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幸せを願って(改正版)  作者: 宮原叶映
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エピローグ

 結婚してから二年後。俺達に子供が生まれた。

 なんと、一卵性の双子だ。名前は、灯音(あかね)朝灯(あさひ)。灯音は、女の子。朝灯は、男の子。二人は、本当に似ている。

 

「隼兄。あかねちゃんかわいいね! 」

 

「かわいいだろう! 」

 

「みやちゃん。あさくん、かわいいね! 」

 

「かわいいでしょ! 」

 

 俺は、右半身に麻痺があるため、自分の子供をうまく抱けない。抱くときは、みやとさな達に助けてもらったり、クッションを使ったりする。

 いつもは、ソファーに座って赤ちゃんを抱いている。双子なので大変だ。それでも、毎日楽しい。

 さなえは叶翔を、仁さんたちは玲ちゃんを連れて成瀬家の実家に来ている。双子の赤ちゃんがいるので俺達二人では大変ということで、お母さん達がおいでと言ってくれた。

 

「隼兄、体の方は大丈夫?でも、無理したらダメだよ」

 

「あぁ、大丈夫だ。リハビリやマッサージをして、体の負担を減らしているからな」

 

「うん! 」

 

 さなは、安心したのかホッとしているようだ。


「さな」

 

「うん?どうしたの? 」


「遼が亡くなってから、いつも心配かけてすまん。事故にあったときも。そして、いつも助けてくれてありがとうな! 」

 

「もう、いきなりそんなこと言わないでよ! 」

 

 下を向いたさなの瞳から涙がこぼれた。

 

「さな!? 」

 

「お母さん!?隼兄、お母さんに何をしたの? 」

 

 と、近くでいた叶翔が聞く。俺を見るその目は、少し怖い。

 

「叶翔、大丈夫だよ。お母さんね、嬉しくて泣いてるの」

 

「そうなの? 」

 

「そうだよ。隼兄がね、お母さんにとってとても嬉しいことを言ってくれたの。だからね。叶翔、隼兄のことを怒らないであげてね」

 

「うん。分かった!隼兄は、いいことしたってことでしょ? 」

 

「うん。そうだね」

 

「いいことをしたときはね」

 

 そう言って叶翔は、俺が座っているソファーに膝立ちをして、よしよしと俺の頭をなでた。叶翔は、()()()()()に育っている。

 

「よく出来ました! 」

 

 その様子を見ていた家族達は、一瞬ポカンとしてから笑い出す人や、ニコニコする人もいる。そんな、俺達に叶翔は、不安そうに聞く。

 

「なんで、みんな笑うの?これはね、お父さんが教えてくれたんだよ。いいことしたときは、頭をなでてよく出来ましたってほめるんだって」

 

 俺は、灯音をびっくりさせないように声を出さないように笑いをこらえている。いや、苦笑いをしている。

 八歳の甥っ子に頭をよしよしされる三十路のオッサン……。みんなそれで笑っている。みやは、すかさずフォローをしてくれる。

 

「ごめんね。みんな、叶翔君を笑っているわけじゃないからね」

 

「そうなの?みやねぇ? 」

 

「うん、そうだよ。隼のことをね。お兄ちゃん!」


「に兄ちゃんに、ふるなよ! 」

 

 そして、またみんなで笑う。みんな、笑っているなかで灯音と朝灯君は、寝息をたてていた。少ししてから、さながポツリという。

 

「なつかしいな」

 

 さなの瞳には、もう涙はなかった。


「さな、何がなつかしいんだ? 」

 

「遼さんとね。叶翔を育ててるときに決めたことがあったの」

 

「決めたこと? 」

 

「叶翔が、いいことをしたときは、頭をなでる。そして、いっぱい愛情をこめて育てようって。そうすることで、叶翔にたくさんの幸せがあるっていうのを感じてほしいって。だから、叶翔にちゃんと遼さんのことが遺ってることが嬉しいのと、その事を決めたことを思い出してなつかしいって想ったの」

 

 さなは、二人で決めた叶翔の育て方について話した。それを聞いたみやは、何かを決心したようで、俺を見る。


「じゃあ、隼! 」

 

「うん? 」

 

「うち達も、遼さん達が叶翔君をそう育てたように灯音と朝灯にも同じように育てよう! 」

 

「あぁ、そうだな! 」

 

 みやは、幸せそうに笑う。俺も。


「みやこちゃん。あの家は、どうするんや?このまま、隼君の家に住むんか? 」


 と、お兄さんが話を切り出す。


「言ったでしょ。住まないよ。今は、隼の実家に里帰りしてるの。それが、終わったら家に戻るよ。それから、子育てが落ち着いたらね。隼! 」

 

「あぁ!この体では、前みたいに仕事が出来ないから。今の俺の夢は、今までと同じように子供達に勉強を教えたい。会社に相談したら応援してくれると言ってくれている」

 

「そうなんや」

  

「うん! 」

 

「なぜ、みやこちゃんが返事するや? 」

 

「いいでしょ! 」

 

「それは、おいておいてね。パパ、話が止まるから」

 

 仁さんは、相変わらずだ。仁さんとお姉さんは、漫才のようで漫才で、ないことをする。


「ごめんママ。そうやな」


 お兄さんは、少しシュンとする。


「それでね。隼は、会社の中で成績がいいから会社の人をいなくなってほしくないみたいで。隼のおかげで生徒さんが多いから。家庭教師だけじゃなくて、塾も新たに企業しようってことになってね」

 

「応援っていう、レベルじゃないやん」


 お兄さんは、ツッコむ。


「隼兄、すごいね! 」

 

「会社の社長が、気にってくれてな。事故のこともあったから、記憶が戻って落ち着いてきたときに会社をやめようと思って、辞表を出しに行った。そしたら、社長が言ってくれたんだ」

 

 そして、俺は、社長との会話の内容をみんなに話した。

 

「隼咲君の想いは、分かった。隼咲君、君の決心を踏みにいじることを今から言いいます。私は、辞めないで欲しい。君には、たくさんの子供達を救ってくれた。勉強のことだけじゃない。人として助けたんだ。一人一人のことを想って、教え方を変える。あの参考書だってそうだ。君は、教育者として才能があるんです。私の目に狂いはなかった。少し、年寄りの話を聞いてもらいます。いいかね? 」


「はい。大丈夫です。お願いします」


 社長は、頷き、話してくれた。


「そう思ったのは、ひとりの少年を救ったことを知ったからです。私は、君の義弟の遼君の知り合いでね。実はね。私は彼が小さい頃から知ってるんです。彼のおじいさん達とは、学生時代の先輩後輩のなかでね。喫茶店に行ったときに、学校がある時間なのに遼君がいると思って話してみたんだ。話を聞いてみると、彼は高校に進学せずに、おじいさん達の手伝いをしていると言ってね。ある日、喫茶店に行くと私以外に客が誰もいなくてね。カウンター席で、遼君が懐かしそうに何かを見ていたから聞いてみたんです」

 

『これは、俺の心友が中学校の時に作ってくれた参考書です』


「そう言われて、驚いたのと興味があったのでその参考書を見せてもらったんです。本当に参考書だったので、聞いた時よりも興味が出たんです」

 

 社長は、その当時から俺が作った参考書を知っていたことになる。

 

『俺は、体が弱くて小中となかなか学校に行けませんでした。俺が、元々勉強が好きなのを知っていた心友は、授業が遅れないように、テストが受けれるようにって作ってくれたんです』

 

『それを見てたってことは、まだ遼くんは勉強がしたいんじゃないですか? 』

 

『………そうかもしれません。心友とまた学校に行って勉強がきたいっていう気持ちも確かにあります。でも、いいんです。大切な人に出会えたのと』

 

『のと? 』

 

『そんな俺を想ってか。心友が、時々参考書を作って持ってくるんです。なので、一人で高校の勉強ができるのでうれしいです』

 

『えっ?そうなのかい? 』

 

『はい。そうなんですよ。心友は、俺のためと授業の復習になるって中学校の時に始めた参考書が癖になったのか、すぐに頭に入るから作ったら持ってくるんです』

 

『とてもいい心友ですね』

 

『はい!自慢の心友です。俺の心を救ってくれたんです。学校に行きたい気持ちのある俺を救ってくれたんです。心友も、俺に高校は、行って欲しいって思ってます。口に出さないだけで』


 遼も、その当時から俺の気持ちを知っていた。

 

「そうやって、ひとりの少年であり、心友を救いました。私は、もっとたくさんの人を救えるんと思うんだ。言い方は悪いかもしれないけどね。隼咲君は体が、少し不自由になっただけだ。家庭教師ではなくて、塾を開いてみませんか?ちょうど、塾を開こうという話が会議で出たばかりだから。でも、今すぐってわけでは、ありません。こちらも、塾に使う教室の手配や設備に教材などを準備しないといけないからね」


 社長は、懐かしそうに話してくれた表情を今でも覚えている。


「そう言われたときに、まだ子供達に勉強を教えたいって気持ちがあった。甘えてしまうと思った。それと同時に社長は、全てお見通しなんだと思った」

 

「隼から、その話を聞いて思ったことをそのまま言ったよ。じゃあ、うちの家を使っていいよ。将来うちの家で隼と暮らすなら、その方が便利だよって」

 

「なるほどな」


 と、お兄さんが返事をする。みやの家は、とても広い。

 

「事故前は、家庭教師をしていたり、事故後は参考書をお母さん達に届けてもらったりしたけど。もちろん、会社に許可をもらってやっている。俺はみやの提案を聞いて、俺達の家で塾をしようと思うんだ。灯音と朝灯は、まだ小さいし、みやだけじゃ大変だからな」


「隼君、いいと思うで。夢があるってことは。そして、お互いを想い合ってで支え合っていくのが夫婦で家族だ。これからも、兄ちゃん達はふたりをいや四人を応援して支えるからな」

 

「お兄さん、ありがとうございます! 」

 

 そのあとも、俺達は、賑やかに過ごした。

 


 そうして、灯音と朝灯が成長し、子育ても落ち着いた頃。

 俺達の家では、子供達のにぎやかな声が響く塾になっていくだろう。

 

 これからも、俺達の幸せが続くことを願って。

読んでいただきありがとう!エピローグですが、次回は前回投稿した『生きていると思うんだ』を番外編として投稿します。

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