とある“防波堤”のはなし
思い付きで書いた!反省も後悔もするもんか!にゃーん!(ぜーはー
「大変です、第一第二防波堤に間もなく崩壊の兆しが!」
数日前から慌ただしい指令センターがこの一報に一気に騒然さを過熱させていく。
「……副長、後続の備えは?」
「ギリギリ、といったところですね。最終防波堤も補強や補給作業を急がせてはいますが」
「やはりこの嵐が早くおさまらないことにはキツいか」
「司令官の無能さがここまでとは……っと、失礼しました」
「よい、事実だ」
この嵐を招いた司令官殿は自分はひとりふんぞり返って現場の疲弊状況すら理解もせずに『全員攻撃全員守備だ!』とか喚いているらしいがとんでもない話だと思う。予備兵力すら残さずに使いきった結果がこの嵐に伴う防波堤決壊だというのに。第一“全員”とかいうわりに司令官殿自身はのうのうと座り心地のいい椅子に座り美味いものを飲み食いしてふんぞり返っているだけではないか。何が“全員”だ。そこまで言うならお前も現場で――――あぁ、現場が混乱して崩壊するだけだな。M○政権のK元総理がいい例だ。
「しかし防波堤の連中も良く耐えてはくれていますがこのままではじり貧ですよ?」
「分かっている。特に最終防波堤の彼女には長期的に負担がかかりすぎているしな」
「はい、頭が下がる想いですよ」
防波堤の連中は今回みたいな嵐が発生するとそれらの影響を我々が立て直すまで耐えてくれる貴重な防衛戦力だ。そして歴戦の古参も多いベテランでもある。高いとは言えない給料でよく働いてくれていると思うのにあのアホ司令官殿は『若手を大事にしろ!ベテランなんぞ使い潰しても構わん!』などとほざきやがった。若手だけで世の中回るわけないだろうが、誰だあんなの司令官に任命したやつは!魔女のばあさんの呪いか!
「第一第二防波堤、決壊。直ちに第三防波堤へ予備支援を回しました」
「了解した。念のため最終防波堤にも準備させておけ」
「はっ」
この未曾有の嵐は他所の組織が管轄する防波堤群をも情け容赦なく襲い掛かっている。そのせいか補充戦力の確保が非常に厳しさを増してきているのが防波堤の消耗に拍車をかけている。
司令官殿が大事にしろと言った若手どもは我々の頃に比べて高い給料を貰っているにもかかわらず、使い潰されていくベテランたちを見て早々に敵前逃亡していきやがった。根性無しどもめ、彼女の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだ。
「閣下。悪い知らせです」
「まさかもう決壊したというのか?」
「……第三“は”健在です。しかし……最終防波堤が、彼女が……崩壊しました」
「な、ん、だと……?原因はなんだ!?復旧までどのくらいかかる!?」
「インフルエンザです。早くて七日ですな」
「わかった……彼女には療養に専念するように伝えてくれ。ここで彼女を失うわけには、いかん」
……くそう。これもそれもあの無能司令官が、考え無しに戦線拡大なんぞするからだ!
「ぶっ殺してやる!」
「ちょっ、やめてくださいって」
「止めるな副長」
「いや無理ですって、ここであんたまで無責任になったらいまだに協力して崩壊していった防波堤たちに何て言えばいいんですか」
そう言いながら副長が頭を冷やせとばかりにミネラルウォーターの入ったペットボトルを押し付けてくる。
「……だからあの無能をぶっ殺しにいくのは私の役目ですから」
「お前もか!おいっ誰か副長を引き留めろ!」
「はーなーせー!」
…………指令センターは再び(違う意味で)騒然となった。
嵐=人手不足
防波堤=社員が倒れた部署に応援に行く人達。複数現場を受け持つベテラン勢
警備業業界は特別な権限も与えられていない民間でありながら地域の治安に貢献しているのに、先日話題のあった保育士より薄給なんですよ……命の危険も多大にあるのに、ね。(とおいめ