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多分、魔法少女

近頃世間を悩ます「怪物」。それらはある日突然現れ、人々を大いに困らせた。街を破壊し、人々に危害を加える。人々は逃げ惑い、これまでかと絶望した。そんなとき、希望の光で社会を照らしたのが魔法少女だった。

 彼女たちはかつて怪物たちに故郷を滅ぼされた地球外生命体の「妖精」たちと契約し、ともに地球の平和を守っている。彼女たちは摩訶不思議な力で怪物を倒すのだ。

 彼女たちは注目を集め、テレビでは連日活躍が報道されている。大きな怪物に果敢に立ち向かう華奢な少女…

 間違いなくうちの娘である。

 親である私が見間違うはずがない。

 娘だ。

 思い返してみると数えきれないほど怪しかった点がある。最近娘は謎のぬいぐるみを買ってきて、バックにつけてる。絶対妖精だ。たまに甲高い声が聞こえてくる。そのたび娘はあたふたして隠そうとしてくる。

 絶対クロだ。いや、魔法少女だからクロではないかもしれないが。

 極め付けは怪物が出没した時に限って娘がいないことだろう。気がついた時にはもういなくなってて「トイレ行ってたー」などと誤魔化してくる。私が買ってきた整腸薬は減ってない。

 まぁ、悪いことをしているわけではないし、暮らしを守っているのだから怒る必要などない。けれども、一つ気がかりなことが。

 あんた受験生だよな…

 うちの娘は高校三年生。バリバリ受験生のはずだ。確かに世界を救うことも大事だけど、あんたはもっと自分を大切にしてくれ、お願いだから。

 娘の疑惑が私の中でほぼ確信に変わってきたため、私は息子に聞いてみることにした。

「この子最近頑張ってるよねー。すごくない、こんな怪物と戦うなんて」

「……」

 まだ反抗期が続いている息子からは返事が無い。

「なんかさー姉ちゃんにこの子ちょっと似てない?」

「……」

 ギロっと睨まれてしまった。息子が自分の部屋に帰ってしまい、会話は終了した。

 息子の意見は聞けなかったが間違いなくうちの娘は魔法少女だ。なんでうちの子が選ばれたのかは謎だが、彼女はきっと今日も頑張っているのだろう。何も知らない母親の私には、娘のなった魔法少女が日曜の朝にやっている子供向けのアニメのようなほのぼのした世界線のものでありますようにと願うことしかできない。

 

 やばいバレたかと思った。

 親から魔法少女の話を振られたとき、内心ヒヤヒヤした。声が裏返りそうででなかった。

 この世界に突如として現れた「怪物」。そして怪物に対抗する「妖精」。妖精たちは地球の何歩も先を行く科学技術を所持している。けれども彼らには力がない。彼らは体が小さく、戦うのに適していなかった。故に故郷は滅び、新たな住処を探すため旅に出た。そこで目をつけたのが地球。ちょうど地球は怪物との戦いに苦戦していた。地球人と協力することで、住処を手に入れる。それが妖精の目的だ。

 妖精は力がないから戦う人間が必要だ。彼らは手当たり次第に「心が綺麗そうな人」に頼った。彼らが頼ったのは奇しくも女子高生ばかりだった。

 うちの姉も声をかけられた。そこで彼女は「私は無理です」と答えた。それで終わってればよかったのだが…彼女は思い出したように言ったそうだ。

「あ、でも、うちの弟なら大丈夫ですよ」

 俺が全てを知った時、もう姉は全ての書類にサインをし終えていた。ていうかなんだよ書類での契約って。魔法少女夢ないな。

 ということで俺は魔法少女になってしまった。姉には恨み言を言ったが、「だって私受験生だしー暇じゃないからー」「あと最近お腹痛いんだよねー薬は飲み忘れるし」と全く悪びれる様子もない。なら断ればよかったじゃないかと言えば「だってこんな機会二度とないから逃したくないじゃん!」と言ってくる。全く呆れる。

 そもそも妖精的に大丈夫なのかよと、俺の契約妖精「いっぺー」に聞いてみると、

「変身すると女体化されるし大丈夫にゃ。。それにこれはこれで…」

 ふざけてんのか。女体化のメカニズムは少し気になるが。

 いくら変身しているとはいえ親には隠せないのかもしれない。まぁまだ姉だと思っているみたいだから大丈夫だろう、多分。

「駅前付近に怪物発生! 直ちに討伐にむかえにゃん!」

 突然、姉のバックについてぬいぐるみのふりをしていたいっぺーが叫んだ。

「なんか言った?」

 一階で母が不思議そうな声を出してる。やばい。だからバレるって。

「お前はもうちょっと静かにしろよ! バレるだろうが!」小声で怒る。

「ごめんにゃん。でも早く行けにゃん!」

 前途多難でしかない。俺はため息をつき、母親にはルーズリーフを買いに行くと言って家を飛び出した。

 

 

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