きっと
俺の容態は、安定している。医者も驚いているぐらいだ。
元々、体は丈夫だったのと遼やさなを支えれるように、健康に気を付けていたからだと思う。
右半身の麻痺もリハビリをして良くなった。リハビリは、厳しいかったが、頑張ったかいもあって日常生活をするのにあまり問題はない。
あまりというのには、理由がある。激しい運動は、出来なくなった。右半身に、少しだけ麻痺が残っているため重い荷物を持てない。疲れやすい。それらをしなければいいだけだ。
それ以外には、何も不自由はしない。命をなくさないだけいいと思うんだ。きっと、遼が守ってくれたのだろう。
だけど、みやの記憶を全て取り戻していない。みやについて、思い出したのは、みやと喫茶店で再会したこと、みやと呼んだこと、あの言葉だ。
そして、もうひとつ思い出せないことがある。事故当初の記憶が曖昧なのだ。その事をたぶんだけどみやは、知っている気がする。
でも、みやは教えてくれない。俺のことを想って言わないのだ。
今は、みやの記憶を頼りにまえに進もうと思う。みやは、自然に思い出せると思うよと言ってくれてる。
入院してから、三ヶ月後に我が家に戻った。仕事の方は、まだ休みをもらってる。
俺の部屋は、元々二階だか、一階に変更になった。体の負担を減らすためだ。この部屋は、あの当時、遼が泊まっていた場所。
遼が、俺達の両親に初めてあった日に晩御飯を食べてその後寝てしまったので、俺が運んだ客間だ。懐かしいって思う。
それから、何度か遼が、泊まるときにかしていた。思わず、そこに遼が、いるんじゃないかと探して、いないて落胆する。
俺は、まだどこかで遼のことを生きてるって思っているのかもしれない。
叶翔の六歳の誕生日の時に、喫茶店で誕生日会をした。
『叶翔、誕生日おめでとう!何歳になったのかな? 』
『ろくさいだよ! 』
『叶翔は、来年に、なったら何になるのかな? 』
『しょうがくせいだよ! 』
『えっ?遼……? 』
懐かしい声がした。そこには、いないはずの遼がいた。遼は、叶翔の六歳の誕生日を迎える前にこの世を去っている。ありえないと思った。
『隼咲、どうしたの? 』
『あっ!隼兄、何でそこにいるの?こっちでご飯を食べよう! 』
『嘘だろ? 』
俺の言葉に反応するように、急に景色が変わった。そこら一面に、花畑が広がっていた。
そこには、さっきまでいたさなと叶翔は、いなかった。遼だけが立っていた。
『遼!ここは、どこだ? 』
『隼咲、落ち着いて』
『落ち着けって言われても、訳が分からない』
『うん。ここは、君がいるところじゃないとこ』
『俺がいるところじゃない? 』
『そう。これ以上いると隼咲は、戻れなくなる』
『どういうことだ? 』
『隼咲は、こっちに来るのは早いよ』
『えっ? 』
『やることが…守るものが出来たんだろ? 』
『あぁ。ーーを守る』
『うん。俺は、さなえちゃんと叶翔をここで守る』
『そうか、頑張れ』
『だから、生きて頑張って来い』
『あぁ、また会おうな! 』
『でも、また会うのは、もっと先がいいな』
目が覚めたとき、辛かった。遼と会うのは、もっと先なのが。
もう、遼は夢にも出てこないのだと思った。この夢の全ては、さなに話していない。俺と遼の秘密だ。
きっと、また遼に会うのは俺がよぼよぼのおじいちゃんになっている頃だろう。
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