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幸せを願って(改正版)  作者: 宮原叶映
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会いたい

 隼は、しばらく仕事が忙しいらしい。

 彼の仕事は、家庭教師だ。主に、体が弱くなかなか学校に行けない。いじめや家庭環境など不登校になった子供達に学校の授業に遅れないように勉強を教えている。隼の家庭教師は、かなり人気らしい。

 

 なぜなら、あの参考書なみのノートがあるからだ。授業の度に、その範囲を用意して配る。

 まず、自力で問題を解いてもらう。そして、参考書をを渡して、一緒に問題を考える。その生徒達が、テストの時に学校になんとか行き、テストの問題解く。

 

 いつも、その生徒達が上位を占める。時々、その生徒達に、学校の生徒が負け惜しみにで、言ってくるらしい。


『お前ら、ずるしてるんじゃないのか?学校に、ろくに行ってないお前らがテストで、いい成績を取るのは、どう考えてもおかしいだろう!』


 そう、言われたら、無視をする。でも、我慢が出来なかったら、生徒は、こう言ってるらしい。


『自分達で、努力をしました。家庭教師の生徒に、教えてもらいました。疑うのなら、先生を紹介しますよ?その先生は、教え方が上手いので、誰でも高得点を取ることが出来ますよ。先生の授業をしてもらって、本当か嘘かを自分で証明してください』


 そう言えば、大抵の生徒は、黙る。あるいは、本当だろうなと言って彼の授業を申し込む人がいるらしい。


 もうひとつ、仕事では、ないことをしている。それは、仕事が休みの時に、病院で病気と戦ってる子供達に、絵本を読み聞かせをするボランティアをしてる。

 隼は、絵本のお話を聞いてくれた子供達の笑顔が好きだと言っていた。


 隼の仕事の原点は、やっぱり楠木遼だ。彼と出会ったことが今の自分がいるのだと思う。彼がいなければ、今の自分はいない。そう、うち達は感じてる。

 

 今日も、喫茶店に来ている。そして、さなえちゃんと話をする。


「みやこさん。隼兄が、家庭教師になったきっかけは、遼さんの勉強を見てたからなんです。

あの参考書です。私は、隼兄に見せてもらいました。隼兄が、家庭教師になるときに、遼さんから貰ったと言っていました。お守りとして、持っておきたかったらしいです。遼さんは、何冊も、参考書を取っているんですよ。隼兄が、みやこさんから原点の話を聞いた後に、あなたが、書いてくれたメッセージも見せてくれました」


『俺のせいで、何も悪くない遼がいじめにあった。遼は、そんな俺のことを思って、俺に何も言わなかったんだ!遼は、辛かったはずだ。このメッセージは、そんな遼を救ってくれた証だ』

 

 と、隼兄は、指でなぞって言ってました。

 

 さなえちゃんは、一度咳払いをしてから、話を続けた。

 

「その当時のことは、まだ遼さんと私は、出会ってなかったので、それ以外に知りませんでした。その事については、物語で知りました。みやこさんのおかげで遼さんと隼兄は、救われました。ありがとうございます! 」

 

 そう言って、さなえちゃんは、うちに頭を下げた。

 

「さなえちゃん、顔を上げて」

 

「はい」

 

「大丈夫。隼も救えたんだね。良かった! 」

 

「はい! 」

 

「そうだ!さなえちゃん! 」

 

「はい、どうしました? 」

 

「注文してもいいかな? 」

 

「あっ!すみません……」

 

「大丈夫だよ」

 

「ご注文は、何にしますか? 」

 

「オムライスとオレンジジュースでお願いします」

 

「分かりました!オムライスとオレンジジュースでよろしいで……。あれ、前まで注文していませんでしたよね? 」

 

「そうだっけ?さなえちゃんも、オムライスとオレンジジュース好きなんだよね。このお店だけアイスがついるのが驚きだよ」

 

「まさか、おじいちゃんが言ったんじゃないですか?あの電話って。……あのときみたいに。恥ずかしい……」

 

 そう言って、さなえちゃんは厨房に行った。調理の音とさなえちゃんの声ともに店内にまで、聞こえた……。

 

 

 その日の夜のことだった。わしは、寝る前にトイレに行った後のことだ。

 居間の戸の隙間から、明かりが漏れていた。なので、戸の隙間から中をのぞいた。さなえちゃんは、ひとり仏壇の前に座っていた。

 仏壇のところに置いている遼の写真を見て話しかけていた。


「私は、みやこさんと出会ってから、遼さんがまだ生きているって、思うの。みやこさんは、私の知らない遼さんを知っているの。うらやましいなって、思うの。やきもちなのかな。遼さん。私は、遼さんに会いたい。でも、まだ生きたい。やりたいことがたくさんあるから。だから、今を生きる。叶翔を遼さんのように優しく、よく笑う笑顔の素敵な子供に育てるね!応援しててね!だから、すべてやりきったあとに、会いに行くね。そのときまで、待っててね」

 

 決意を新にしたさなえちゃんの表情は、覚悟とそして生き生きしていた。

 

 わしは、ふと思い出した。今日、みやこさんが店に来ていた。そして、みやこさんが、オムライスとオレンジジュースを注文してピンと来たのだろう。注文内容を伝えるついでに、怒りに来た。


『おじいちゃん、勝手に言わないでください!遼さんの気持ちが今なら分かりました』


『何かね? 』

 

『とぼけないでください! 』

 

『わしは、ただ店のオススメを教えて上げただけじゃ。なぁ、ばぁさん! 』

 

 ばぁさんは、無視をする。料理に集中していた。

 

『みやこさんは、私がオムライスとオレンジが好きなのを知っていたんですよ』

 

『そこなのかい? 』

 

『それに、本当はオムライスにアイスは、ついていないのに……』

 

『すまないね。少し、意地が悪かった。あぁ、話したよ。みやこさんなら、さなえちゃんと隼咲君を救えると、思ったんだよ』

 

『怒ってしまって、すみません』


『いいんだよ。わしが、勝手なことをした。遼に、また怒られてしまうよ』

 

『そうですね』

 

『勝手に話したじいさんが悪いよ』

 

 ばぁさんから、遼のときと同じことを言われてしまった。


 わしも、遼に会いたいと思う。だが、まだ生きたいのだ。ばぁさんと共に生きたい。

 そして、わしには孫の嫁とひい孫いる。遼が、死んで一年になる。

 まだ死ぬわけには、いかない。守らないといけない。わしも、決意を新たにして今を生きよう。

 それから、そっとその場をあとにした。

読んでいただきありがとうございます!

隼咲の出番なし!

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