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挿話:リコの決意

この話は本編とは関係ありませんが、本編へ悪影響を及ぼす可能性があります。

飛ばして次の話を読んで頂く事をお勧めします。

 リコは、内気な性格の少女だった。

 学校でも特定の友達も無く、当たり障りのない会話をする知人しかおらず、そんな自分を変えなければと奮起し行動を起こしてはいるのだが……その行動は空回りを繰り返し、周りから余計に疎ましがられる事が常だった。


 学校でゲームの話を小耳に挟み、自分も話題に加われる様にとこの『フロンティア・オンライン』を始めてみたものの……、結果は普段と変わる事は無かった。


 事前情報を調べる事無く始めたゲームの世界で、人の流れに流されるまま進み、パーティーへと加入するに至ったが……間の悪さから失態ばかりを繰り返す。

 リコは、ただ可愛らしさだけで選んだ職業の特性も分からずに、闇雲に敵へと攻撃を繰り返し反撃を受ければただ逃げ回った。


 事前の申請で、「初心者」である事は告げてはいたが……まさかゲームというゲームを今までやった事が無かったとは、他のメンバーも思いも寄らなかっただろう。


 言われた事は行動するが、それが何か分からない為に一々まごつく。

 他のメンバーも一つずつ説明をしていたが……徐々に諦めの窮地に達していた。

 リコの持ち前の間の悪さに察しの悪さが相まってパーティーから疎ましがられるのに時間はかからなかった。


「悪いんだけど、パーティーを抜けて貰える?」


 その言葉を聞いて、リコは「また、自分はやってしまったのか」と気付いた。

 その要求を、反論する事無く呑む。


 リコは、ゲームの中でもいつもと変わらぬように一人佇んでいた。





 モンスターに追われ、ヒロという青年に助けられる。

 助けられた後も、その青年は街までリコの付き添いを申し出てくれた。

 街へと帰る途中、何を話せばいいか分からないリコの代わりに青年は色々な事を話す。

 どんなゲームにのめり込んだやら、最近はどんなゲームが流行っているだとか、リコにはよく分からない話だったがそれでも楽しげに語る青年を微笑ましく思った。


 モンスターが現れれば、青年が駆け出し、中国雑技団のような動きで打ち倒す。

 それが当たり前の事なのかと思い青年にリコは尋ねるが「本来ならこんな動きが出来るゲームではない」と青年は苦笑いを浮かべていた。


「危ないっ!」


 不意に襲ってきたモンスターからリコを庇い、青年が攻撃を受ける。

 リコの目の前で両手を広げて全身で庇う青年の姿は《半裸(パンツ一枚)》となっていた。


 察しの悪さが幸いし、ダメージを受けるとこの様になってしまうのか、そう理解したリコだったがそれも本来なら起こる事の無い事態らしい。


「不快にさせて申し訳ない……」

「いえ……」


 そうやって青年が謝罪するが、事情を聞いたリコはそれならばそういうものなのだろうと納得し、特に気にしなかった。


「更に、申し訳ないんだけど……端でいいから防具に触れさせて貰えないか?」

「はい、えっとここでいいですか?」


 《半裸(パンツ一枚)》の男が少女の着ている服に触れるという、見るからに怪しい行動にも、リコは気兼ねなく袖を差し出していた。


 そして、青年が防具を見に纏う。


「くっ……!なんなんだ、この仕様は……いっそ殺せっ!」


 青年の毒づく理由がリコには分からない。

 青年が着ているのは、リコと同じワンピースタイプの白いローブ姿だった。


 ただ、それは背丈やサイズが合っておらず、袖の長さは七分丈に、裾の長さはミニスカートの様になり、全身をギチギチに締め付けていた。


「えっと、大変なんですね?」


 そんなリコの言葉に、青年は困惑した顔を見せているだけだった。



 それからも、街へ着くまでに青年は様々な事を話してくれ、リコがした質問にも全て答えてくれた。

 この『フロンティア・オンライン』についても、リコが知らない事、どうすればいいかなども一つ一つ丁寧に。


 そして、別れる際にリコは決意を固める。


「よかったら、……一緒にパーティーを組んで貰えませんか……?」


 だが、しかし青年はその誘いを断った。


「ごめんな。出来る事なら、君にはこの『フロンティア・オンライン』を普通に、当たり前に楽しんで欲しい」


 それでも、リコは諦めずに声を張り上げる。


「せめて……!」



「友達になって貰えませんか……?」


 それが一番の願いだった。


「……色々、口煩いかも知れないぞ?」


 顔を上げたリコの目線の先には、そんな風に少し困った顔を見せる青年の姿があった。

 きつく締め上げられる身体をこちらへと捩って。


 今はまだ、自分は未熟で知らない事も多く、青年と肩を並べる事は出来ないが……それでも、いつか必ず青年の隣を歩く事を少女は決意する。


 初めて出来た、友達として。






 そんなリコが、再びヒロと供に歩くのは、そう遠くない事だった。


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