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魔魂石とキメラ ①

「この姿じゃあ動きづらいな」


 そう言うや否や、老婆の姿が歪み、やがて若い女性の姿と変化した。


「何をそんなに驚いているんだ。あんな言葉遣いの老婆がいるとでも思ったか?」


 先ほどまで老婆だった女が俺に向かってそう言った。


 そりゃ驚くさ。老婆がいきなり女性の姿になったんだ。

 改めて、魔法というのはなんでもありだなと実感する。


「私はこいつを連れて先に帰る。お前たちは証拠が残らないようここを片付けておけ」


 先ほどから見ていると、どうやらこの女がこの集団の中でリーダー的な存在らしいことがわかる。

 女は周りの仲間たちにそう命令し、自身は何もない空間へ手を掲げる。

 すると、突然そこへが現れた。



「ついて来い」



 女はそう言って穴の中へと姿を消した。


 完全に俺がここから逃げれないと思ってるな。

 まあ、逃げる気もないが……


 俺は女に言われるがまま、穴の中へと足を踏み入れた。














「なんだ……ここは?」


 穴をくぐり抜けた先には巨大な空間が広がっていた。


 ここがこいつらのアジトだろうか?

 壁が全面土でできているところを見ると、ここはどこかの洞窟……それか地下という可能性もあるな。

 俺はその広い空間の中央に目を移す。

 そこには、太いガラス管のようなものが床と地面を繋いでいる。

 その中には、時折り、脈打つかのように青白く光る巨大な宝石のようなものが収められている。

 そして、その周りでは何やら作業をしている数名の人たちの姿が見える。



「おい。誰かこいつを見張ってろ!」



 俺を連れてきた女がそいつらに指示を出す。

 すると、男と女が一人ずつ、手を止めこちらに向かってきた。



「こいつは……?」

「ああ。こいつは今回のターゲットだったんだが、なぜか魔力を吸えなくてな……とりあえず私の作業が終わるまでこいつが逃げないように見張っててくれ」

「「はっ!!」」




 女は男たちにそう告げて、中央へと向かっていった。



「リーダーの命令だ。大人しくしておいて貰おうか」


 女に命令された二人のうちの男の方の一人が威圧的にそう言った。



「もし、言うことを聞かないのであれば……」


 男の右手に青白く輝く光の剣が現れ、俺の首筋にその切っ先が向く。


「痛い目を見てもらうことになる」


 その光の剣はこいつらの魔法でできたものなのだろう。

 もう一人の女の方を見ても同じように手に光の剣を握っている。


「心配するな。暴れたりなんかしない。それに手を縛られた状態では何もできないだろう?」



 俺は縛られた両手を強調するように相手に見せつける。



「それもそうだな」



 男は納得したように剣を俺の首筋から降ろす。



「お前たちの目的はなんだ?」

「お前に教える道理はないね」



 おもむろに尋ねると、今度は女の方がそう答えた。


「ふん……」



 何を聞いても答えてくれそうにないな。



 ……仕方がない。

 俺は静かに周りを見渡す。

 幸い、ここは大きな一つの空洞だ。

 耳を済ませれば、会話も少しは聞こえてくる。



 例えば、左の奥の方で話している二人の男の会話はこう。



「あとどれくらいだ?」

「はい。目標量まではあと数十人分の魔力で達すると思われます」

「そうか。まだ足りないか……」

「どうしますか? このまま少しずつ森に入ってきた人たちから魔力を吸い上げていくだけでは時間が……」

「この魔魂石への魔力の充填は、あの方からの直々の命令だ。なんとしてでも早急に仕上げたい。とりあえずリーダーに報告してみよう」




 聞く限りだと、どうやら人々から奪った魔力をあの巨大な石……魔魂石? へと溜めているらしい。

 だが、その目的がわからない。

 何をしようとしているのか……それにあの方という存在も気になる。

 あの方と先ほどのリーダーの女は別人のようだが………



「お前たちはあの石、魔魂石? に奪った魔力を充填してどうするつもりなんだ?」



 俺は答えてくれないだろうとは思いつつ、俺の両サイドに立つ二人に聞いてみた。




「………っっ!!」

「な、なんでお前が魔魂石の名を知っている?!」



 だが、そんな俺の予想とは裏腹に、二人はそんな質問をした俺に対して驚きの目を向けてくる。



 なんでって……もしかしてこいつら、向こうの二人の会話が耳に届いてないのか?

 いや、でも俺の耳にはしっかりと届いてた。

 多少注意して耳を澄ましてはいたものの、そうでなくても全く聞こえなかったというのは変だ。




 …………だが、それならば都合がいい。




「あの方とやらの命令はそんなに重要なのか?」

「お前っ! あの方の存在まで……!! 当たり前だ! あの方は我々に特別な魔法を与えてくれた!」

「この光の剣やリーダーのドレイン魔法がそうだ! あの方の命令とあれば我々はなんだってする!」

 


 二人はは聞いてもないことまでペラペラと喋ってくれる。

 魔法を与えてくれた、か……




 魔力の奪取と、魔法の授与。



 果たしてそれらが普通に取得できる程度の魔法なのかどうかは俺には今ひとつ分からないが、そのあの方とやらを放っておくのはやばいというのだけは分かる。





「で、そのあの方はどこにいるんだ?」

「あの方は我々の前には姿を現さない。いつも魔法で作り出した映像で我々に指示を送られる」



 完全に口が軽くなっているな。

 狙ってやったことではないが、少し動揺を誘っただけでこんなにも情報を口にしてくれるとは。



 あの方をどうにかしたいところだが、この二人の言い分だとどうやらあの方の正体を知るやつはこの中にはいないらしい。

 こいつらが魔力を集める目的もまだ分からないが、とりあえずここにいるやつらを倒し、あの魔魂石を破壊すればこいつらの、いてはあの方の計画を壊すことができるだろう。




 そのためには、やはり俺の腕を縛るこの縄は解いておいた方がやりやすい。






「ところでーーー」




 俺は監視の二人に改めて声をかける。




 言霊を発動させるための嘘はどうする……


 話をした限り、監視の二人はあまり頭の回転は早くなさそうだ。

 そんなに凝った嘘じゃなくてもいい。

 不意を突き、混乱を招く嘘。





 そうだな。

 ここは単純でいいだろう。







「……俺の手を縛ってる縄、解けているけどいいのか?」











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