ビキニアーマー研究室日誌 3030年
所々にビキニアーマー以外の異世界を感じる描写を入れたので、そこから異世界感を味わってもらえたら幸甚です。
ビキニアーマー研究室を今日から引き継いだ。
といっても、残務整理が仕事なのでこの日誌も長くは成らないだろうが、少しずつ書き足していこうと思う。引き継ぎで聞いた話は、論文などの文書に残らないものも有るので、私の備忘録を兼ねた記録として残すことにする。
『そもそも、ビキニアーマーとはどの様な物なのか』
論文では、「肌に密着した状態で、尚且つ他の衣服や装備品により覆われずにある時に、効果を発揮する魔道具のうち水着形状の物」とされている。
世間一般では、「破廉恥な防具」という認識である。
男には装備できない。ということはないが、なぜか効果は無い。
その性能については個体差が激しいが、ほぼ全ての物において、物理防御力が高くフルプレートアーマーに勝り、魔法防御力も高く、攻撃魔法は大幅に被害が減少する。これだけでも破格の性能だが、物によっては筋力増強効果もある。と聞いても信じられないが事実らしい。どんなに高性能でも、普通の女性は羞恥心が勝るため使用者は非常に少なく、私は見たことが無い。が、一部には愛用者が居て闇の深い話がある。
服の下に着ると効果は発現しないというのは、嫌がらせか性的嗜好によるものと思っていたが違うと聞いて意外だった。
迷宮で発見されるものであり、素材も作製方法も不明だったが、構造の解明により今後の作製が可能になるだろう。
『研究室の歴史』
下着として着用できれば、これほど優秀な物は無い為、下着として使う方法と作製方法を研究する目的で発足した。最初は初代室長と助手の二人で始まったが、成果が乏しく1年後には室長のみとなり、2年後には室長も他の研究室と兼務となり、以後は細々と継続されていた。
今年は発足から130年にあたり、ついにビキニアーマーの構造が判明した為、発展的解散となった。
残務処理担当として私が名ばかりの2代目室長に就任し、書類と備品の整理をしたら消滅だ。
『初代室長について』
非常に大きな胸だ。というのが第一印象。
あそこまで大きいと羨ましくないが、それが室長に任命された理由だと本人から聞くと、少し羨ましくなる。こんな選定理由は、現代の価値観では批判されるため、何処かの偉い人が才能を見抜いたという話になっているらしい。
当時は大きさが性能に影響すると信じられていたが、現在は否定されており、これも室長の出した成果だ。長命種であるエルフのため外見は私より年下に見えるが、使う言葉から年代の違いを感じた。映像球による会見で一部の界隈に狂信的な人気がある。
『性能評価の闇』
性能評価は主に室長が着用して行われており、初期の記録は画集の様だ。着用した姿絵に、攻撃を受けた武器と、その結果が記録されている。近代のものは映像球で記録されているので、映像球の発明と普及の歴史を感じる資料だ。
男性に着用させた記録だけは引き継がれなかった。過去の論文では効果無しとの結論が有るが、今後の研究により覆るかもしれないから継続案件とのことだが気になる。
書類の棚の半分は、知らぬ間に消え、闇を覗いてはいけないと忠告された。推測をここに記すことも避けたい。
『希少性』
研究室の発足当時、公には多くても十数点しか発見されていないとされていたが、今では結構な数が流通しているらしい。これは後述する迷宮から大量に発見された為であるが、着用者の話は聞かないので趣味で集める人が多いようだ。
『ビキニアーマー迷宮』
この迷宮の発見が、研究の進展に大きく貢献した。この迷宮からはビキニアーマー以外は発見されていない。
迷宮の創造主とされる古代人の性癖についての憶測から、自分の性癖に対応する迷宮を探す人が一定数存在している。が、見つかったという話は聞かない。
『究極のビキニアーマー』
これはまだ一般には発表されていない。
ビキニアーマー迷宮の最深部から発見されたが、どう見てもただの紐だ、布の部分が無い。布が少ないほど性能が高いという推測があったが、それは正しかったのだ。
ドラゴンブレスや隕石の直撃にも耐えると推測されているが、人道的な理由でそこまでの検証はされていない。
『原理』
引き継ぎで説明されたのは、魔方陣の効果であるという事とその魔方陣の記入方法が特殊であること。魔方陣の内容はまだ未解明であるが、子宮と乳腺を示す図形が描かれていることで女性専用と成っており、その事から装着位置に制限が有ることまでは分かっている。
論文を真似て分解すると、呪われる可能性もあるらしく、今後の研究はそちらに注力され、特殊魔方陣研究室が新設された。
結論として、紐だと思っていた物は、丸められた魔方陣だったのだ。魔方陣に余計な部分(布など)が追加されると、魔方陣の内容が変わり効果も変わる、多くは性能が低下する。
装着時の効果範囲は肌表面の薄い層に限定され、その範囲内に魔力が蓄積圧縮される。そこに常時接触する物があると魔力がそれを伝わり拡散してしまい効果が出ないという訳だ。多くのものは手足の末端は効果範囲外に設定されているが、攻撃を受けた時には効果範囲を拡げて全身を守っている。
『非人道的政策』
アマゾネスと呼ばれる女性だけの民族は、研究室発足前にビキニアーマーを羞恥心無く着用できる人材を育成するために作られた。
この件は今さら公にはできないので極秘扱いとされているが、これ以上に闇とされた男性着用の研究が気になる。
室長就任祝いとして、前室長からビキニアーマーをもらったが、翌日に着用の感想を聞かれた。いや、そんなの普通着ないでしょ。反応を探るような目付きから何か良くない付帯効果がある気がする。絶対に着ない。