熱く踊りましょう。
運命の主人公ソーマの次のテンプレは?
さて、今日のノルマも終わったし、時間は……と、ちょうどだな。
それじゃあ、行きますか。
「リンカーネイション。」
《リンからのメッセージです。》
お! 早速、リンからだ。
何々、東門前で待っている、か。
東門前に到着したが、リンは何処だ?
あっ! 居た!
「お~い。リーン。」
「あっ。ソーマ!」
「リン。今日は東の森に行くのか?」
「うん。どんどん先に行くのも面白いけど、地図を全て埋めてから先に進むやり方も楽しいよね。」
「そうだな。それで、今日は東側か。」
「そう。それに……」
「それに?」
「ソーマと行くと何かに当たりそうだから。」
「おいおい、俺は活き餌か?」
「そうだよ。それと、活き餌は生きているから価値が有るから、ちゃんと助けてあげるね。」
「……なんか、隠してないか?」
「……え、か、隠してないよ。」
「本当ーか?」
「本当ーだよ。」
「全くリンは何故、バレる嘘を付くかな?」
「え!?」
「明日の出張晩御飯は、ピーマンとブロッコリーのフルコースな。」
「すみません~。嘘付いていましたー。」
全く。
実はリンの両親は共働きの上に仕事上の関係で、深夜帰宅が多い。
そして、明日は1人での留守番になる為に、護衛を兼ねて俺が晩御飯を作りに行っている。
リンの料理の腕は、両家族共に諦めている。
そんな訳で、晩御飯を人質にとると、途端にリンの口の防御力が0になる。
毎回、失敗に終わっているから、いい加減に学習して欲しいものだな。
「……で、何を隠している?」
「実は、この東の森に条件付きで出現するレアイベントが有るらしいんだけど、その出現条件がカップル限定なのに、戦うのは男性プレイヤーだけらしいのよ。」
「それだけなら、別に隠さなくても良いよな。んで、本題は?」
「う、うん。そのレアイベントに勝つとゲーム内時間で3日間は、女性プレイヤーに無条件に毛嫌いされる状態異常が付くみたいなのよ。」
「はあ!? 何だそれ! 完全に運営の嫌がらせだな。」
「うん。その代わり、貰えるアイテムはかなり良いみたいだよ。」
……結局、レアアイテムに釣られて行く事にした。
まあ、その3日間をソロで、スキル向上やレベルアップの日にすれば良いしな。
そんな訳で手に入れた情報と照らし合わせながら、進む事10分頃に、イベントエリアに入ったようだな。
《イベントエリア『弁天の演奏場』に入りました。》
「しかし、良くこんなレア情報を手に入れたな。」
「私が直接お願いしたら、何故か首を守りながら割りとあっさり。」
本人には自覚は無いが、脅迫と変わらんかったろうなぁ。
……お!?
開けた場所に出たな。
「ようこそ、妾の演奏場に。……て、童、3歩前に出るのじゃ。」
「はあ。」
「うむ。妾は童の事が気にいったのじゃ。どうじゃ?」
《どちらかを選んでください。》
《ノーマルステージorエクストラステージ》
「なあ、リン。」
「何、ソーマ。」
「何か、選択肢が出て、2択の『ノーマルステージorエクストラステージ』って出ているぞ。」
「そういう時は、次が無いかもしれないから、難しい方を選ぶのがお得だよ。」
「分かった。」
俺はエクストラステージを選ぶ。
「何じゃ。つれないのぉ。仕方無いのじゃ、今回はアヤツに譲るのじゃ。」
《ノーマルステージのクリア報酬が贈られました。》
「え!?」
「まさか、私の出番が有るなんてね。それでは、主の所にご案内します。」
「リン。アイテムの確認は後にして、あっちに付いて行こう。」
「分かったわ。」
歩く事、約5分。
似たような開けた場所に出た。
しかも、先程の演奏場よりも2ランク上の完成度だ。
「主。お客様をお連れしました。」
「あら、珍しいわね。アタイの所に来れる殿方がいるなんてね。名は?」
「ソーマだ。隣に居るのがリンだ。」
「アタイの名は『天字受売女』よ。ウズメと呼んで。」
「それで、俺達は何をすれば良いんだ?」
「舞台の上でアタイと肌を重ねて踊りましょう。」
「なっ!? ちょっ、どういう意味!」
「うふふふ。元気な仔猫ちゃんね。それじゃあ、説明するわ。この舞台の上で、武器等を使わずに己の肉体のみで、相手の背中を舞台の床に当てた者が勝ちよ。」
「……分かった。」
「さあ! そんな不粋な物は脱いで、お互いに息が届く距離で踊りましょう。」
リンは何故か俺を睨み付けている。
そんな中、俺は舞台に上がったけど、ウズメの外見は、身長は俺より頭1つ分、低くて、身体はスレンダーだな。
衣装は巫女と踊り子を足した様な感じだな。
「準備は良いみたいね。」
「ソーマ、分かっているわよね?」
「分かっている。」
(リン。何故、俺を親の仇みたいな顔で睨むんだ?)
「それじゃあ、始めるよ?……始め!」
2、3分経過した今の俺とウズメの戦いを例えると、CGやワイヤーアクションを使わない本格派なアクション映画になっている。
実際に高いレベルになると、「舞」と「武」の境が薄くなる。
俺自身も、小4の時の爺さんと母さんの模擬戦は本当に綺麗だった。
まあ、この模擬戦が俺を武の道に引き入れる為の罠だったけどな。
しかし、此処で脳筋思考が発動。
内容は茶番劇を予定していたが、途中から負け役の爺さんが負け役を拒否して本気になり、母さんもじゃあ私が、とならず、本気になった。
そう。だからこそ、俺は「武」に魅せられた訳だ。
さて、自分で言うのはなんだけど、金が取れる組手をしている訳だが、そろそろ勝負を決めないとな。
「シッ!」
「あっ!?」
俺はウズメが防御の為に、腕をクロスする様に誘導して、ウズメの視界を塞いだ瞬間にウズメの両腕を持ったまま、柔道で言う所の背負い投げで、ウズメを投げる。
最後に柔道の教科書の様に軽くウズメの両腕を上に引っ張る。
トス!
「……アタイの負けね。」
「ああ。俺の勝ちだな。」
「貴方の熱い吐息と汗はアタイも感じて良かったよ。」
「異議あり! 今件は謂わば試練であり、心情的な表現は必要無いと思われます!」
「……リン。」
「うふふ。あは。あはははは!」
「……ウズメ?」
「良い相棒ね。」
「まあな。」
「……さて。」
先程までの熱は一瞬で消え、辺りには厳かな空気が満ちた。
「アタイは、舞を捧げる事で封印されし扉を開ける者。今、封印は解かれる。」
《ソーマのユニークスキル『神霊召喚』の封印が解除されました。》
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