アルベレンと城への侵入
「はぁ……ここがアルベレン、なのか?」
マーズベルトのテレポートによって街のほとりに飛ばされた俺とリナは、大きな橋を渡ったところにあるこれまた大きな門をくぐったすぐのところで突っ立っていた。
今まで俺が通ってきた街は、二つともなんていうか比較的穏やかで、小さな子供が道を走り回るのどかところだった。
だが、ここはどうだ。
右を見ても左を見ても人、人、人、人。
東京のスクランブル交差点並みの人がこの街に溢れかえっていた。
あまりの人の多さに驚いてつい立ち止まってしまうレベルで、だ。
「その……噂には聞いていましたが、この街には本当にこんなにもの人が住んでいるのですね……私たちの街では考えられない人の数です……」
「ああ、こんなに賑やかなのは久しぶりだ……」
日本でもこんなに賑やかな場所には滅多に行かなかったからな。
「ところで、ユウリさん。これからどうします?」
「そうだな。とりあえず俺は城へ向かおうと思う」
「ですよね。なら、私は宿を探してきます。もうすぐ日も暮れますし、ここは手分けした方がいいですよね」
「それもそうだな……それじゃあ」
俺は周りを見渡す。
すると、少し向こうに背の高い時計塔が立っているのが見えた。
「お互い、あとであそこの下で待ち合わせしよう。それでいいか?」
「はい! わかりました! それじゃあユウリさん。またあとで会いましょう!」
そう言ってリナは人混みの中へ消えていった。
「さてーー」
一人になった俺は町の中心に見える大きな建物を見上げる。
真っ白い外壁に真っ赤な屋根。
それに空へと向かって伸びる高い塔見える。
他の建物とは全くもって様式の違うそれは、誰に教えてもらうわけでもなく、俺の目指すべき場所であるとはっきりとわかる。
「俺も行くか」
そうして俺はその場所。この国の王・クランクの住む城へと足を進める。
*
「入り口には警備兵がいるのか……まぁ当然か」
城のほとりまで来た俺は、建物の陰から城の方を覗く。
さて、どうやって侵入しようか……
堂々と門の前まで行ったところであの警備兵に止められるはずだ。
一般人が王に用事があると喚いたところで、はいそうですかとすんなり通してくれるはずがない。
「おい」
俺は近くを通った男に声をかける。
「な、なんですか?」
「城へはどうやったら入れるんだ?」
「城に入るって……そんなの無理に決まっているだろう。貴族の人たちでもない僕たち一般人が城へ入ろうとしても門番に追い返されるよ」
男はこいつは何を言っているんだ?とでも言いたそうな顔で俺への質問に答えた。
「貴族だったら入れるのか?」
「そうだね……で、でも貴族だっていくら口で言ったところで入れてもらえるわけではないよ! 貴族もいっぱいいるからね。 城に入るには貴族たちが持っているそれぞれ家の家紋を警備兵に提示しないといけないんだ」
俺が貴族と言い張って中に入ろうと企んでいるとでも勘違いしたのだろう。
男は慌てたようにそう口にした。
家紋か……
「そうか。ちなみに、ここらに貴族は住んでいるのか?」
「隣町に大貴族フォリオート家の屋敷があるけど」
「助かった。ありがとう」
俺は男は礼を言い、さっそく二人の警備兵の立つ城の門へと足を運ぶ。
「おい、お前! 城に何の用だ! 城への立ち入りは王族と貴族のもの以外禁止されているぞ!」
と、話に聞いた通り、警備兵が俺の行く手を阻んできた。
ここから先に入るには貴族のもつ紋章が必要らしいが、俺はそんなもの持ち合わせていない。
俺は貴族じゃないからな。当然のことだ。
だが。
持ってないなら生み出せばいい。
「おいおい。失礼だな。私はフォリオート家の遣いのものだぞ? そんな態度で接していいのか?」
俺は少し高慢な態度を示しながらそう口にした。
「フォ、フォリオート家の遣い……? おい、そんな話聞いていたか?」
「いや、俺は何も……」
「だよな……なんか怪しいな……」
警備兵の二人がコソコソと相談を始める。
そして、そのうちの一人が俺に向かって再度問いかけてくる。
「おい、お前。本当にフォリオート家の遣いの者か?」
「当たり前だ。その証明にちゃんと家紋を預かってきている」
「なに? 家紋だと……?」
「ああ。そうだ。ほらーーー」
俺はそう言ってポケットの中から、金でできた紋章を二人に見せた。
緻密に掘られたその紋章は、ずっしりと重く、高級感がある。
フォリオート家というのが本当に大貴族であるのだというのがこの紋章だけで伝わってくる。
「そ、それはまさしくフォリオート家の紋章! 疑いをかけて大変失礼致しました……今日はどんなご用件で?」
俺の掲げた紋章を見るや否や、警備兵の二人はそれまでの疑いの態度を一変させ、頭を下げてくる。
「クランク王に早急にお伝えしなければならないことがある。クランク王のところまで案内して貰えるか?」
「クランク様に、ですか……分かりました。すぐに面会のご連絡をして参ります!」
そう言って警備兵の一人が門を開け、城の中へと入って行く。
「どうぞ。とりあえず中へ入ってください」
そしてもう一人の警備兵は、その開いた門を通して俺を城内へと導いてくれる。
よし。城への侵入は成功した。
まずは第一関門突破ってとこだな。




