To the training of basic
街の外
「こ これは?」
1階建ての建物が立っていた
確か昨日まではなかったはずだ
どうしてこんなところに家が
「古代魔術って家も作れたり?」
「あるけどね アリスラなら魔具<ガイスト>でやるでしょ」
あるんだ ていうかこれ
「魔具<ガイスト>なんですか!?」
「動くよ ちょっとそこどいてな」
アリスラさんが建物の屋根に飛び乗る
「う 動くんですか!!?」
「じゃなきゃ こんなところに一晩で家なんて置けないでしょ」
ゴゴゴゴゴッ!!!
家が動いているのである
「す すげぇ」
正直 ありえない
当たり前だが俺の常識では家は動かないのである
「どうやってこんな大質量を」
「限界まで軽量化した上でキャタピラによる走行も可能にしたの
どっかの馬鹿な娘が願ったのさ
ずっと工房で過ごしたい
街の外でも工房で寝て物作って寝てしたいってね」
「すごい アリスラさん
大好きです!!!」
「ちょっと楽郎!?」
「ステラさんも大好きです」
「ま あたしは技術と結婚してんだけどね」
「構いませんよ
俺は一緒にいてほしいだけですし」
「そ そういうもんかい
最近の子は物わかりが良すぎるというか」
「ふふっ 楽郎はそういうことあるのよ」
「そういうもんか」
「だから私とあなた
全く違う人間に好かれるのよ」
「だからあたしは技術と結婚してるって」
「はいはい」
午後 メルデアス街道
俺たちはアリスラさんの家ごと移動している
当然のように動きは緩慢
進むスピードも徒歩と変わらないか少し遅いぐらいだ
その変わりかなり揺れが少ないし
何より歩かなくていいのである!
動力は時々ステラさんが魔素を注いだり 俺が注いだりだ
中は工房が7割 寝床やらが3割となっている
やっぱ旅はこうでなくちゃね
「次に向かう街はどこ?」
「魔術の街 ルクルスに行くわ
残念ながら ね」
「ステラ あなたの故郷?」
「だったりする ほんとあそこは嫌なのよ
陰湿でジメジメして
くっだらない魔術至上主義」
何かよほどのことがあったらしいな
「でも行くのね」
「楽郎が光の古代魔術身につけたいっていうから
しょうがないでしょ」
「ついに俺の古代魔術が」
「でも肝心の楽郎は素質あるの?
今まで魔具<ガイスト>を使わず魔術を使った経験は?」
「――ありません」
ヴィスターブ以外で魔術を使ったことはない
確かにそんな俺が古代魔術
つまりステラさんと同格の魔術を身につけられるのか
「出来るでしょ ここから3日で楽郎には光の現代魔術の基礎を身に着けてもらうわ」
「でも古代と現代じゃ全然違うでしょ」
「そうね
ただ魔素を操る感覚は似てるし
どっちも人間が使うものだから」
「そういうもんかねぇ」
「さて修行を始めましょうか」
「光魔術の修行 ほんと地味ですね」
「仕方ないでしょ
基礎っていうのは地味なものよ」
簡易術式を手に書いてそこに力を込める
一瞬でも光れば1段階目は成功らしい
「でも何で古代魔術なの?
術式効率だけでいえば今の現代魔術を学んだほうが」
「現代魔術は戦争に特化しすぎて対人での殺傷能力が高すぎるのよ
ヴィスターブみたいな欠陥品でなければ確実に人を殺傷する」
「そのために古代魔術を?
楽郎の魔素量が少ないんでしょ
なら効率の悪い古代魔術より魔具<ガイスト>のほうが」
「そうでもないわ」
「どういうこと?
成長期ならともかく成人に近い人がそれほど魔素量上がるわけがない」
「それがちょっと違うの
楽郎の場合はこっちに転生した時に何かあったみたいで
徐々に上がり続けてるのよ
女神とか 超常現象の類なんでしょうけど
利用しない手はないわ」
「あ」
「どうしたの?楽郎」
「俺死んだ後 やけくそになって女神口説いたんですよね
どうせ死んだならって」
「それかもしれないわね
って楽郎あなたほんと年上に対しては見境ないわね
どうせ見た目が妙齢の女性で好みだったとか」
「ち 違いますよ 見た目だけで告白したりしな」
パンパン
アリスラさんが手を叩く
「はいはい 楽郎のタイプはいいから」
「でも何で俺だけ」
もしかして俺って選ばれし勇者とかなんじゃ
「超常現象の類は考えるだけ無駄よ
転生 つまり楽郎は一回別の世界で死んでるんでしょ」
「楽郎が今後 魔素量が大幅に上昇する見込みがあるってことね」
「あるわ もちろんこのペースで練習積めばだけど」
「永劫的な成長期ってわけね」
「俺にそんな可能性が」
「可能性はあくまで可能性よ
伸ばさねければ0のまま」
「俺 頑張ります!」
移動式ホームの屋根上でひたすら札に力を込める
中はアリスラさんが作業中だから邪魔になると悪いし
「・・・」
頑張りますと言ったものの地味である
さらに古代魔術は自らの肉体に刻んだ術式がなければ使えない
そのため現代魔術の練習中である
まずはステラさんの作った魔術札を1枚ずつ使って光を出す練習
ヴィスターブと同じで魔素を込めるだけでちゃんと光は出る
だが光度ごとに術式を継ぎ足さなきゃいけなくて
光の波長ごとにもちょっとずつ術式が違う
例えば紫外線を出す術式と赤外線を出す術式は全く別物だ
それに小さい豆電球ぐらいの光を出すのとフラッシュグレネードレベルの光を出すのじゃ
術式の長さが全く異なる
さすが現代魔術
複雑さが家電製品の配線レベルだ
――こちらでは電気や化石燃料をエネルギーとしたの製品の代わりに
魔素を用いた製品や技術が発達してきた
さらに札にも色々種類があるらしくアリスラさん曰く
俺のは子供の練習用らしい
情報多すぎて頭がパンクしそうだよ
「術式も作ってみたいな」
「何たそがれてるの?」
ステラさんが屋上に上がってきた
「俺も術式を作れるようになりたいなぁと」
「いいけど」
「やっぱりまだだめで――
っていいんですか?」
「当たり前よ
知的好奇心は熱いうちに叩くのがが大事なの」
「いい先生になれそうですね」
「私は魔女よ」
「それもそうか」
「―さて始めるわ
まずは理論的な部分からね」
...
「というのがだいたいの理論ね」
「大体の概要だけはわかったような
でも対人だと調整効かなそうですね
光以外のどの属性も両極端だ」
「そうね 基本的には生活用と戦争用しかないわけだし」
「...」
「まぁ 楽郎の場合は魔女の私が術式を組んだ札や魔具を作るから
基本的にはその効果と発動感覚を覚えればオーケーよ
ただし持ってない場合には詠唱系で対処しなきゃいえない」
「それですね 発音が難しすぎて...
rとlの発音の違いより難しいですよ」
「まぁ 日常生活で使う言葉でぽんぽん魔術が出ちゃっても不便でしょ」
「た 確かに」
ステラさんの魔術とか部屋の中で勝手に出ちゃったら大変どころの騒ぎじゃないからな
「あれ でもステラさんの魔術って
普通の言葉で出てますよね」
「そう それが古代魔術の所以よ
詠唱に関わらずいえ
念じるだけで発動する」
「それって」
色々悪用ができてしまうだろう
古代魔術がいくら燃費が悪いとは言え念じるだけで事象を起こせるのだから
「そう色々悪用できる上に
古代魔術を使える者と使えない者
持てる者と持たざる者の格差を拡大し続ける」
「そう数千年続く身分制と
他国を侵略する帝国主義を生み出した」
「俺の元いた世界も似たようなものですよ」
独占された科学技術と金融資本によって人々の格差は拡大し
大多数の人間が圧倒的に貧しくなった
それを誤魔化すように俺の好きな秘蔵ビデオを筆頭に娯楽が
超多様化 安価になっていった
実際 俺が転生という概念を知っているのもその娯楽のおかげだ
多いからね 転生もの
「・・・」
「さて楽郎には詠唱の練習は毎日してもらうとして
そろそろ術式を実戦で使う練習もいい頃ね
戦の時間ね 楽郎
グルルルッ」
ステラさんが惑星魔術を発動する
「一体何を」
「楽郎
現代魔術の実践練しゅ」
「グルルルッてなんです?」
「うぅ お腹の音よ
そろそろお肉が食べたくならない?」
「まさか」
「そのまさかよ」
「アリスラ 家止めて
―――狩りに行くわ」
「急ね ほいよっと」
ガシャッ!!!
家が止まる
変な感覚だな 今までずっと動いてたからかな
「掴まって」
ステラさんの手を掴んで上空に浮上する
そして
「あれよ」
少し離れた木々の間から見えた
赤い角の生えた4足獣だ
「ライトニング・レッドホーン」
牛より一回り小さい魔獣
牛のような分厚い四肢
かなり強そうな印象を受ける
「ここらだと強い方の魔獣よ
人は食べないけどね
あと美味しいのよ」
「最後のが本音ですね
俺があいつを倒します!」
ステラさん俺とあってからすんごい美食家になってないか
「あぁ 早速だけど魔具<ガイスト>は使っちゃだめよ」
「え?」
確かに屋内に置いてきたままだ
手元にはない
だがあれなしじゃ
「その代わり光魔術の札は全部使っていいわ」
「なるほど
光魔術だけであいつを倒す
それが俺の修行なんですね」
「そういうこと
ちなみにライトニングって名前が付いてるように
体表から電撃出すから気をつけて
生半可な光じゃ貫通しないわ」
「っ!!」
ステラさんが俺をライトニング・レッドホーンの側の地面に降ろす
「大丈夫よ
いざとなったら私が上から仕留めるから」
「助かります
それじゃ行ってきます!」




