第10話 友人
幸助は幼稚園へ入園するとはじめて外で長く付き合える友人を作った。彼もそれはそれでは嬉しかった。そして彼が外で友人を作ったことを父と母親も喜んだ。それから孝道にも祖父母にも喜ばれた。それは彼がその友人たちを家には呼ばなかったからだ。幸助が友だちに付きっ切りになって面倒を見なくなってよくなったから、両親や家族は彼にいろいろうるさく言うことはなくなった。そのために彼は日々を快適に過ごせた。父も母親も彼には全く構わなかった。幸助はいつも自由だった。良い子にしていた訳でもなく、けれども悪をしていたという訳でもない。いわば彼は普通の子どもだった。そして幸助はそれで良かった。妙なことで家族から干渉を受けるよりは放っておかれる方がずっと楽であった。友人たちとは毎日遊んだ。毎日彼は電話をかけた。遊びに行く約束をつけるためだった。そしていつも友人たちは快かった。そしてそのことは彼の助けになっていた。幸助はそのころから孝道から髪を引っ張られたり、突き飛ばされたりはしなくなった。友人たちと外で遊ぶようになってから、幸助は家をほとんど必要とはしなくなった。必要とするのは最低限のことだけだ。帰るだけのところ、それだけで十分だった。本当にそれだけでよかった――。幸助が10の歳になったころ、ひとりの友人が塾に行くようになった。その友人は彼を塾へ誘った。彼もそれで塾に行くようになった。彼はどんどん家から離れて行くようになった。
塾に行くようになってから学校の勉強も捗るようになった。彼にはすべてが順調であった。――将来は夢であふれていた。何でもできるような気がしていた。まだこのころは何か選ぶと言うことに関してはなにも頓着しなかった。何でもしてやろうと息巻いていた。そして幸助と友人は順調にいけば中学進学の受験科に行くことになっていた。
しかしその矢先だった。孝道は外に出なくなった。




