恋する気持ちを待ち望む
※この小説は「弁当に乗せた想い?」「逸る心と勘違い」の続編です。
こんにちは!
私、王宮の下っ端メイドをしているリリアと申します。
ところで、今日は何の日だか分かりますか?
はい……そうです、バレンタインデーです!!
日頃の感謝の気持ちをお菓子と共に伝えるという日ですね。
毎年、私は親友にクッキーを焼いて渡しているので、今年も同じようにしようとしたのですが……昨日の帰りにお話をしていた時。
「そういえば……リリア、今年はどうするの?」
「はい、いつも通り、クッキーを作りますね!」
「はぁ…やっぱり。私には作らなくていいから、あの方にちゃんと渡しなさい!!」
あの方というのは、最近縁あって親しくさせて頂いている、この方。
「ええっ!!騎士様にですか!?」
「当たり前じゃないの!!ついでに告白して彼氏にでもしちゃいなさいよ」
「こっ、こここ告白!?」
「まぁ……とにかく、今年は絶対に渡さないと駄目よ!!」
そう言って、彼女は颯爽と帰っていきました。
因みに、彼女は親友のアリーです。さっぱりとした性格の美人さんで、いつも私のことを気にかけてくれます。彼女には、ほんわりとした雰囲気の優しい彼氏さんが居て、とてもラブラブなんです。
ということで、騎士様にあげることになりましたが……どうしましょう……!!
あと、なぜ告白なんですか……!?
―――――
騎士様に何を作ろうか迷い、もし騎士様が甘いものが苦手だといけないので、甘さ控えめのチョコレートケーキを作りました。
我ながら上手く出来たと思います!
綺麗な箱でラッピングもして、あとは騎士様を探して渡すだけです。受け取ってくれるでしょうか……。
そう思いながら、廊下を曲がった瞬間。
ドンッ!!!
「わっ!!!」
「うぉ!!!」
誰かに勢い良くぶつかり、危うく転びそうな所をその方に支えて頂きました。
「っ……大丈夫か」
「ごっ、ごめんなさい……あっ!騎士様!」
何ともちょうど良いタイミングで出会いました!!
そう思いながら、持っていたケーキを渡そうとしたのですが。
「……ああっ!!ケーキが!!」
しかし、ケーキの入った箱は、ぶつかった際に落としてしまい、無惨にも潰れてしまったのです!
「そんな……!!」
「どうしたんだ?」
「……いえ、何でもありません…」
結局その時、騎士様にはケーキを渡すことは出来ませんでした……
―――――
そうして、午後の休憩時間。
「アリー!!」
「リリア、ちゃんとあの方には渡せたの?」
「ケーキが……」
私は、アリーに朝の一部始終を話しました。
「まあ……!!」
「どうしよう、もう渡せないです……」
「うーん、そうね…こうなったら、奥の手を使うしかないわ!」
「奥の手ですか?」
「借りるわよ、食堂のキッチンを!!」
こうして、アリーに連れられ食堂に行き、事情を説明したところ。
ごつくて優しいコックのおじさんが、快くキッチンを貸して下さっただけではなく、余り物の材料まで頂き、先程よりもかなり立派なチョコレートケーキが出来ました!!本当に良い人です!!
出来たケーキをコックさん達におすそ分けしました。美味しいとお墨付きも頂きました。これで、安心して渡せます!!
―――――
今日は、朝の王城内の巡回中、最近気になっている彼女と出会った。
転びそうな彼女を抱き留めると、最初は良い笑顔だったのだが、すぐに何故か悲しそうな表情になると、そのまま走って去って行った。
何か気に障ることがあっただろうか……
結局その後彼女には会えず、仕事を終えて帰宅しようとすると、友人がにこにこしながら俺の所へやって来た。
友人には恋人が居るのだが、どうやら今日の夜は一緒に過ごすらしい。友人の惚気を聞きながら廊下を歩いていると、友人に、中庭に行くと良いことがあると言われた。
疑問に思いながら中庭に行き、噴水の周りをしばらく歩いていると、後ろから駆け足でやって来る足音が聴こえた。
「騎士様!」
振り向くと、彼女が綺麗な箱を持って、にっこりと笑っていた。
「あの……これ、受け取って下さい!」
「これは……」
「私の気持ちです!!」
「!!」
そういえば、先程友人が惚気ながら教えてくれたことを思い出した。
今日はバレンタインデーという日であり、その日は好きな人にプレゼントを渡して告白をする日なのだということを。
「まさか……」
彼女も、俺と同じ気持ちだったとは…!!
つまり、これは…
「はい、日頃の感謝の気持ちです!!」
騎士「(あれ……?)」
―――――
リリアさん、冒頭からバレンタインの意味を間違って覚えていたよ!的なお話でした。
因みに、アリーの恋人と騎士の友人は、同一人物です。