共通① 帝都へ
『ねえママ』
『なあに』
『この国は昔は属性で別れてて仲わるかったんだよねー今はなんで一緒になったの?』
『それはね……』
あるところに風の国、土の国、火の国、木の国、水の国がありました。
風と土は歴史に残るほど面白い話もない、平和な国だったので話す必要はないでしょう
しかし、火の国と木の国は長きに渡る因縁がありました。
『因縁って?』
『子供は知らなくていいのよ』
「……お兄ちゃん……ついたよ!」
田舎から出て兄と私は旅をしていた。
ようやく目的の場所“王都エメレンタル”にたどり着く。
三週間ほどまえ、私と兄アドラは隣町へ買い物にいっていた。
重い荷物を兄と運びながら、帰路につくと、村は燃えていた。
『パパ!! ママ!!』
『火の手が迫ってる!! これ以上はだめだ!』
『でも……!』
『早く、逃げよう!』
安全な隣村に移動し、家も家族もなくして、これからどうするか兄とはなしあった。
その結果、若い人材を募集している王都エメレンタルの存在を知る。
兄は王都で仕事を貰い、そして私と王都で暮らすことを決めた。
王都に着いたはいいけれど、まわりは皆オシャレであか抜けた格好。
まわりの人がめずらしがって私たちを見ている。
「ねえ、私たち田舎ものだよね」
「まあ都会の奴等はこんなもんだろうな
逆に、田舎に都会人が来たのを想像してみろ」
「……仕事、もらえるかな?」
「仕事ならツテのある知り合いがいる」
「誰?」
兄のいう知り合いが、誰なのか、検討もつかない。
「お前が、小さな頃に一緒に遊んでもらっただろ」
「あ、もしかしてチェンツィさん?」
智墜<チェンツィ>さんは兄の友人であり、雷神の子孫と云われる天遣<てんし>族で生まれたときから背に翼がはえていて、神の使いである天使とされる。
私が三歳くらいのとき、ほんの少しだけ遊んでもらったらしいが、顔もおぼろげだ。
「あいつは礼儀にうるさいからな……手土産でも買うか」
「そうなの?」
買い物を済ませて、チェンツィさんの家を探す。
「このあたりか……」
「こんにちは……」
兄は荷物で両手がふさがっているので、私が軽くドアを叩く。
「はーいどちらさーお前は……!」
「よう、久しぶりだな智墜」
「久しぶり
二人ともよく来たな~ほらあがって!あがって!」
やけに気前よく、向かえ入れられた。
「……にしても妹ちゃん、おっきくなったな~」
「リュシカ、初対面じゃないんだから人見知りするな」
私はつい兄のうしろに隠れてしまった。
――――――――――――
「そうか……大変だったな」
兄は事情をはなした。
チェンツィさんは親身になって聞いてくれている。
「仕事のことなら任せてくれ」
チェンツィさんは両手を袖に入れたまま歩いた。
歩きにくそう。だと思いながら彼を見る。
「いいやつだろ」
「そうだね」
――――
あれから智墜<チェンツィ>さんの家に居候させてもらうことになった。
「仕事場の見学から始めようか」
「ああ」
智墜さんが兄に話す。
「まあ器用なお前ならできないことじゃないと思うが」
「じゃ、いってくる」
「いってらっしゃーい」
二階の窓から手をふって、兄やさんを見送る。
さて、私は何をしていよう。
着の身着のままだったし服や食器がない。
でもそういうのを買っている余裕もない。
食器を使わなくてもたべられるような果物を森にとりにいくことにした。
■第2部:野生児あらわる!
私が森に入ると、美味しそうな木の実がなっていた。
―――留守番をまかされたけどすぐ帰ればいいよね。
それに危ない人が万が一入ってきて鉢合わせしたら私にはなにもできないわけで、なんて屁理屈を考える。
果物をタダでほしかったんだもん。居候だし欲しいものなんてそうそういえない。
というわけでパパッと見つけて帰ろう。
「きゃっ!!」
なにかにつまづいて足を擦りむいた。
なにかの動物の尻尾かと軽く考え先に進もうとすると唸り声が聞こえる。
「ごっごめんなさい!!」
――――というかこれ魔物?
人の多い帝都にはよく魔物がいると噂には聞いていたが本当にいたんだ。
なんて分析している場合じゃないわ逃げなきゃ!
「きゃー!!」
走り出すがあっという間に追い付かれ、鋭い爪が私に襲いかかる。
「ガー!!」
私は誰かに抱えられ、魔物の攻撃を回避できた。
「オマエ、ケガないか?」
褐色の少年がたどたどしく話す。
「あ、ありがとう。貴方のおかげでケガはないよ」
「そうか、オレはヤエリ。オマエ、ナマエなんていう?」
尋ねられたので答えることにした。
「リュシカだよ」
「なにしてた」
私は果物をとりにきたと話す。
「貴方は?」
「オレはカタキとりきた」
彼はこの国の王に村を焼かれ、両親を亡くしたらしい。
「……私の村も焼かれたんだけど、本当に王様が?」
「シロのヘイシだった」
兵を動かせるのは王や宰相くらいだと思うので、やっぱりそうなのかと思う。
「街にいくならついてくる?」
家に住まわせることなどは出来ないが、道案内くらいはできる。
「そうかならあれとってくる」
お礼だといって木の上からリンゴを落として、私はそれをキャッチした。
「ありがとう!!」
なんとかバレずに家に着き、リンゴを食べた。彼はどうしただろうと考えながら夕方になる。
「あ、おかえり」
「ただいま」
アドラが先に帰宅してきた。
「ツェンツイさんは?」
「これから仕事があると先に帰された」
アドラがキッチンでスープを作る。兄はかなりの偏食で私とは食事があわない。
「お兄ちゃんって実は私と血が繋がらなくてどこかのお金持ちに捨てられたとかじゃないよね?」
「は?」
アドラは私を大丈夫かコイツ、というような目でみている。
「冗談だけど田舎生まれの庶民なのに貴族みたいに偏食じゃない?」
「そんな物語みたいなことがあるか。食べものが体にあわないだけで別に偏食というわけじゃない」
アドラは動物の肉や魚、野菜など全部食べられないらしい。
「どうやって生きてきたのか、我が兄ながら不思議~」
「……ところで、リュシカ」
アドラの声色が鋭くなった。
「……なに?」
こちらを見る彼の剣幕、今までにないくらい私は怖くてたまらなくなる。
「お前外にいったな?」
「リンゴのことなら、たまたま貰っただけで、いってないよ」
「この家にリンゴの匂いはなかった」
「だからリンゴ売りのおばあさんがタダでくれたの」
なぜこんなに怒っているの。そんなにリンゴが嫌いなのか、いや……留守番をちゃんとしなかったことに腹を立てているのだろう。
「お前の好きな物語の話にあったな。おばあさんというよりは獣の臭いと、人間の男の匂いがあるが……」
「ごめんなさい実はリンゴが食べたくて外に出たら獣が襲ってきて助けて貰って街へいくっていうから案内するお礼にリンゴを木からとってくれたの!」
私はもう隠せないので正直に話す。
「……今度から食べたいものがあるなら言え」
アドラの機嫌はまだなおらない。
「どうしてそんなに怒ってるの?」
田舎にいたときも留守番を何度かサボッてこっそり買い物することはあった。
だが謝れば代わりに留守番をしていた兄はやれやれと許してくれた。
まあ、智堕さんの家だから余計にかな?
次からは約束を破らないように気を付けよう。
「」