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けむりの家  作者: 三毛猫
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第47話 自殺

 葬式には小父さんの同僚やら生徒が大勢来ていた。入り口では行列が出来て、何処の偉い人の葬式なのだろうかと思わされた。幸助と父はこの混雑の中で焼香だけ済ませてさっさと教会を後にした。

「人ごみだったな。まるで」

「何であんなに人を呼んだのかね? 学校の生徒が来る? 普通――」

「さあ? 俺の葬式は親族だけで良いからな。俺には起伏があり過ぎて敵わんし、それに、あんなの面倒だろ。どうせあそこの一家で盛大にやりたがってるだけなんだから」

「何かと騒がしい訳だな。イベント事だけは。――恥ずかしいな」

 幸助はどこかで俗悪な気がしていた。直属の親族でもない家が葬式を取り仕切って、大事のように見せつけている様にも思えたのである。

「小父さんの家系、本当に誰も居ない訳?」

「さあ? 幼少期に家は無くなったって聞いたぞ?」

 そして母親の姉も、暫くして死んだ。家が焼けて、焼死したのだ。その報せは何故だか彼の所にやって来て、いよいよ、母方の家族の馬鹿らしさが分かった。母親は家が大変な時期だというのに、残された小母の家の子の世話をしているという話をメールしてきた。父はそれに激怒していた。彼も同感だった。母親は小母の葬式の日時も連絡してきたが、幸助はそうしたことで誘い出してきているような気がして気色がわるかった。だから彼は、小母の葬式には行かなかった。

 小母の家は小母自身が焼いた。小母は自殺だった。




 小母が死んでからしばらくして、幸助と父は母の別居先であったアパートから引き払って別に住居を用意した。幸助の居場所が知れなくなった母親は彼に度々連絡をよこすようになったが、彼は取り合わなかった。それから直ぐに母親は兄を家から連れ出して、自分の父親のO町に在る実家に置いた。

 幸助たちは家に戻った。祖母はこう言うのだった。

「アンタの母親が突然来てね、連れ出して行ったのよ。大きな灰色の車に乗って来てたわ。だけどよかったわ。あんなに毎晩毎晩うるさかったら、かわないものね」

 家の割れた窓硝子は板や段ボールでふさがっていて、家具はあの時のそのまま、キッチンや廊下は生活していた事が分かるが、後はゴミで埋もれていた。栄養剤の瓶が云百本、台所や食卓に置かれていて、皿は一枚だけしか使っていなかったようである。孝道の部屋には人の体臭が籠っていて、アンモニアの匂いが鼻に刺さった。風呂場は下から黒く黴が這い上がっていた。便所は嘔吐したのか、そのままの跡が残っていて、とても入れるような所ではなかった。冷蔵庫だけはしっかりと残っていて、中には缶ビールが沢山あり、冷蔵庫の前にはその空き缶が山積みになっていた。

 父と幸助はそれからゆっくりと家を片づけた。


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