サポート報告書 ①
おうちでごはんを作ろう。 サポート付き(辛口ver) を事前に読んでいただいた方がよいかと思います。
俺の契約者となった舞子は呑気者だ。
「そういえば、シンちゃんってなんなの?」
突然舞子がそう言いだしたのは、俺が舞子の家に来て1週間が過ぎた頃だった。
今さらその質問か、と呆れてしまう。
「お前、呑気なのにも程があるだろう」
「えー? 呑気なわけじゃないよ。別にシンちゃんがなんでもいいかなーとか正体聞いてもわかんないだろうなーとか思ってただけだよ?」
その考えを呑気と言わずしてなんと言うだろう。
しかし、今はそんなことを指摘するよりも重要なことがあった。
「舞子っ、火が強い! 焦げてるだろうがっ」
「え、あぁぁぁっ」
こうして、今日は片面黒こげのハンバーグが食卓の上に乗ることになった。決して俺のサポートが悪いわけではない。俺のサポートがなければ、両面黒こげのハンバーグになっていたことだろう。
「「いただきます」」
悲しいことになったハンバーグを、それでも「美味しい」と舞子は嬉しそうに食べていた。
「しかし、なんで突然ハンバーグ作るなんて言い出したんだ?」
平日は仕事があるので、自炊はかなりいい加減だ。買ってきたお総菜やストックのレトルト食品に、冷凍ご飯と野菜をぶちこんだスープ。コンビニのおにぎり1個で済ませているときもあった。
それなのに今日は、わざわざひき肉を買ってきて、「ハンバーグ作りたいの」とのたまった。まぁ、一緒に買ってきたハンバーグのセットを使えば、作るのは難しくない。
焼きすぎて失敗したが。
「よっぽど食べたかったんだな」
「それがね、お昼にテレビのCM見ちゃって。じゅわっと溢れる肉汁がすっごい美味しそうだったの!」
なるほど、あのハンバーグセットのCMに踊らされたというわけか。
目の前にあるハンバーグを、箸で割ってみる。肉汁があふれてくる気配はなかった。
「中身パサパサだけどな」
俺の率直な評価に、舞子は「失敗しちゃった」と、恥ずかしそうに笑った。
CMの食品の大半が、『そういう加工をして美味しく見せているだけ』と教えるべきか悩む。
「また今度リベンジする!」
「……まぁ、頑張れ」
「うん。シンちゃん、またよろしくね」
舞子はにっこり笑って、失敗したハンバーグを美味しそうに頬張った。
俺もハンバーグを口へと運ぶ。
確かに硬くなってしまっていたが、マズくはないな。
舞子は本当に呑気者だ。
料理の経験もろくにないし、センスもイマイチだ。
けれど、料理を美味しく食べる姿を見ていると、何故か放っておけない気分になる。
磐鹿六雁命様、返品されること十数回の俺ですが、とりあえず契約者を見つけることができました。
今後、きちんと仕込んでやりたいと思います。
拙作をお読みくださってありがとうございました。
企画モノの続きでした。
結局シンが何なのかはっきり出せなかった(笑)