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幸せを願って(改正版)  作者: 宮原叶映
12/25

事故

事故の表現あります。サスペンスやニュースの感じで書いてます。ご注意を。

 さなえちゃんと喫茶店で話した日から数日後の夜のことだった。久しぶりに電話がかかった。


「みや!なかなか連絡できなくてすまん……」


「大丈夫だよ!その間、さなえちゃんと仲良くしてたらね」

 

「そうか!明後日、何か用事があるか? 」

 

 急いで、スケジュール帳で予定を確認する。明後日は、日曜日なので特に用事がない。

 

「用事は、ないよ 」

 

「じゃあ、どっかに行くか? 」

 

「えっ?やったー!行こう! 」

 

「この間のファミレスに行くか? 」

 

「うん! 」

 

「で、そのあとにドライブに行こう!最後は、あそこに行くか! 」

 

「それ、いいね! 」

 

「じゃあ、明後日みやの家の前に迎えに行くよ」

 

「なんか、悪いよ」

 

「だったら、みやの家の近くに公園があっただろ? 」

 

「あるよ」


「そこって、確か噴水あったよな? 」

 

「うん、あるよ」

 

「噴水前で、待ち合わせ場所っていうのはどうだ? 」

 

「それだったら、いいよ! 」


「それに、決まりだ。時間は、十時半にしよう」

 

「そうだね。あそこの公園は、広いからのんびり歩くってこと? 」


「そうだ!楽しみだな」

 

「楽しみだね! 」

 

「じゃあ、また明後日! 」

 

「うん、また明後日ね! 」

 

 通話が終わり、スケジュール帳に、明後日の日付を書き込む。これは、うちにとっての初デートだと思う。

 

 

 隼と約束した日になった。噴水の前が、待ち合わせになっていたけど。予定の時間より一時間早く着いてしまった……。

 隼はまだ来ていない。近くのベンチに座ることにした。

 

「あれ?みやこちゃん? 」

 

 聞きなれた声が、聞こえた。声が聞こえた左方向に向くとお兄ちゃんがいた。

 

「えっ?!お兄ちゃん!どうしたの? 」

 

「どうしたは、こっちのセリフやで」

 

「パパまって! 」

 

「もう、パパったら急に走り出さないでよ」

 

「あっ!玲ちゃん、ママごめん……」

 

「「いいよ! 」」

 

「おはよう!みやちゃん! 」

 

「おはよう!玲ちゃん! 」

 

「おはようございます、お姉さん! 」

 

「うん、おはよう! 」

 

「みやこちゃん、兄ちゃんにはしてくれんのか? 」 

 

「今から、しようと思ってたの。お兄ちゃん、おはよう! 」

 

「あぁ!おはよう!で、今日はこんな朝早くから公園にいるんだ? 」 

 

「人と待ち合わせをしているんだ!でも、早く来すぎたけどね……」

 

「人って、まさか彼氏か?」 

 

「うん、そうだよ! 」

 

「誰だ?俺の従妹をたぶらかしたんは? 」

 

「うちの同級生だよ!ちゃんとした恋愛だから大丈夫だよ」

 

「兄ちゃんの知っているやつか? 」

 

「もう!パパそのへんにしなさい!玲ちゃんが、早くパパと遊びたかっているよ」 

 

 と、言いながら姉さんは、玲ちゃんと手をつなぎ遊具の方に歩いて行く。

 

「これは、いけない!すぐに、行くよ!玲ちゃん! 」

 

 と、兄ちゃんは走りその場から消えた…。そして、すぐにお姉さんからうちのスマホにメッセージが届いた。

 

『主人が、迷惑をかけてごめんね…。何かあったらいつでも言ってくれて大丈夫だからね。本当は、公園で遊んだ後に、お弁当を食べてから、みやこちゃんの家に遊びに行こうってことにしてたから、会えて良かったよ! 』

 

『うちも会えて良かったです!何かあったときは、相談させてもらいますね! 』

 

 と返信をする。時計を見るとあまり時間がたっていなかった……。

 

「みやちゃん! 」

 

 と、遊具で遊んでたはずの玲ちゃんが、走ってきた。 

 

「あれ、玲ちゃんどうしたの? 」

 

「みやちゃん!あっちで、いっしょにあそぼう! 」

 

「こらこら!玲ちゃん勝手に走るなよ!危ないでしょうが! 」 

 

「パパ、ごめんなさい……」

 

「いいよ! 」 

 

「「いいよ! 」じゃないよ、パパ!あなたが、突然走り出すから。玲ちゃんが、まねをしたのよ」

 

「すみません。行動には、気を付けます」

 

「本当かな? 」 

 

「ねぇ!みやちゃん、あそぼう! 」

 

「玲ちゃん、ダメでしょ!みやこちゃんは、友達と遊ぶ約束しているのよ! 」 

 

「まだ、時間があるから大丈夫だよ! 」

 

「ごめんな……」

 

「いいよ!久しぶりに、玲ちゃんと遊びたいから」

 

「そう言ってくれて、うれしいよ」

 

「玲ちゃん、何して遊ぶ? 」

 

「れいちゃんね」

 

「うん」

 

「ボールなげしたい」

 

「ボールなげ? 」


「キャッチボールのことな」

 

「もう!分かってるよ。玲ちゃんいいよ! 」

 

「ママもやろう? 」

 

「ママね。荷物が取られないように守りたいの。だからね。あとで、パパと交代して、一緒にしよう? 」 


「わかった! 」 

 

「お姉さん。十時になったら、声をかけてくれませんか?彼だったら、三十分前には、来ると思うので」

 

「分かったわ!あと、二十分ぐらいかな」

 

「ありがとうございます! 」 

 

「みやちゃん、いくよ! 」

 

「いいよ! 」

 

「お兄ちゃん! 」

 

「へい!玲ちゃん! 」

 

「はーい! 」

 

 お姉さんに、呼ばれるまでキャッチボールをした。お兄ちゃん達が用意していた飲み物を飲んで、立ち上がった時だった。

 うちのスマホから着信音が鳴り響いた。隼から、早く着いたという電話かなと最初は、思った。表示された名前がちがった。

 なぜか、嫌な予感がした。表示された名前は、さなえちゃんからだ。通話ボタンを押す。

 

「もしもし?さなえちゃん。どうしたの? 」

 

「……」

 

「さなえちゃん? 」

 

「隼兄に…昨日、みやこさんと会うって聞いていて……」

 

「うん、そうだよ」

 

「隼兄が、事故にあったって……」

 

「えっ?嘘でしょ」

 

 さなえちゃんの声が、今にも泣きそうで、これが嘘じゃないことを物語っていた。

 

「隼兄が、家を出て十分後に大きな交差点で信号無視をした車と衝突して…。近くにいた人がすぐに救急車を呼んでくれて……今、病院で 手術を受けています……」

 

 さなえちゃんに、病院の場所を聞いて通話を終了した。

 

「みやこちゃん、どうしたん? 」

 

「……お兄ちゃん。どうしよう……。隼が、事故にあって、今手術で……」

 

「落ち着け。隼っいうのは、さっき言ってた彼氏やな? 」

 

「うん」

 

「分かった。どこの病院だ? 」

 

 うちは、兄ちゃんに病院の名前を伝えた。


「ママ、すまん。みやこちゃんと行ってる」

 

「分かったわ。行ってらっしゃい」

 

「あぁ、行ってきます」

 

「姉さん、ごめんね」

 

「いいから、早く行きなさい。大丈夫だからね」

 

「はい」

 

「ママ?パパたちどこにいくの? 」

 

「パパ達ね。用事が、出来たの」

 

「そうなの? 」

 

 ふたりの話し声を聞きながら、お兄ちゃんとその場をあとにした。

 

 お兄ちゃんの車に乗り病院に向かう。その道中で、隼の事故についてお兄ちゃんに話した。

 

「みやこちゃん、大丈夫やからな。弱気になるなよ。応援しとけ」

  

 うちは、もう頷くことしか出来なかった。頭のなかがパニックを起こしていたからだ。

 そんなうちを見て、お兄ちゃんは深呼吸をしなと言った。

 

 病院に着いたのが、待ち合わせの十時半。お兄ちゃんと一緒に病院の入り口のところに行くと、さなえちゃんが待っていてくれた。


  軽くお兄ちゃんの自己紹介をして、手術室に向かう。そこには、隼達のご両親らしき人が椅子に座り手を握って隼の無事を祈っていた。

 

 さなえちゃんに、詳しく聞いた。隼の家から公園まで、車で二十分かかるそうだ。隼が、家を出たのが、九時四十分。

 事故に、あったのがその十分後。事故が、起こらなければ、うちが、思ってたのと同じぐらいに待ち合わせ場所に着くはずだった。

 

 相手の車は、信号を全く見てなかった。しかも、スピードを時速制限以上出していた。隼は、体を強くぶつけて、発見当時は意識があったが、救急車が来たときには心肺停止だったそうだ。

 

「みやこさん、大丈夫ですよ。遼さんが、守ってくれますから。隼兄を信じましょう」

 

「はい。うちも隼のことを信じます」 

 

「さなえ、こちらの方達は? 」


 と、さなえちゃん達のお父さんが椅子から立ち上がった。

 

「お父さん。こちらは……」

 

「隼咲さんと、お付き合いさせていただいている灰崎みやこです。隣にいるのは、従兄の(じん)です」


「あなたが、みやこさんですか。隼咲とさなえから、話を聞いています。うちの息子は、迷惑をかけていませんか?」

 

「迷惑なんて、私の方がかけています。隼咲さんとは、仲良くさせていただいています」

 

「そうですか」

 

「すみません。こんなときですが、僕の従妹のみやこは、優しく、明るい人です。よろしくお願いします」

 

「はい、分かりました。子供達から、話を聞いていて、彼女の人間性は分かっています。ご安心ください」

 

「ありがとうございます」


 と、お兄ちゃんは頭を下げてお礼を言った。


「すみません。僕は、そろそろ帰りますね。みやこちゃんを送っただけですので」


「お兄ちゃん、ありがとう」

 

「いいんやで」


 そう言って、お兄ちゃんは、その場から立ち去った。

 

 うちを入れた四人が、椅子に座り、隼が手術がら出てくるのをまった。手術室に入ってから、二時間経過しても隼は出てこなかった。

 

「さなえ、そろそろ帰らなくて大丈夫なの? 」

 

 うちが、来てから初めてさなえちゃん達のお母さんが声を出した。

 

「大丈夫だよ。隼兄のことで、電話がかかったときにね。おじいちゃんが、言ってくれたの」

 

『叶翔のことは、わしらに任せて早く行きなさい。こんなときぐらい、わしらに頼らせてくれないかい』

 

「って、その言葉を聞いてね。もっと頼りにしていいんだって思えたの。だから、大丈夫」

 

「それなら、いいのよ」

 

 さなえちゃん達のお母さんが、うちの方を見て言った。

 

「みやこさん。さっきは、ごめんなさいね。せっかく、自己紹介してくれたのに……。隼咲のことが、突然だったから、気が動転してしまってね……」

 

「大丈夫です。お気持ちは、分かります」

 

「それに、せっかくの初デートだったのに……」

 

「気にしないでください。デートなら、隼咲さんが無事で元気になったらいつでも出来ますから」

 

「そうね。あの子ったら、初デートだから待たせたらいけないって言ってね。家を待ち合わせ時間より早く着くのに、家を出たのよ」

 

「そうなんですか? 」

 

「そうよ。私が、まだ、早いんじゃない?って、ひき止めたらよかったら~。」

 

「母さん、よさないか。隼咲は、強い子だから大丈夫だ。今は、信じよう」

 

「そうね、あなた」

 

 さらに、一時間経過したとき手術室から、隼が出てきた。

 

「先生!!隼咲は…息子は、無事なんですか? 」

 

「落ち着いてください。こちらで、説明します」

 

 そう言って、医者は診察室に案内した。


「息子さん…隼咲さんの手術は、成功しました。一命を取りとめました。意識は、戻っていません。そして、後遺症が残る可能性があります」

 

「それは、どういうことですか? 」

 

 と、お父さんが質問する。

 

「隼咲さんの右側から、相手の車が追突しました。特に右半身を強い損傷です。なので、右半身は、麻痺などの後遺症が残るかもしれません。ですが、希望はあります」

 

「なんですか? 」

 

「それは……」

 

 医者の答えを聞いていると、声が遠ざかり視界が真っ暗になった。

 

 目をあけると、知らない天井が視界に広がった。

 

「目が覚めて、良かった」

 

 と、隣で聞きなれた声がした。 

 

「隼? 」

 

「隼君じゃなくて、悪かったな」

 

「お兄ちゃん? 」

 

「あぁ、そうやで。大丈夫か? 」

 

「うん。大丈夫……。何で、お兄ちゃんがいるの? 」

 

「それはな。みやこちゃんが、彼の診断を聞いている途中で倒れたんだ。そのあと、さなえちゃんが、兄ちゃんに連絡してくれたんや」

 

「えっ? 」

 

「実は、何かあったときのために、こっそり兄ちゃんの連絡先を書いたメモを渡していたけん。連絡が、来たときは驚いたんだからな」

 

「心配かけて、ごめんなさい」

 

「みやこちゃんが、無事ならええんで」

 

「どれぐらい寝てた? 」

 

「あぁ。倒れてから二時間ぐらい寝てたみたいやで。で、今の時刻は、十五時半すぎぐらいかな」

 

「そうなんだ。そんなことより、隼は!? 」 

 

 ガバッと起きあがると、ふらっとした。

 

「みやこちゃん!?急に、起きあがったらいけないよ。安静にしろ」

 

「ごめんなさい」

 

「先生、呼んでくる」

 

 医者の診察によると、隼の事故による精神的ショックが、そして、トラウマが原因だそうだ。今日は、念のために入院することになった。医者が、立ち去ったあと、お兄ちゃんが教えてくれた。

 

「お兄ちゃん、隼は? 」


「うん。今から、説明する。さっき、さなえちゃんが来て教えてくれたよ。隼君は、まだ目を覚ましていない。今のところ容態は、安定してるから、そこは、安心していいって。麻痺の話は、覚えている? 」

 

「うん。右半身のことでしょ?」

 

「そうやで。隼君次第で、麻痺は少し残るんやけど。リハビリをしたら、なんとか日常生活に問題はないらしいで。元々、体が丈夫だったけん、回復の見込みがあるらしいで」

 

「そうなの? 」

 

「そうやで」


「……」

 

「大丈夫か? 」

 

「うん。大丈夫だよ」

 

「無理するやよ。そんな、今にでも泣きそうな顔をして何が大丈夫? 」

 

「そうな、顔をしている? 」

 

「してるぞ。兄ちゃん、飲み物買ってくるからな」

 

「うん」

 

 お兄ちゃんが病室から出ていった後、泣いた。

 

 しばらくしてから、ノックの音が聞こえた。お兄ちゃんかなと思ったけど、違った。さなえちゃんだった。

 

「みやこさん、隼兄やお兄さんじゃなくてごめんね」

 

 と、ベットの隣に置いてある椅子に座って、さなえちゃんが、言った。

 

「そうなことないよ」

 

「良かったです。お兄さんは、先程帰りましたよ」

 

「そうなんだ」

 

「はい」

 

「お兄ちゃん、何か言ってた? 」

 

従妹()が、迷惑をかけて、すみません』

 

「って、言ってましたよ」

 

「そうなんだ……」

 

「はい」

 

「隼は?」

 

「隼兄は、まだ寝ています。明日には、目が覚めると思います。隼兄ことだら、たくさん寝て回復する気なんですよ」

 

「なんだか、隼らしいね」

 

「そうですね」

 

「さなえちゃん、ごめんね。うちが、倒れてしまって……」

 

「謝らないでください。私だって、倒れそうになったんですから。そのことに関しては、誰も、みやこさんを責めません」

 

「ありがとうございます」

 

「どういたしまして」

 

「うちね。両親が交通事故にあって、亡くなったんだ。うちが、楠木君と再会したときに、お通夜と葬儀の関係でこっちにいたの。だから、隼も、交通事故で、死んだらどうしようって、怖くなったの。そう思ったら……」

 


「そうだったんですね。でも、隼兄は、大丈夫です。隼兄は、約束を破って逝くような人ではありません。だから、信じましょう」

 

「うん、ありがとう。信じるね」

 

 隼が、起きるのを信じて待つことにした。

読んでいただきありがとうございます。

隼咲の出番が来たと思ったら事故に……。

隼咲のことが好きだと言う人には、すみません。

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