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ハンドレッドの悩める日々  作者: 若松ユウ
前章「晩冬のこと」
1/11

01「お母さまとの記憶」【マーガレット】

「王子さまがキスをすると、お姫さまは長い眠りから目を覚ましました。悪い魔女の呪いが解けたお姫さまは、王子さまと末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし」

 マーガレットに似た高貴な女が絵本を畳み、サイドテーブルの上に置くと、幼いマーガレットは、女に向かって質問する。

「ねぇねぇ、お母さま。どうして、お姫さまは王子さまのキスで、おめめを覚ましたの?」

「それだけ、キスには大事な思いが込められてるからよ。王子さまはお姫さまを救いたい、大切にしたいと思ったから、気持ちが伝わったの」

「ふ~ん」

 納得したのやらしていないのやら曖昧な様子のマーガレットに、マーガレットの母は、そっとベッドサイドから腰を上げると、マーガレットの肩まで毛布をかぶせ、小さな胸の上を優しくトントンと叩きながら言う。

「いつかマーガレットも大きくなって、素敵な王子さまが見つかったら、キスの意味が分かるわ。おやすみ、マーガレット」

「おやすみなさい」

 マーガレットが目を瞑ると、マーガレットの母は、その額に親愛を込めた軽いキスをし、静かな微笑みを浮かべながら部屋をあとにした。

  *

――何か、すごーく昔のことを思い出した気がする。

「ウーン。今のは、何だったのかしら?」

 ネグリジェ姿のマーガレットが首を傾げていると、部屋のドアをノックする音がする。

「はい。どうぞ」

 マーガレットがドアに向かって声を掛けると、部屋の中へサンデーグラスを持ったハンドレッドが入り、持っているグラスを自慢げに見せながら言う。グラスの上には、常緑樹の葉と赤い実で飾られたドーム状の雪が盛られている。

「おはよう、マーガレット。見てよ、これ。さっき作ったばかりなんだ」

「まぁ、可愛い。雪のウサギさんね」

 ニッコリとマーガレットが笑顔になると、ハンドレッドはグラスをサイドテーブルに置き、興奮気味に誘う。

「庭には、まだまだ雪が積もってるんだ。雪合戦だって、スノーマン作りだって出来るよ。融けないうちに、遊ぼう」

「いいわね。すぐに着替えるから、先にお庭に行ってて」

「わかった。待ってるから、早く来てよ」

 そう言って、ハンドレッドは風のように素早く部屋を出た。マーガレットは、その後ろ姿を見てクスッと笑うと、いそいそとワードロープへと向かった。

――はしゃいじゃって。まぁ、ハンドレッドにとっては、はじめて見る本物の雪だから、仕方ないか。

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