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幸せを願って(改正版)  作者: 宮原叶映
25/25

(番外編)生きていると思うんだ

『幸せを願って』から数年たったときのことを

 さなえが、隼咲とみやこ達の家に遊びに行きます。父の日についての話してたはずが……。

集まれば、必ずあの人の話なる。たとえ、その人はもういなくても。

 今日、さなが、俺達の家に遊びに来た。


 俺は、いい機会だと思ってさなに、気になることがあるので聞くことにした。

 それは、叶翔(かなと)から毎年父の日になるとプレゼントをもらうことだ。叶翔は、俺にだけじゃなく(りょう)にも用意して、仏壇にお供えをしていた。

 叶翔に、理由を聞いても教えてくれない。俺にとっては、意外な答えが返ってきた。

 

「たぶん、叶翔はね。(しゅん)兄のことを、もう一人のお父さんって、思ってるのかも」

 

「なんでだ? 」

 

「叶翔は、小さいときに遼さんという父親がいなくなったでしょ」

 

「そうだな」

 

「遼さんが、亡くなってから、よく叶翔の行事に参加してくれたでしょ。みや姉と、再会する前までなにかと一緒に出掛けてくれたから。どこかで、叶翔は父親がいないのがさびしかったんだと思う。でも、隼兄がよく面倒をみてくれたから、叶翔にとって父親に近い存在じゃないのかな。叶翔は、恥ずかしくて言えないのかもね」

 

 さすが、叶翔の母親だ。叶翔のことは、何でも分かるようだ。さなは、遼を亡くしてからずっと、シングルマザーとして叶翔を育てている。

 これからも、そうやって生きるのだろう。兄の俺から見ても、みやには負けるがさなは美人だ。

 さなのことをよく知らない人が喫茶店に行くと、たいていの若い男は一目惚れをする。その人が、何回か喫茶店に訪れることがある。

 さなの話から遼のことを知り、失恋する人が多数いる。遼が生きてるときからほぼ毎日のように、喫茶店に通う俺には分かる。

 

「なるほどな。なんだか嬉しいな」

 

 俺は、少し照れる。

 

「でも、隼兄は、二児の父親で塾長なんだよね。隼兄って、本当にすごいね」

 

「今さら、俺のすごさを知ったのか? 」

 

「ずっと、思ってたよ。言わないだけでね」

 

「さなってやつは……」

 

 そう言って、頭を撫でようとすると。さなは、予想していたのかスッーと頭を出した。ヨシヨシと頭を撫でる。

 

「二人とも相変わらず仲良しね! 」

 

 そこに、みやが寝室からリビングにやって来た。

 

「こんにちは、みや姉お邪魔してます」

 

「こんにちは、さなえちゃん」

 

 みやは、挨拶をした後、キッチンに行ってココアとオレンジジュースを二つのコップに入れる。

 それを俺達がいるところに持ってくる。ソファに座ってる隣に腰を下ろす。

 ちなみに、さなは俺の斜め横の椅子に座っている。俺は、二人の女性に挟まれていることになる。

 

「みや、二人とも寝たか? 」

 

「うん、寝たよ」

 

「すまん、任せてしまって」

 

「大丈夫だよ。それに、隼が、たっぷり遊んでくれたおかげで二人ともぐっすり寝てるよ」

 

「それは、良かった」

 

「みや姉。灯音ちゃんと朝灯君は、何歳になるの?」

 

「五歳だよ」

 

「もう、五歳になるんだね」

 

「早いな」

 

「そうだね」

 

 五歳と聞いたとたん、さなが少しだけ辛そう顔をした。たぶん、遼が、亡くなったときのことを思い出しているのだろう。

 叶翔が、五歳になった年に亡くなったから。みやも、さなの様子に気付いたようだが、あえて言わない。

 

「さっきね、隼兄と父の日について話してたの」

 

「そうなんだね」

 

「あぁ。毎年、叶翔から父の日のプレゼントをもらうことを話してたんだ」

 

「あぁ、確かにもらってたね! 」

 

「父の日か…。うちも、お父さんが亡くなるまでずっと渡してたよ。プレゼントを買うために、お母さんと買い物にも行ったよ。毎年、お父さんにプレゼントを渡したら、すごく喜んでくれたの。そのときの笑顔が、今でも忘れられないな。だからね、隼! 」

 

 みやは、力強く言って俺をみる。


「えっ?なんだ? 」


「叶翔君からのプレゼントは、ちゃんと受け取ってあげてね。プレゼントは、あげる人も、もらう人も笑顔になるものだからね! 」

 

「あぁ、そうだな」

 

「そうですよね。うん。隼兄、ちゃんと叶翔からのプレゼントを受け取ってね! 」

 

「あたりまえだろ! 」

 

「うん! 」

 

「隼は、叶飛くんからのブレゼントもらうとすこく嬉しそうに話してくれるんだよ」

 

 と、みやが笑顔で話す。さなが、俺だけを見て優しく話し出す。

 

「隼兄は、すごいよ! 」

 

「えっ? 」


「だって、叶翔と灯音ちゃんと朝灯君の三人の子供からプレゼントをもらえるんだよ! 」

 

「言われてみれば、そうだな」

 

「そうだね」

 

「なんだか、遼に申し訳ないのと嬉しいで、なんだか複雑だ」

 

「大丈夫だよ!だって、隼兄も知ってるでしょ。叶翔は、遼さんが、やきもちを妬かないようにって、遼さんようのプレゼントも用意してるんだから」

 

「なるほどな。叶翔は、遼にプレゼントを用意したのは、遼がやきもちを妬かないようにってことか……。なんだか、面白いな」

 

「あっ!それは、私と叶翔の秘密だった! 」

 

 さなは、そう言いながらやっちゃったと苦笑いをする。


「お前は、しっかりしてるくせにどこかぬけてるよな」

 

 

 俺の言葉をスルーして二人が、顔を向かい合わせていう。

 

「叶翔君は、遼さんに似てるよね」


「やっぱり、そうだよね!みや姉! 」

 

「あぁ、そうだな。優しくてしっかりしているところだろ? 」


 俺も、それには賛同している。


「うん! 」

 

 優しくて、しっかりしている人は、たくさんいるだろう。だか、俺達が嬉しいと思っているところは、違う。

 何度もいうが、叶翔が五歳の時に遼は亡くなったので、父親のことはなんとなくしかわからない。

 さなと、時々物語を読んでいるぐらいしか遼のことを知るすべはない。

 それでも、遼の優しく、しっかりしている性格が叶翔に受け継いたものだということが嬉しいのだ。子は、親に似るということなのかもしれない。

 

「そういえば、灯音(あかね)ちゃんと朝灯(あさひ)君は、隼兄とみや姉のどっちに似てるの? 」

 

「それはね。一卵性の双子でも、なんだかある意味真逆なんだよね」

 

「あぁ、そうだな」

  

 俺とみやは、うんうんと頷く。


「真逆って、どういうこと? 」

 

 と、さなが、首をかしげる


「俺の顔は、灯音に似て性格は、みやで」

 

 俺の言葉をみやが引き継ぐ。

 

「うちの顔は朝灯で、性格は隼なの」

 

「面影っていうのか分からないが、そうな感じがするんだよな」

 

「うん」

 

「それは、親にしか分からないことだね」

 

 と、さなは納得してるような顔をする。さなも親だから分かるのだろう。

 

「遼さんがね。叶翔は、私に顔が似てるって言ってました」

 

 さなは、懐かしそうな顔をしていた。

 

「そうだね。叶翔君の顔は、さなえちゃんに似てるよ!特に、笑ったときの笑顔がね」

 

「それ、遼さんも言ってました」

 

「さなえちゃんは、遼さんと叶翔君が本当に好きだよね」

 

「はい、好きです! 」

 

 さなは、とびきりの笑顔で言う。

 

「俺達は、いつも遼の話をしてるな」

 

「うん、そうだね」

 

「私達のなかで、遼さんは、忘れようとも忘れられない大切な人だからですよ」

 

「そうだな」

 

「遼とのつながりが、なかったらと思うとなんか恐いな」


「そうだね。私は、遼さんと出会いがなかったら、今頃何をしていたか分からないよ。当然叶翔も、生まれてなかったよ」


「うちも、そうだよ。初恋のままで終わってたよ」


「言い出したら、つきないな」


「そうだね」


 そのあとも、遼の話をするのであった。

 俺達が、集まれば必ず話のなかに遼がいる。

 遼が、俺達にしてくれたこと、遼との思い出は、俺達の中に刻まれている。

 それは、遼が物語で書いた生きる証と言えるのかは分からない。俺達が、話をすればその中に遼は生きてると思う。

 

 人生は、死んだら終わり。うまく言えないがその人のことを話したり、思い出したりすると、その人は記憶の中でずっと生きてると思うんだ。

読んでいただきありがとうございます!

『幸せを願って』は、ここで完結です。

あなたにたくさんの幸せが訪れることを願います。


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