目覚めて
目をあけると、知ってるようで知らない天井。そう思っていると、がらからと戸が開く音がした。
そして、誰かが近づいてきた。
「隼?!目が覚めたの? 」
「えっ!?灰崎? 」
一瞬、灰崎は驚いた顔をした。
起き上がろうとしたけど、体が思うように動かない。特に、右側が動かない。
「落ち着いて!起き上がったら、ダメだよ」
「ここは、どこで何で俺は、起き上がれないんだ? 」
「……うん。ここは、病院。覚えている?成瀬君は、車に乗っていて交通事故に、巻き込まれたの。それで…怪我しているから動けないんだよ」
「事故?何で、車に乗ってたんだ?いつもは、成瀬君って、呼ぶのに何でここに来たときに隼って、呼ぶんだ? 」
その言葉を聞いた灰崎は辛そうな顔をしていた。「先生を呼びに行く」と言って病室から出ていった。そして、入れ替わりにさなが病室に入ってきた。
「隼兄、良かった。二日間、ずっと寝てたんだよ。本当に、怖かった」
「えっ? 」
「隼兄が、寝ているときにね。一度、遼さんの名前を言ってたの。もしかしたらって、思って…。隼兄まで、逝ったらどうしようって」
「あっ、そういえば……夢をみた。遼が、出てきて、俺に言うんだ」
『隼咲は、こっちに来るのは早いよ。やることが、守るものが出来たんだろ?だから、生きて頑張って、来い』
「って、言われて目が覚めたらこの状態だったんだ」
「そうなんだね。きっと遼さんが、隼兄のことを守ってくれたんだよ」
「そうだな。さな、聞きたいことがあるんだけど、いいか? 」
「うん?いいよ」
「何で、俺は、車に乗ってたんだ?さっき、灰崎に、聞いたけど教えてくれなかったんだ」
「えっ? 」
「仕事が、終わってそれで……」
さっき、灰崎に、言ったことをさなに話した。
「何で……隼兄……。覚えてないの?嘘でしょ? 」
さなは、泣いた。
「ごめんね」
と、言って、さなは病室を出ていた。
その後、診察をした。医者によると、事故のショックで一部の記憶を無くしたらしい。
これは、言い方がおかしいけど。よくある話だそうだ。
いつ記憶が戻るか、分からない。明日、戻るかもしれないし、もう戻らないかもしれない。
そして、俺の右半身が麻痺していること。元々体が、丈夫だったおかげでリハビリをしたら、なんとか日常生活を送ることが出来る。
灰崎は、「一度家に帰るので、成瀬君に伝えてくれませんか」と伝言を残して病院を出たと、病室に入ってきた父さんが教えてくれた。
「隼咲、良かった。目が覚めてくれて、ホッとしたよ。さっき、廊下でさなえとすれ違ったよお母さんは、さなえの方についてるよ」
「父さん」
「うん? 」
「俺、さなを泣かせてしまった」
「えっ? 」
「灰崎のことを話したら、さなが泣いたんだ」
「そうか……」
父さんは、何かを察した。
「俺は、何か大切なことを忘れた気がするんだ」
「うん」
「どうしたら、いいんだ? 」
「……そうだね。焦らなくていいと思うよ。今は、体を治すことを考えたらいいんじゃないかな」
「そうだよな。ありがとう」
「うん、いいんだよ」
そう言って、父さんは切なそうな顔をした。そして、少しの間の沈黙。俺は、何か話さないとと思って口を開いた。
「父さん、俺の会社に連絡しないといけないよな? 」
「隼咲の会社には、連絡してるから安心したらいいよ」
「あ、ありがとう」
「いいんだよ。無理に話そうとしなくてもいいから。もう、そろそろ体を休めたらどうだ?」
「そうだな。おやすみ」
「おやすみ。ゆっくり、体を休めるんだよ」
「あぁ。ありがとう」
「いいんだよ」
そして、父さんは、病室を出ていった。気を使わせてしまった。そう思いながらも、睡魔が襲ってきたので寝ることこにした。
読んでいただきありがとうございます!