表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せを願って(改正版)  作者: 宮原叶映
14/25

ゆっくりいこう

 隼が、事故にあって、うちは両親のこともあってショックで倒れた。

 隼の事故から二日たったとき、眠っていた彼が目を覚ました。

 うちは、目を覚ましてくれたことが嬉しかった。でも彼は、違った。『何で、いるんだ』と、不思議そうな顔をしていた。

 

 そのあと『灰崎? 』と、言ったんだ。最初に聞いたときは、辛かった。いつもの隼なら、『みや? 』と、言ってたはずだ。間違いだ。

 記憶が、混乱してるだけだと、思った。思いたかった。でも、違ったんだ。

 

『いつもは、成瀬君って、呼ぶのに何でここに来たときに隼って、呼ぶんだ? 』

 

 その言葉を聞いたときに、違うんだって気が付いた。耐えれずに、帰ってしまった。いや違う。あの言葉が、耐えれなかったんだ。

 だから、逃げて来たんだ。どうしたら、いいのか分からなかった。

 どうやって、家に帰ったのか覚えてない。家に帰り、誰もいない真っ暗な部屋で独りで泣いた。

 泣き終ったあとに、部屋の電気をつけて、ベットに倒れこんだ時に、スマホから着信音が流れた。

 さなえちゃんが電話をかけてくれた。その話によると、うちの記憶は、あの再会してからのが無いらしい。

 電話の向こうのさなえちゃんも泣きそうな声だった。お礼を言って、電話を切った。また、泣いた。

 隼は、記憶を無くした……。うちだけの記憶を無くした……。そして、そのままベッドで眠った。

 

 隼が、目を覚まさない間も当然仕事がある。気持ちを切り替えて仕事に挑む。

 仕事が終わる度に、隼の病室に行く。そこには、必ず誰かはいた。隼のご両親、さなえちゃんと叶翔君だったり、おじいちゃんとおばちゃんだったりする。

 みんな、うちを温かく迎えてくれる。なかなか、隼が目を覚ましてくれなくて、自分を責めて失言をしてしまった。

 

『私が、悪いんです。私が、約束をしなければ、こんなことにならなかったんです』

   

 そして、隼のお父さんが言ってくれた。


『みやこさんのせいじゃない。悪いのは、信号無視をした車です。自分を責めては、いけません。今は、信じて待つんです。隼咲は、先生が言ったように体は、強いんです。安心してくださいね』

 

 うちは、その言葉に救われた。信じて待った結果がこれだ。それでも、いい。隼が、無事ならいいんだ。

 こういうときこそ、前向きに考えないといけない。一番大変なのは、隼なんだから。周りが、支えないといけないと思う。

 そして、仕事に励む。仕事を終わらせて、病院に向かう。

 

「成瀬君。こんばんは」


「……灰崎。こんばんは」


「体調はどう? 」

 

「あぁ、大丈夫だ」

 

「良かった」

 

「俺さ、来ないと思ってた」

 

「えっ? 」

 

「だって、あの時灰崎を傷つけたから」

 

「……」

 

「あとで、聞いたんだ。灰崎は、俺が目を覚めるのをずっと待ってたって。それって、もしかしたら俺達の間にって…。そうしたら、頭が痛くなって……」

 

「焦らなくていいよ。少しずつでいいの。うちは、来たいから来てるの。理由は、それだけだからね」

 

「そうなのか? 」

 

「そうだよ。ゆっくりでいこう。成瀬君が、気になることがあったら質問してね」

 

「いいのか? 」

 

「うん」

 

「でも、そうだな…。一日一回にしよう。それなら、体にも負担をかけなくてすむと思うから」

 

「分かった。そうしよう! 」

 

「最初の質問するぞ! 」

 

「いいよ」

 

「俺と灰崎は、会うのは何年ぶりだ? 」

 

「そうだね。九年ぶり? 」

 

「なぜ疑問形なんだ?あっ、もうひとつ質問してしまった……」

 

「大丈夫だよ。本当は、一週間ぶりだよ」

 

「えっ? 」

 

「はい!今日の質問は、ここで終了です! 」

 

「何でだ? 」

 

「何でもです。最初の答えを、うちは疑問形で答えてしまったから。サービスしただけだよ」

 

「……分かった。今日のところはそれでいい……」

 

 本当は、今すぐでも思い出して欲しい。

 でも、急がしたらいけない。隼に思い出して欲しい。だから、成瀬家には、うちのことを言わないで欲しい時頼んだ。

 何年かかってもいい。うちの隼に対するお想いは、それ以上だと思うから。

読んでありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ