貴方は誰?
鬼畜運営の卑劣な罠とは?
「そう言えば、リンに質問が有ったのを思い出した。」
「何、ソーマ?」
「この手のゲームって、誰かが最初にエリア・ボスを倒すと、それ以降は多少弱体化したエリア・ボスが出る場合が多いけど、この『オルド』はどうなんだ?」
「うん。鬼畜な運営だから、そこら辺は大丈夫よ。リアルを追及しながら、その辺りはゲームなのよね。
エリア・ボスを倒したプレイヤーとパーティーは通れるけど、未討伐のプレイヤーとパーティーはきちんと弱体化していないエリア・ボスと戦う事になるわね。」
「そうなんだ。」
「表向きの理由は、一部のプレイヤーとパーティーだけが、謂わば『オリジナル』を倒す楽しみを味わうのは、不公平だと運営は公式サイトでほざいているわ。」
「表向き、ね。裏は?」
「裏向きは、『攻略組を頼ってサボるな!』というのが真実だと誠しなやかに流れているわ。」
「やっぱり、そんな事か。」
「生産職系もそれが言えるわ。ただ、流石に若干の緩めの抜け道が有るのよ。」
「どんな?」
「先ずは、生産職系の場合は、欲しい素材が有れば、依頼という形で手に入れる事が出来るから、基本的には街から街への移動は必要無いわ。
勿論、移動するのなら、自力で行くも良し、無理なら依頼で護衛を用意する事が出来るわ。
そして、護衛の依頼を受けたプレイヤーには、依頼料と討伐したエリア・ボスの素材を手に入れる事が出来るし、生産職系がその素材が欲しければ、依頼の時の契約に入れれば良いし、現場で交渉すれば良いのよ。」
「なる程なぁ。お優しい運営様はきちんと考えている訳か。」
「そうよ。戦闘職系が派手な分、生産職系は運営から多少の甘やかしが有るわね。」
「何処ら辺が?」
「技術やスキルの修得は平等だけど、その後の実践は生産職系の方が早いし緩いわ。」
「ふ~ん。とりあえず、疑問に思っていた事は聞けたし、南の森に行ってみるか!」
「ええ。行きましょう!」
南の森の入り口辺りに到着した俺達だが、ある意味で強敵に2時間も足止めを食らっている。
「「「「「キュ。」」」」」
外見は完全に白系ウサギに囲まれて懐かれている。
リンは想像外の攻撃に手も足も出ない状況で、目尻が下がり切っている状態でウサギ達をモフッている。
俺の足下にも、「構って構って。」とウサギ達がスキンシップをしてくる。
紅牙には、寄っておらず、哀しそうな顔して「クゥ~ン。」と泣いている。
これが運営の策略ならマジ鬼畜!
さて、どうしようか……
もう直ぐ、時間がナイトモードになる。
基本的にはゲーム内に昼夜が有る場合、夜の方が出現するモンスターが強いし、遭遇率も高い。
……あ~、短い夕焼けモードが終了して、ナイトモードになったぞ。
途端に、ウサギ達が離れていった。
それはもう綺麗な団体行動でした。
そして、この世の終わりみたいな絶望顔をするリン。
リンを放って帰ろうかなぁ。
……おっ!?
リンが復活した。
「ソーマ。実は南の森には不確かな情報だけど、面白い話が有るのよ。」
「どんな?」
「2人組で、夜の南の森を彷徨くと、何処からか鈴の音が聞こえてくるらしいわ。そして、その鈴の音が聞こえてくる方向に行くと、今度は『資格無き者は立ち去れ!』と言われて鈴の音が聞こえてこなくなるらしいわ。」
「資格無き者、か。」
「ソーマは、ある意味、神系の『資格持ち』でしょう。
だから、どうかなって思ったんだけど、時間が来るまでは、実益と下見のつもりだったのに、あんな強敵に阻まれるとは思わなかったわ。……クッ。」
「まあ、仕方無いさ。ぶつけ本番だけど行くか。」
暫く俺達はナイトモードで強くなっているモンスターを倒しながら夜の森を進んで行くと、何処からか鈴の音が聞こえてきた。
俺達は、鈴の音に誘われ進んで行くと濃霧が広がった。
それでも鈴の音がする方に進むと、突然に濃霧が晴れて、そこには湖が有って奥にはポツンと小屋が建っていた。
俺達は移動して小屋の扉の前に立つとノックをする。
「鍵は開いているよ。」
「お邪魔します。」
小屋に入ると、そこには穏やかな顔をした日本の貴族風の衣装を着た20代後半の銀眼で銀髪ロングストレートの男性が居た。
「いらっしゃい。歓迎する。『資格を持つ者』よ。」
「やっぱり、ソーマが『資格を持つ者』だったんだわ!」
「それは違うよ。」
「どういう事でしょうか?」
「ここで言う『資格を持つ者』とは、超常の存在を視認し、交流を成した者を指す。覚えが有るのでは無いか?」
「あっ!?」
「覚えが有るようだな。」
「はい。」
「だから、2人共、『資格を持つ者』になる。」
「その『資格を持つ者』が此処に訪れた場合、何が有るんだ?」
「それは、『神の恩恵』を与える事だ。」
「具体的には?」
「貴方には、掛けられている封印の1つを解こう。」
「え!?」
「勿論、只ではないけどね。」
「そして、貴女には神に関わるスキルを授けよう。」
「……!?」
「貴方は何者なんだ?」
「その質問の場合は、先にする事が有るだろう?」
「……!? 失礼しました。俺の名はソーマです。」
「私の名はリンよ。」
「はい。良く出来ました。さて、私の名は『月読神』だ。まあ、『分御魂』だけどね。」
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