのじゃ。」
因みに、辺りを探っても何も無かった。
天邪鬼と共に地上に出ると。
《SQ『紗良の思い出』は達成されました。》
「なあ、天邪鬼。」
「何じゃ、ソーマ。」
「実はな。俺には人族の仲間が1人居るんだけど、その1人を入れた俺達以外の誰か居る時はカラスの姿になってくれないか。」
「何でじゃ?」
「天邪鬼の綺麗な姿を他の誰かに見せたくないから。」
「わ、分かったのじゃ。ソーマが、そ、そう言うのなら、し、仕方ないのじゃ。」
「ありがとう、天邪鬼。」
「それじゃあ、帰るか。」
「おお、なのじゃ。」
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




