To the final battle
翌日
俺はマルギスさんと朝から2人で街を回る
どうやら幻想街 ヘイグヴェルは湖の真下から放射状に広がっている隠れ街らしく
その東京ドーム20個分はありそうな広さには見合わず
住人は400名前後らしい
何よりすごいのはその全員が4大古代魔術のうち1つ以上を幼少期に使用してしまい
その圧倒的な力の強さを隠すためこの街に避難しているということだ
だが幻想街の名前の通り基本的には外の街との交流はなく
一部の研究施設との魔具<ガイスト>の技術協力などのみらしい
そのため表の世界でうまく人と折り合いを付けて生活していたステラさんは人気者になってしまい
もはや俺が近づけないほどの人だかりができている
俺と仕事を休みにしたマルギスさんは朝からやってる居酒屋に入り
朝食をともにしていた
「そういえば昨日の俺との戦いの間に
魔術の根源覚醒<エアルケ>って何なんですか」
「知らないのかい?
っていうか魔術の真理みたいなものなんだが
それを朝食何にする?みたいな感覚で聞かれるのも新鮮だね」
「ちなみに俺はこのエッグベーコンサンドがいいです」
「はいよ マルギスさんはいつものだね」
「はぁ これが異世界人のノリなのかね」
店員が注文を受け付けて奥に入っていく
「魔術の根源覚醒<エアルケ>ね
私も伝説みたいなもんだと思ってたが
実在するんだねぇ」
「何なんですか」
「魔術の根源は
4大古代魔術の始まりに遡る」
数百年前 首都 センタグラム
ある不思議な力を持った女がいた
後に魔術と呼ばれるその力は
無限の魔素を自在に操り
空間を引き裂き
引力 斥力を自在に発生させ
13の不思議な現象を引き起こし
あらゆる物質を別の性質へと変化させた
女は人々から恐れられ迫害されるも深く誰も立ち入らない山奥で生きていた
そして”時”が来た
女の前に無から少年が現れた
少年は女の力を褒め称えそれらを体系化し
魔素を感じられる人々が”魔術”として利用できる技術体系を作り出した
だが女の力のすべてを魔術として使えるようには出来なかった
それほどまでに女の力は強大であり人の理解が及ぶものではなかったのだ
少年はやがて1人の男になり女との子供が生まれた
彼ら、彼女らは圧倒的な力を持っていたが体系的な技術として広め
やがてそれらは”魔術”と呼ばれた
「―――つまり
始まりの古代魔術は4つしかない」
「そう でも前文にある
”無限の魔素を自在に操り”
これ自体が魔術である可能性があった
私みたいな歴戦の魔女でも操れる魔素量には限界があるからね」
「つまり大気中 いや物質中のあらゆる魔素自体を自分のものとして操る魔術」
「そう それが魔術の根源<アイン・オブ・ルーメ・ケラウトゥス>
都市伝説みたいなもんだと思ってたが
実在するもんだね
さらにそのトリガーが」
マルギスさんが俺の目をじっと見る
「?」
「小っ恥ずかしいが
限界まで古代魔術を高め上げた魔女が
特定の条件下で”恋をすること”だったなんてねぇ」
「...それは何というか」
「あーもう いいだろうね
150年も生きてはいるが愛情の1つぐらいは残ってるのさね」
「はは 少し安心しました
150年って聞いて無感情の怖い人を想像してたから」
「そういうやつは早死するのさ
で
何か引っかかってるみたいだね」
「――――1つ聞いてもいいですか
”時”が来て無から少年がって」
「それはあなたと同じ転生者ね
私達 古代魔術を発現できる人間の先祖を辿っていくと
異世界人の父親をルーツに持ってるんでしょ
まぁ世代を経すぎてるから正直 全く実感が湧かないけれど」
「いえ ”時”の部分です
俺達転生者は一定の周期で現れてるんですか」
「あら ステラから聞かなかった?
あぁ 最近の子はそういうオカルトは信じないものね」
「―――つまり俺たちが異世界から転生するこの現象自体も
一定の条件下で発動する魔術である可能性がある」
「そうね ただスケールが大きすぎて分からないわ
空間魔術で人1人のサイズを10m動かすのにも私の魔素の半分は持っていかれるし
ましてや異世界からこの世界になんて」
逆にそんな距離を一瞬で転送できるのか
「そうですね 仮に人がやってないとしたら」
「まさか」
「女神がいて彼らがその魔術を使っているとしたら?」
「....この国じゃルーメリア教が慣習化しちまってるから
受け入れられないだろうけどね
ありえなくはないね
まぁ 経典にあるような万能で人に似た存在じゃなくて
実際はただの現象を引き起こすための人格に認識可能な魔術の塊ってことにはなるだろうね」
「....」
そういうことか
確かにあの女神に見えた存在は俺と受け答えができたが
俺をあっちの世界からこっちの世界に転生させたるための最適な人格を模した魔術だった
まぁ俺が当時は魔素を感じられる能力がなかったから
仮に化け物みたいな魔術の塊だったとしても気づかなかっただろう
「それに時 つまり月の満ち欠けや
星の位置が関係してるとしたら」
「あぁ それは間違いないだろうね
日食や月食が起こると魔具<ガイスト>が誤動作を起こすこともあるし
人間じゃなく自然的に発生した
別の術式が作用しているのは間違いないね」
そうなのか
あっけなかったな
転生の仕組み
世の中そんなものなのかもしれない
それと同時に俺が元の世界に帰れないことが分かったな
魔術は1つ1つ術式がかなり違う
ましてや異世界から異世界への転生術式が逆に作用することはないだろう
今更ステラさん達を残して元の世界に戻る気はない
「はい おまちどーさん」
ドゴッとどでかいベーコンを挟んだエッグサンドが机に並ぶ
「来たね」
マルギスさんの元にもデカいハンバーガーが届く
「さぁ食おうね」
「いただきます」
俺はこの世界で生きていく覚悟とともにエッグサンドを噛み締めた
翌日
早朝
俺とステラさんとアリスラさんの宿に
マルギスさんが訪れる
「楽郎
落ち着いて聞いて
夜明けの明星の襲撃によって
首都が陥落した」
「!!!」
マルギスさんが書簡を開く
「これは」
「首都に駐留してた軍が突如襲撃を受け
謎の魔術により制圧用魔具<スチューパ>を破壊され
なすすべなく撤退した
行政機関は太陽と呼ばれる東洋風の男と
白いドレスをまとった少女達によって占領された
なお一般業務には支障がないようで大きな混乱は起こっていません
ってね」
「でもそれなら別に」
「惑星魔術のステラを指名手配し
懸賞金10万金貨を出すように都長を監禁した」
「なるほど それが狙いか」
「よほど 楽郎と私を捕まえたいみたいね」
「でも今の俺達なら勝てますよ」
「全く 年寄りを戦いに借り出す気かい?」
「むしろそのためにここまで来たんだけど」
「ちょっとステラ あんたねぇ」
「まぁ この3人なら戦えますよ」
「あぁ?」
ドゴッ
「ガッ」
俺の脇腹を誰かが掴んで持ち上げる
「アリスラさん!?」
「今度ばっかしはあたしも戦わせな
怪我しても死ななきゃその婆ちゃんが直してくれんだろ」
「誰がばあちゃんだね!」
「....はい
今度はアリスラさんにも戦ってもらいます
今から作戦を立てましょう
太陽を倒して俺たちの明日を手に入れるために」
翌朝 首都入り口 ラングリード大橋
橋と呼ぶにはあまりに広大な幅を持つ広い空間だ
俺とステラさんとアリスラさんが降りたつ
首都を囲む壁は空を薄めたような色でうっすら発光している
それと呼応するように空はどこまでも青く
「来たか 楽郎」
首都の方から男が白のドレスをまとった数十人の少女と向かってくるう
「あんたの狙いはステラさんじゃないのか」
「もちろんだ
だが貴様がいては非常に邪魔でな
先にお前に死んでもらうことにした」
「それでわざわざ幼女連れてご苦労さんだな」
「幼女か これが私のハーレムだがな」
「ロリコンクソ野郎」
「褒め言葉だ」
ダッ!!
俺と太陽が同時に飛び出す
それと同時に太陽の後ろの少女達が俺を囲むように位置取りしようと走り出す
「ステラさん!アリスラさん!頼みます!」
「任せて」「あいよ!!!!」
ステラさんが俺の右側を アリスラさんが俺の左側をカバーするようにそれぞれ魔具<ガイスト>を発動する
ステラさんは今回が初の魔具<ガイスト>使用だが
「魔素量の調整が楽なのはいいわね」
ドゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
と最初から木星の星を用いた範囲攻撃を仕掛ける
それと同時にアリスラさんはハンマーに更に仕掛けをしたらしく
「飛びな!!!」
ブゥンッ!!!
とハンマーを振り回した瞬間にその軌道上にいた少女達が橋から弾き飛ばされる
ギィィンッ!!!!
俺の刀と太陽の剣が激しく音を立てぶつかる
「いい刀だ
お前を殺してからステラで試し切りでもしてみたいな」
「お前には似合わねぇよ!!!」
俺は刀と足に光魔術を乗せてガッと剣を弾き飛ばす
ダダダンッ!!!
それと同時に今度は胸側に移動したホルスターから銃を抜いて光弾を連射する
ドスドスキンッ
2発が防弾用のコートに当たり1発が剣に弾かれる
「やはりな 貴様は天敵だ」
「次はちゃんと当ててやるよ」
「次はない」
「!」
ドンッと俺の体が数倍になったように感じる
いや違うこれは
「俺自身が重くなってる!?」
「どうした 重い男は嫌われるぞ
ダイエットが必要じゃないかな」
「重力魔術か!!!」
「正解だ」
ドゴォン!
俺の体に剣がめり込む
「ガッ!!!」
ゴロゴロと俺の体が橋の石畳を転がる
「ゲホッ ガッ」
アリスラさんの防御ベストがなかったら体が半分になってたな
それだけじゃなくて光魔術で体を纏ってたのもあるが
何とか生きてる
「地面を這いつくばる姿が似合っているよ」
「断わ」
ドゴッ!!!!
再び全身を圧倒的な重さが襲う
「がっ ぁ あ」
「何か言ったか」
数倍 数十倍の重力がかかっていく
膝も腰も全てが潰れそうにミシミシと音を立てる




