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あの日への償いを

作者: 水瀬 璃津

『やっ……たす…………かお願…』


1人の女の子が何かを言っている

目の前でナイフを持った男に馬乗りにされながら

俺の体は動かず、ただその光景を眺めることしかできない

すると女の子が俺の方を向き目があった


俺はその顔を知っていた

俺の唯一の肉親で妹だ


妹の目は失望しており俺に向かって何かを叫んでいて、その言葉だけはよく聞こえた


『うらぎりものが!!』



そこで目が覚める

深夜月明かりだけが部屋を照らす

背中には汗をかいており、呼吸は荒くなる

夢でみた映像の続きがノイズ混じりに頭に浮かび吐き気に襲われる


吐きたいのに胃の中は空っぽで胃液しか出てこない

気持ち悪さがグルグルと周り吐き気は強くなる一方


何故かカレンダーに目がいき見ると今日は妹の命日だった…

妹が死んだのはもう3年も前、なのにあの日の光景がずっと俺を苦しめ続ける


頭にガンガンとなにかが響く


……あぁ、ついに俺も狂ったか


目の前には、あの頃と変わらない姿の妹がたっていた

ただ無邪気で明るい影はなく無表情であの夢と同じ失望した目で俺の前にたって何も言わずただただ俺を見つめている


俺は気持ち悪さを抑えながら妹に向かって話しだした

幻覚だと分かっていても、あの日のことを謝りたかった

妹に言って許されてこの苦しみから解放されたい


「あ、あの日はごめん

俺をかばって……と、通り魔に刺されて

俺はかばってくれたお前をおいて逃げた

ほ、本当にごめん、俺が弱くて卑怯だったから…」


目の前の幻覚は喋ることはなく、変わらず俺を見つめていた


当たり前だ

幻覚に何を言っても返事なんて返ってくるわけない

それに、こんなこと言ったって俺が妹を見殺しにしたことは変わらない

俺が苦しみから解放されるなんて許されるはずがないんだ


幻覚でも妹の顔を見ているのは辛くなり、外へと視線をそらした

空はあの日と同じ満月がキラキラと輝いておりとても綺麗で憎かった


すると幻覚はゆっくりと動き出し俺の前にたち扉を指さし、そして外へと歩き出した

顔は変わらず無表情のままで喋りもしなかったが何となく”ついてこい”と言っているきがし、まだ少しだるい体を動かし幻覚について外に出る


夏だが深夜ということもあり、外は少し肌寒かった

俺は幻覚の少し後ろを一定の距離を開けてついていく、これが昼間の人目のある時間だと怪しさ満点で不審者に見られていただろう


幻覚の後ろをついていくたび、だんだんとマシになってきていた頭痛が酷くなっていった

少しの歩いたところで幻覚はピタッと止まった


そこは妹が殺された場所で、それに気づいた瞬間急に吐き気と頭痛が悪化しだした


人も車も全然通らない、道路に街灯も少ない場所

ここに来るとあの日を思い出し吐き気に襲われるようになり、もう来ることはないと思っていた


今も段々と悪化し続けている気持ち悪さに耐えきれず道路に座り込んだ

するとまた、幻覚がゆっくりと街灯の方を指さした


街灯のほうに目をやると女の人が歩いていた


こんな深夜に人がいることに驚き立ち上がろうとしたが、急いで立ち上がったためか目眩が襲いまた座り込んでしまった


そして、その場を女の人に見られ、女の人が小走りでこちらに向かってきた


「大丈夫ですか!?救急車とか必要ですか!??」

「大丈夫です...、少ししたら動けますので」


女の人は焦って来たのか少し息が荒くなっていた

その焦った姿が顔も声も似ていないのに妹と重なって見え、あの日もこんな感じだったことを思い出した



急に体調が悪くなった俺を心配した妹が学校に迎えに来てくれて久しぶりに兄妹で話して帰った

そして帰り道、妹は俺をかばって通り魔に襲われた


ふと幻覚の方を見ると、まだ無表情で街灯の方を指さしていた

あの日と似たこの状況、あの日と同じ場所...嫌な最低最悪な考えが頭に浮かんだ

急いで街灯の方を見る

街灯のところには男の人が立っていてフラフラ~っとしながらこちらに来ていた

......そして男の人の手には、包丁が握られていた


早く、早く早く早く逃げなきゃ殺される

そう思うが体は金縛りにあったかのように全く動かなかった


俺が街灯の方を見て動かなかったからか女の人も街灯の方を向いた

そして男に気がついた


気がつくと同時に女の人の顔は恐怖に染まった

体は小刻みに震えだしていて、体が動かない様子だった


この間も男はこちらにゆっくりと歩いている


距離的に言えば女の人のほうが男の近くにいて、このままじゃまたあの日と同じになる

幻覚がいなければ、俺はここにいなくて女の人は止まらず男に合うこともなかった、全部全部幻覚のせいだ

なんでもいい俺のせいでこうなったわけじゃない理由が欲しい


そんな俺を幻覚は無表情で失望した目で俺をみる

そんな目で見るなよ、妹も姿をしているなら笑ってくれよ

俺が悪かったのはわかってるんだよ、なんで俺だけ生き残ったとも思うんだよ


そんなこと思っていると男は、もう近くまで来ていて


あぁ、もうヤケクソだ

ガンガンと頭痛が響くのも、吐き気がするのもきっと気のせいだ

動けよ、最後だ

最後に人を助けて、せめて妹に少しは自慢できる兄で終わるんだよ


女の人の腕を掴み力いっぱい後ろに引っ張った


そして女の人に聞こえるよう

今までで1番大きな声で叫ぶ


「早く行け!!生きろ」


その後、背中に激痛が走り背中が熱くなって急激に冷え始める

痛みと背中から血が溢れ出る気持ち悪さに、だんだんと意識が薄れていく


これがいい選択とは思わない、女の人が逃げられたかもわからない

けど、最後の最後に全てから開放されたみたいでスッキリした

だから俺からしたらこれが俺の思いつく精一杯のハッピーエンドだ


そこで意識がなくなった

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