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プロローグ

第1部の始まり方がなんだかなーと思って、プロローグを付けてみました。が、

うーん…なんだかな………


まだまだうまく文章が書けないな、と実感してます……

 

「嘘だな」



 段数の多い階段を上った先にある大きな椅子。

 そこに深く腰掛けた男がそう断言した。



「嘘? なぜ俺が嘘をつく必要がある?」



 その男の見下ろす先に立っている黒い服を着た気だるげそうな男が言い返す。




 黒服を着た彼の表情からは彼の心の内が全く読めない。

 だがしかし、実際のところ彼は内心かなり焦っていた。




 嘘が通じない。




 先ほどから、彼の付く嘘がことごとく躱される。

 まるで、嘘が目に見えているのかと疑うほどに。




「逆に聞くが、勇者を名乗る人物が魔族側につく可能性がなぜないといえる?」



 魔族と勇者が手を結ぶかもしれない、彼が兵士たちにこの部屋に案内され、最初に言った台詞だ。



 彼は再度尋ねる。



「噂で聞いたぞ? この世界に勇者を召喚できるのはあんただけだってな。そして、召喚主はその逆もできる、と」


「おい、お前。さっきから失礼だぞ! 喋り方には気をつけろ!」



 両隣に立つ兵士が乱暴な言葉遣いの彼を厳しく注意した。



「悪かったな………で、どうなんだ?」


 彼は口ではそう言いながらも、全く注意を受け入れる様子を見せず、階段上の男を見上げる。





 勇者の返還。





 それが彼がここにきた目的だ。




「確かに。私は勇者を召喚したし、その勇者を帰すこともできる………が、その嘘に乗る気にはならんな」




 だが、やはり椅子に座った男は、彼の言葉に動じるそぶりを何ひとつ見せない。




「ーーーッッ」




 なぜだ。なぜこうも通じない。

 さすがに、困惑したのか、彼の表情が少し歪んだ。





「無駄だよ。私には嘘は通じない。この眼がある限りはね……」




 男はそう言って、自身の目を指差した。





「私の眼には真実しか映らない。君の目的も、私にはもうすでに見えている。もちろん君が何者か、もね」





「そういうことか……」




 男の言葉に彼はようやく理解した。





 なぜ、嘘が通じないのか。

 なぜ少しも自分の言葉を信じず、疑わないのかを。




 あの男には嘘が見えている。比喩ではなく、実際に。物体として。





 彼の嘘は言葉からだけではない。


 口調、態度、表情などあらゆる点において相手を惑わせ、嘘をあたかも真実であるかのように思い込ませるのが彼の得意とするわざ




 しかしそれでも、男は一ミリも疑いさえしないのだ。

 見えているとでも言わなければ、こうも容易く彼の嘘はかわせない。

 



「はは! 感がいいな。それとも頭の回転が早いというべきかな? 実際には、私には嘘が見えているのではなく、真実が見えているのだがな。私の眼に映らないものは全て偽りだ」




 男は彼の考えを見透かしたかのように実に楽しげにそう話す。




 嘘が通じなければ、彼になす術はない。

 騙せなければ、彼の能力は無に等しいのだから。






「君の望みを叶える方法はただ一つだ」




 男が唐突に言った。




「魔王及び魔族の討伐。勇者自身がこれを成し遂げない限り、私は勇者を帰す気はない」





 目の前のすべてを知っていながら、あえて真実を口にせず。


 さも、どこか遠くにいる勇者という存在に期待しているかのような眼差しで。






 男の言葉を聞いて彼は思った。




 この男もまた、自分と同じ嘘つきであると。



 真実しか口せず、嘘を一切付いていない。

 だが、正真正銘の嘘つきであると。

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