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噂の魔女

「何でもその魔女は絶世の美女だそうだ。」

「ほう・・・」

 男の口元が卑しく曲がる。


 一人の男が酒場で、村の南に魔女が一人で住んでいるという噂を聞いた。

その魔女は薬を作るのがうまいらしく、村の者ばかりか遥か遠方から訪ねて来る薬師もいるのだという。当然裕福なのだが、村に出てくることはあまりなく、村人との付き合いもあまりないのだそうだ。

 魔女の年齢は分からないが、見た目は16~7歳の美女なのだそうだ。ところが、その魔女は耳が聞こえないそうで、口がきけないのだという。


 4人の男たちは冒険者である。

 近くのダンジョンで仲間を失い、この村まで逃げて来た。よほどひどい目にあったらしく、路銀が尽きようとしている今も再びダンジョンへ潜ろうとはしなかった。

 ただ日々を流れるに任せて酒を喰らっているだけである。

「そんなに凄腕の魔女なら、たんまりと持っていそうだな・・・」

 冒険者のリーダーはニヤニヤとほくそ笑んだ。

 彼らは冒険者から盗賊へと転職する気のようだ。

「絶世の美女だそうですぜ、兄貴。」

 盗むだけではなく、更によからぬことも考えているらしい。


 村の南へ徒歩で30分は歩いただろうか、荒野が次第にまとまりを見せ、木立が道の両脇に見え始めると、森になった。さらに進むと森は突然開け、結構な広さのある畑が広がる。

 畑にはいろんな薬草と思しき植物が整然と育てられ、特にニンジンの葉のような大きな草が幾つもの畝に青々とその葉を茂らせている。

 その畑の中で魔女らしき女性が、一人で作業をしているのを見つけた。

「いたぞ。」

 男たちはそろりそろりと近づいて行く。

 耳が聞こえないという話だったが、用心するに越したことはない。

魔女の傍まで近づいて、急に大声で脅かしてみたが、反応が無い。耳が聞こえないというのは本当らしい。

 一人の男が魔女の背後から襲い掛かり、魔女を羽交い絞めにした。

「なあ、魔女さんよ。お前、だいぶため込んでいるらしいじゃねえか、その金を俺たちが使ってやるよ。」

 魔女は暴れたが、大男に羽交い絞めにされては華奢な魔女にはどうすることも出来なかった。

「なるほど、さすがにいい女だ。そそるな・・・」

 男たちの瞳に淫靡な影がさすと、口元からよだれがしたたり落ちる。


 魔女は緩んだその時を見逃さなかった。

男の腕の甲に思いきり噛みつくと、男の力がスッとゆるんだ。魔女は男の腕をすり抜けると畑の薬草を思いきり引き抜いた。


 すると、恐ろしい絶叫が、辺り一面を覆いつくした。

 飛んでいる鳥や虫がバタバタと地上に落ちで息絶え、やがてあたりは風の音さえ聞こえぬほどの静寂が訪れた。


 4人の男たちも例外ではなかった。彼らは体中の穴から大量の血を流して大地に倒れていた。


 魔女の手に握られた草は奇妙な形をしている。

大きなニンジンのようなその草の根には、しわしわの猿のような頭があり、手足のような根が伸びていた。

 ニンジンのような人の赤ん坊。 そういう風に見える。

しわしわの顔の口は大きく開かれていて、涎のような汁が流れていた。


 魔女は大きくため息をつくと、4人の男を裸にし、穴を掘って畑に埋めた。

ただ、埋める時にマンドラゴラの種を口に含ませるのを忘れなかった。これもあと数ヶ月で立派なマンドラゴラに成長するに違いない。

 魔女は作業を終えると、にんまりとほくそ笑んだ。


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