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鈴木昇二は設定の確認をする

「つまり……どういう事?」


 本気でわかっていない感じで、女神が首を傾げる。

 当然ながら、昇二は例の空間に戻っていた。


「だーかーらー、あの装置!」


 と、昇二は何もない空間で何もない場所を指さす。

 実際、女神が装置装置と言っているが、昇二にはなにも見えないし、なにも感じないのである。

 指をさしたのは、なんというか便宜上のノリである。


「あれな、ガフディーがある、あの世界だけに送られるんじゃねーんだって!

 俺な、いま、軟体生物が覇者になった天体に居たの!

 もうな、同じ世界の違う地域では絶対にないわ」


 昇二は確信をもって断言した。

 そうなのだ。

 だって、あの世界には……


「月が3つあったんだよ!」


 昇二が、この連続転移の中で、唯一まともに生き延びれたあの世界の月は、ほぼ地球と同じぐらいの大きさ(少なくとも見た目は、だ)のものが1つだけだった。

明らかに違う。


「ふーん」


「関心低っ!? え、なにその反応!?」


「うーん。どちらかと言うと、いろんな世界の設定を聞ける分、私的にはお得だし。でもあなたは大変だろうから、面と向かってはあんまり喜ばない方がいいかなぁ、と」


「わあ大人~」


 結構な正論に納得してしまった。そして思う。


 ――つくづくクソだな、このシステム。


 なんというか、恐らく昇二は所謂異世界転移ものの主人公的立場なはずなのだ。

 そして、そういう類いのジャンルの、まず3分の1は初っぱなからチートで楽勝モノ。もう3分の1は、地味なスキルで序盤コツコツ、途中で覚醒してドッカン。残りは、スキルなしやホントにゴミのままのスキルなんだけど、本人の性格や知識、あとはご都合的な運のよさで、なんだかんだストーリーが進んで行くものなのである。

 もちろん、流行りのサクサク進行だけじゃないし、主人公がとてもとてもツライ目に合いまくる作品もあるっちゃああるのだが、それでもストーリーは進むのだ。


 なのに、昇二の場合、ただ「いろんな作品のバッドエンド」を繰り返して行くだけにしか思えないのである。


「やばーい。本気で出口が見えねー」


「んー、でもホラ、世界が変わるってことは、毎回世界設定が変わるってことでしょ? だったら、そのままのあなたがめっちゃ強いって世界もあるんじゃないの?」


 その時、昇二に電流が走った。

 確かに!!

 あのほら、青いたぬ、ネコの、まあドラえもんなんだけど、あったな! そんなエピソード!!

 重力が地球より弱い星に行ったのび太がスーパーヒーロー状態になったやつ。

 そうか。

 あれを狙えば良いのか。


「まあでも、死ななきゃ戻って来れないんだったら、狙うもなにもないんだけどね」


「そうな。やっぱ死ぬのは痛いし怖いわ。覚悟決まる瞬間があるにしても、ハズレた世界だから自殺、なんてのはまだ俺にはムリだ」


 あと数十回死んだら慣れるのかもしれないが 。

 そうなるまでは、行った世界で足掻くしかないのだろう。

 同じ死に戻りでは、昇二の中で「多分一番メジャー」だと思っている某ジャージの彼と、どっちがハードモードだろうか?

 と考えてみたが、リスタートの条件が違いすぎて比べられなかった。何せ、こちらはとにかく運任せなのである。対策もなにもなかった。飛んでく世界次第。分母の数が文字通り無限の、ガチャ回し放題プラン(但し一回回すのに命1個必要)である。


「それで、今回はどうだったの?」


「え? もうこの下り終わりなの? 個人的にはマジで生死を左右するお話なのに」


「死ぬのは私じゃないし」


「お前ホントに神様側か? 底辺は底辺でも悪魔側だったりしないか?」


「んー、ヤンデレの神が居るって時点で察してほしいんだけど、神の世界に人間世界ほどの善悪的な倫理観はないわよ?

 あるのは役職? 役割? とにかく、概念に対しての存在なのよ。

 だから、新しい概念が生まれたら、それを司る神も生まれるって感じ?

 私の先輩には物書き見習いの神とかいらっしゃるし」


「……同じじゃないんだ? ワナビと物書き見習いって。時代的なものなのかね」


「言葉に対するイメージの違い、かな。

 同じ『物書きを目指す者』を指す言葉ではあっても、それぞれに対するイメージって全然違うでしょ?

 それが『別の概念』と判断されると、別の神が担当することになるわけね」


「……誰が判断すんの?」


「多分、だけど、総意としての『人間の意志』ってやつ」


「お前それ……卵と鶏の話になるじゃん」


「だから、多分だって。

 私みたいな底辺神格がそんな真理を知ってるわけないじゃん。

 神は人間を作りたもうた。の、神が、私たちと同種の存在なのか、私は知らないもの」


「……」


 昇二は絶句した。

 これだけファンタジーなことをやらかしておいて、自分たちは人間の世間一般でいう、あの『神』とは違う存在かもしれない、と言われたのである。


「もう訳が分からないよ……」


「そーんな鬱アニメのセリフ呟いてないで、さっさと今回の話を教えなさいよ!」


「どこの駄女神だよ……ここのだったよ……」


 ゲッソリと嘆いた昇二だったが、大人しく今回の話をすることにした。

 これ以上話していても、別段何かが変わるわけではないだろう。やることは変わらないのだ。


「まぁ、さっきも言ったように、今回の世界はタコみたいな奴らの世界だったんだけどな……」 

エタってなかった……だと……!?

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